第8話

「桜子、平気!?怪我は?痛いところない?」



「え……ええ。大丈夫よ、佳世。ちょっと、びっくりしただけ……」




胸に手を当て、小さく息を吐き出す。




冗談ではなく、死ぬかと思った。




いつの間にか額に滲んでいた冷や汗を拭えば、それまでの光景を遠くから見ていた人々が近付いて来た。




「お嬢さん、大丈夫かい?」



「危なかったねぇ」



「怪我してないかい?」




次々に掛けられる言葉に大丈夫だと頷いて見せれば、その中の一人がぽつりと呟いた。




「ありゃ藤ノ宮家だな」



「藤ノ宮?」




その名に佳世がはっと顔色を変えた。

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