第5話
……そんな風に立ち竦んで、自分でも知らないうちに呆然としていたからだろうか。
不意に響いた悲鳴と怒声、そして聞きなれない金属音を、桜子は見事に聞き逃した。
「桜子!!」
佳世の悲鳴が聞こえる―――。
無意識の中でそんなことを思い、次の瞬間、はっとする。
考えるより先に咄嗟に後退りした、その瞬間。
黒く大きな物体が、目の前に飛び込んできた。
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