壱章 出逢イハ一瞬ニテ

第1話

「さーくらこー」




よく晴れた、とある日のことだった。




間延びした、なおかつ妙な節のついた声に振り返れば、背中に誰かが飛び付いてくる。




首を回して背後に視線をやり、桜子は苦笑した。




「佳世、どうしたの?」



「帰り付き合ってよ!美味しいあんみつ屋ができたんだって。これは行かなきゃ!」




そう言うのは格子模様の袴に流行りのハーフブーツを軽快に鳴らし、長い髪を高く結い上げた目鼻のはっきりした美人、芦辺あしべ佳世かよ




日本人形もかくやというような美貌を持ち、見た目だけでいうのなら立派な大和撫子。




……だが、その性格は豪放磊落ごうほうらいらくにして暴虎馮河ぼうこひょうが




見た目と中身が見事なほどに一致しない、の典型例。




女学校の中において型破り街道を独走し、女学生には大人気、先生からは問題児と呼ばれる少女である。




……ちなみに、桜子の唯一の親友であったりもする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る