第3話

紆余曲折の末、佳世の浴衣の課題は桜子の家でやることとなった。




佳世は遅刻常習犯で、その度に遅刻の罰として課題を課せられている。




これまでは雑巾を縫うことだったようだが、回数をこなすうちにそれを極めてしまったらしい。




そのため、今度は初の浴衣になったとか。




桜子たちの通う女学校は花嫁修業が主で、そこらの女学校となんら変わりない。




家事一般に礼儀作法、裁縫、更には日本舞踊などの踊りに三味線等々。




普通の授業も週に何度かあるが、佳世に言わせてみれば「役に立つのかどうかわからない」ものを叩き込まれるのである。




「今時浴衣なんて着ないのに………」




自宅へと向かっていれば、佳世の恨めしげな声が聞こえる。




「モガが銀座を闊歩して自動車が道を走る時代よ!?どこにあたしの縫った浴衣の出番があるのよ!着れやしないわよ!」




褒めているのか貶しているのかわからない叫びに桜子は笑って答えた。




「寝間着?」



「じゃあ出来たらあげる」




佳世が不満そうに唇を尖らせた。

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