第11話
「………若君」
恐る恐ると言った体の運転手の声に、
「なんだ」
「……よろしかったのですか?」
運転手の言葉が何を指しているのかわからず、書類をめくりながらぞんざいに聞き返す。
「何がだ」
「先ほどのお嬢さんのことです。怪我などしていなければいいのですが……」
その言葉の意味が一瞬、零には本気でわからなかった。
しばらく黙考し、運転手の言いたいことを理解する。
脳裏にちらりと浮かぶのは愕然とした表情の女学生。
危うく轢き掛けるところだったのか轢いたのかはわからないが、平民の娘ごとき心底どうでも良い。
死んではいないのだから問題はないだろう。
そう思い、零はその存在を記憶から消した。
そして、変わらぬ速度で書類をめくる。
それを幾度か繰り返した後、ようやくその形の良い唇から言葉が吐き出された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます