第3話 初戦闘、そして街へ
「ギィ?ギャギャッ!」
「ギャゴ!」
草むらから勢いよく飛び出してきたのは肌が緑っぽい色をした、醜悪な顔つきの3匹の小さな鬼だった。
これがリュートが言ってたゴブリンってやつか…
3匹のゴブリンは多少大きさの差異はあるものの全員が、衣服は腰に巻いているボロボロの布のようなものを着て手には木を削って作ったであろう棍棒を持っていた。
そして、俺たちに気づくや否や棍棒を振り上げ何かを叫びながら襲いかかってきた!
「うわっ、こっちに来たよ!」
「大丈夫、まずは…先制攻撃!……時間ないから詠唱短縮!『貫け』!術式発動、【
そう言うや否や、セラは背中に背負った大きな杖を取り出しこちらに走り寄るゴブリンに向けた…瞬間、杖先に幾何学的な紋様が浮かび上がってその中心から紫電が
頭部を失ったゴブリンの身体は慣性のままに、もんどり打って倒れる。
か、火力高いなぁ…断面が雷の熱で焼けこげてるよ……
その高すぎる威力に若干引いていると、セラの間を埋めるように今度はリュートがしっかりと詠唱をした上で魔術を発動した。
「……『水よ、我が意に従い形を成せ。刃と成りて、敵を切り裂け』術式発動、【
「ギャギ──グペッ」
その水の刃による一撃は、迫り来るゴブリンの1匹の首を
少し遅れて首の断面から赤黒い血を吹き出しながら力無く倒れる、2匹目のゴブリン。
仲間の2匹を失った最後のゴブリンは少し怯んだ様子を見せたが、それでも歩みを止めることなく突っ込んできた………真っ直ぐ俺の方に向かって。
「お、俺の方に来るのか!?」
「そりゃそうだろ。防具も着けてないし、なんか優しそうな雰囲気出てるから舐められてんだよ……まあ、アイツと君が戦うことは無いけどな!」
そう隣にいるアッシュが言ったと同時に、走り寄るゴブリンの真横に陽炎の様な揺らぎが発生した。そしてそこから少し刃渡りが短い剣を逆手に持ったアッシュが若干の炎を纏いながら飛び出し、その首を刈り取った。
………あれ!?今さっきまで横にいなかったか…?
そう思い視線をさっきまで話していたアッシュの方へ向けると、なんとそこにも彼が居た!
な、何が起こってるんだ!?
「あ、アッシュが2人!?」
「……相変わらずその術式の精度はすごいね。」
「ほんと、初見殺しだよねぇ」
ゴブリンをいとも容易く討伐し終えた彼はこちらへ向き直り、得意げな顔をした後『解除』と呟いた。すると、今まで俺の横にいた方のアッシュが炎となって消えてしまった!
「…よっと。ま、ざっとこんなもんよ!」
「おお〜……って、今の戦闘はみんな凄かったけど、最後のインパクトが大きすぎたな……今さっきのアッシュの分身?みたいなのは何だったの?」
「ああ、アレのことか。アレは俺の火属性魔術で作り出した炎の幻影で、実体は無いんだ。まあ、魔力を過剰に込めて爆弾みたいにすることもできなくは無いけどな!」
「じゃあ、あの何も無いところから出てきたのは?」
「それは、さっきの幻影の応用で俺自身の姿を隠したのさ。そうすれば相手は幻影の俺を本物と勘違いして狙い、そこを見えない俺が背後からバッサリって感じの動きができる!」
「な、成程。それは強いな…魔術ってそんなことも出来るんだ!」
ただ相手を倒すだけじゃなく、相手を騙したり錯乱させることも出来るとは…
これは、敵に回したらすごく厳しそうなタイプだね……
見分ける方法がなかったら、何もできずにやられてしまうことだってあるかもしれない。
──今さっきのゴブリンみたいに。
普通に攻撃系の魔術も凄まじい威力だったし、もしかしなくても魔術って相当強いのでは?
そんなことを考えていると、みんなが俺の周りに集まってきた。
そして、アッシュがふと話し出す。
「えっと…少し前にも似た様なことをを聞いたが、今の戦闘を見て何か感じたことはあるか?」
「今の戦闘?……そうだなぁ」
俺が見た感じでも、最初の職業の話でも別に違和感は感じなかった気がするけど……
強いて言うなら、みんな攻撃が凄いなーとしか……うん?
もしかしてこのパーティーって、アタッカーしかいない?
魔術師に弓使いに、双剣使い……よくよく考えてみれば、攻撃を引き受けてくれるような
……いや、厳密に言えばアッシュの幻影を使って気を引くことは出来そうだけど、攻撃が当たらないと分かれば次第に意味がなくなっていくかもしれないしね…
そうすると、これがアッシュが求めてる答えかな?
「……攻撃を引き受ける人がいない、とか?」
そう俺が答えると、アッシュは感心したように、それでいて少し苦笑いをしながら語った。
「やっぱ気づくよなぁ…そう、俺たちには敵のヘイトを稼ぐ
「今までは火力に任せて押し切ったり、アッシュの幻影とかでどうにかしてきたんだけど……」
「……それだと真正面からの戦いや耐久力のある敵にとても弱い」
…成程。耐久力が高い敵相手だと火力が足りずに倒しきれなかったりするし、一度幻影が見破られたら効果も薄くなるかもしれない。
しかも、味方の誰かが落とされたらその分の火力が落ちるってことだから、更に敵を倒すことが難しくなる…
「だから、オレたちの急務は出来るだけ早く
「……タンクは、俺がやるよ」
「…!?え、君がか!?いいのか…?まだ入ったばっかりだし、今さっき初めて魔物と戦ったってのに…」
「た、
「……無理をすることはない。
俺の言葉に仲間のみんなは口々に心配の声をあげる。
だけど俺は、みんなが戦っていた時にもう決めてたんだ。
みんなを────大切な仲間達を護る
そのためには、俺がタンクをする必要がある。
もちろん、俺よりも強いタンクもごまんといるだろう。
俺には経験もないし、知識もない…けど、それはここからの努力でなんとかしてみせる!
せっかくみんなに認められたのに、このままおんぶに抱っこになるわけにはいかない。
…冒険者協会?なるものには訓練場もあるらしいし、そこで出来る限りタンクとしての力を身につけて、みんなの横に並び立てるよう目指そう!
「大丈夫、俺は俺の意思でみんなを護りたいんだ。……俺には1つだけ覚えてる…のかは分からないけど、しなきゃいけない!って思うことがあるんだ。それは、俺の大切な人を護ること。だから俺はみんなを護るためにタンクになりたい!……だめかな?」
「君は…そんなにオレたちのことを……分かった!そこまで言ってくれるんなら、ぜひ
「…!ああ、分かった!俺、みんなの役に立てるように頑張るよ!」
「うん!大変だと思うけど、キミになら任せられるよ!よ〜し、そうと決まればさっさと街へ帰ろー!」
どうやら、アッシュもセラも快く認めてくれたみたいだ!
よかったぁ……
2人の声に安堵して、また街に向かって4人で歩き始めると、俺の後ろのほうにいたリュートが隣に来て俺だけに聞こえるような小さな声で話しかけてきた。
「……ありがとう、
「いやいや、全然気にしてないよ!むしろ、みんなに認められて本当に嬉しかったよ。これでみんなを護ることができる!」
「……ふふ、本当にありがとう。でも辛くなったら言って。…力になるよ。」
「うん、分かった。」
話が終わると、またリュートは俺の後ろあたりに戻り、索敵を始めた。
それから俺はアッシュとセラ、そしてたまにリュートと街に行った後どんなことをするかを話しながら街へ向かって森を歩き続けた。
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やっとテストが終わったと思ったら、無事テストの結果も終わっていたので初投稿です。
更新が大幅に遅れてしまい大変申し訳ありません…!許し亭許して…
とりあえず、自分の中のプロットで1章が終わるまではエタらないつもりですので、これからもこの作品をよろしくお願いします!
良かったら、評価やレビューして行ってもらえると筆者は死ぬほど喜びます
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