第14話
思いもよらなかった音の正体に目を丸くする。
どうするべきかと逡巡すれば、まるでその心を見透かしたかのように猫が鳴いた。
その細い鳴き声に桜子は決意する。
教本の入っている風呂敷を地面に置き、手を伸ばす。
「おいで。……大丈夫、怖くない」
そっと抱き上げても猫はされるがままだった。
抵抗もできないほど弱っているのだろうか。
ぐったりとする黒猫を抱え、桜子は帰路を急ぐ。
弱っているものを見棄ててはおけない。
ここで無視すれば、後で絶対後悔する。
お人好しというわけではないけれど、冷酷にもなりきれない。
自分でも中途半端だとは思うけど、助けたいと思ってしまったのだ。
両手に弱った猫を抱えながら、桜子は道を急ぐ。
―――後に、この猫が思いもしなかった運命を引き連れてくるとは、この時は想像すらせずに。
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