序章

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『命短し 恋せよ乙女』


そんな歌に惹かれて、ただ無邪気に恋に憧れていた。


悩みと言えば、学校帰りに寄るお店は何処にしよう。


今度、友人たちと見に行くお芝居はいつにしよう。


悩みなんて本当にちっぽけで、端から見れば何の変哲もない海老茶式部。



日崎ひざき桜子さくらこ。16歳。


花百合高等女学校5年生。


そして―――没落した日崎伯爵家の一人娘。


とは言えども、今は平民として普通の生活を送っている。


母は幼い頃に亡くなり、兄弟はなく、父親と二人暮らし。


暮らしに文句はなかったし、女学校に行かせて貰える境遇には感謝していた。


何の変哲もない日常だった。



……あの人と出逢う、あの日まで。






貴方のことを嫌いになれたら、どんなに楽だっただろうか?


でも、そんなこと、できただろうか?




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