第3話 おっとり先生のS級女騎士フランベール・フラム
それからようやく担任のフランベール先生が教室にやってきた。
「は~いみんなおはようございま~す」
この様にとろ~りとした喋り方をするのがフランベール先生だ。
眠そうな碧眼と花のように良い香りがするベージュのブロンドヘアーが美しい。
ミスリル製の蒼の鎧を着こなし、水色のマントをなびかせている。
武装はなんと折り畳み式の大弓。
正確無比な射撃はフランベール先生の売りで、俺も何度も先生の援護には助けられている。
だがそんなことよりもだ。
柔らかく暖かな母性を感じさせる彼女の大きな胸と尻。
これが凄い豊満なのだ。
二つの山は引き締まった腰のくびれを強調して、スタイルの良さを存分に披露している。
あのローエとカティアも凄まじいスタイルだったが、フランベール先生は二人のワンランク上をゆく豊かさだ。
その美貌は思春期の健全な男子達をたやすく虜にし「おはようございま~す!」とトロけた挨拶をさせてしまうほど(もちろん俺もトロけてる)。
「は~いみんな元気でよろしいですねぇ。今日もしっかり勉強して、しっかり身体を鍛えて、ここ【エルガンディ王国】を守る立派な騎士を目指しましょう~」
言ってからフランベール先生は何かを思い出したように手をパチンと叩いた。
「あ、そうそぅ。みんなに【良い知らせ】と【悪い知らせ】があります。まずは良い知らせから。ゼクードくん」
「はい?」
「教卓の前に来てくれる?」
「よろこんで!」
【良い知らせ】の中身を察した俺はスキップ気味に教卓の前に立った。
するとフランベール先生が隣に立つ。
ぁぁ、甘く良い香りがする。
「なんとこの騎士学校『一年Aクラス』のゼクードくんが昨日ついに【S級騎士】になりました!」
シーン……
「そしてゼクードくんは正式に【黒騎士】の称号も国王さまから頂きました~!」
シーン……
「いやなんか言えよお前ら!」
俺が言うとみんながワザとらしく拍手を始めた。
「おめでとー」「おめでとー」「おめでとー」「おめー」
すげぇ棒読み。
泣きそうだ。
「お前ら絶対に今後は助けてやらねぇからな! A級ドラゴンに食われちまえ」
「いやお前がなんか言えって言うから……」っとグリータ。
「ただただ不愉快だよ!」っと俺。
「ふふふ、相変わらずみんな仲良しさんね」
どこがですか先生!?
【S級騎士】に敬意すら払ってませんよこいつら。
「あ~そうそう。最後の【良い知らせ】なんだけど、今日から先生はゼクードくんの部下になりま~す」
「ナァニィイイイ!?」とクラスメイト一同が断末魔のような声を張り上げた。
いやなんでそこで驚くんだよお前ら!
知ってるはずだろ?
フランベール先生も【蒼騎士(ブルーナイト)】の称号持つ【S級騎士】だぞ。
「なんとゼクードくんは今後編成される【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命されたのよ。先生はその隊の一員になるの。だからよろしくお願いしますね。ゼクード隊長」
少し甘い口調でそう言いながらフランベール先生はウインクしてくれた。
か、可愛い!
こんな美人を部下にできるなんて。
しかも担任の先生を部下に。
素晴らしい!
面倒くさかったけど隊長を請け負って正解だった!
いや待てよ?
「あの、先生は年下の俺が隊長で良いんですか?」
「うん。先生はゼクードくんの実力ちゃんと知ってるからねぇ。文句なしよゼクードくんなら」
「ぁ、ありがとうございます!」
なんて懐の大きな方だ。
身も心も美しい。
「くっそー俺たちのフランベール先生がゼクードの部下だと!?」
「ちくしょう。羨ましい……」
「一回地獄に落ちろ女好きめ」
誰が『女好き』だ。
俺は『女性思い』なのだよ。
「みんな次は【悪い知らせ】なんだけどよく聞いて。もうゼクードくんに聞いたかもしれないけれど各地で【危険度S級ドラゴン】が発見され始めてるの。今のところ全部で4体の【危険度S級ドラゴン】が確認されてるわ」
いつになく真剣な眼差しになり、しゃきしゃきと喋り出すフランベール先生。
フランベール先生がこうもしっかり喋る時は本当に重要な時だけだとみんな知っている。
だからさっきまでのふざけた緩い空気をクラスメイトたちは消し去って聞いていた。
「だから国王さまは【エルガンディ王国】の誇る【S級騎士】のみの【ドラゴンキラー隊】を編成したの。直接ドラゴンと戦うのはわたしやゼクードくん。あとローエさんとカティアさん。A級の正規騎士さんたちはわたしたちのバックアップをすることになってるわ」
国からの支援もちゃんとあるのか。
かなり大規模な作戦になりそうだ。
やはりみんな今回の件は重く見てるんだな。
「ここ【エルガンディ王国】だけじゃなく、他国の【リングレイス王国】【アークルム王国】【オルブレイブ王国】も同じく【S級騎士】の竜狩り部隊を編成して【危険度S級ドラゴン】を討伐することになってるの」
本当に大規模だ。
まさか四国が一丸となって動くとは。
10年前の悲劇をみんなしっかり糧にしている。
これは素晴らしいことだと思う。
「まだ準備に数日掛かるらしいけど、それだけ大規模な討伐戦が控えてることだけは覚えておいてね。直接関係あるのはわたしとゼクードくんだけだけど、みんなにも危機感はある程度持っていてほしいの」
「はい!」とクラスメイト一同の良い返事。
たしかに【危険度S級ドラゴン】が相手ではグリータら【C級騎士】に出番はない。
危機感だけ、というのは妥当だろう。
彼らが相手できるドラゴンなんて【危険度C級】のドラゴンベビーや二足歩行のドラゴンマン程度だろうし。
そんなことを考えながら俺は席に戻った。
「おい……ゼクード」
「ん?」
隣のグリータが小声で語りかけてきた。
「死ぬなよ?」
「なんだよ急に」
すると後ろの席の奴まで語り掛けてきた。
「マジで気を付けろよゼクードお前」
「え? ぉ、おう……」
なんだいったい。
「みんなお前には感謝してるんだ。借りを返すまで死ぬんじゃねぇぞ」
え?
感謝?
なんで?
俺がお前ら男に何をしたよ。
「……いったい何なんだ? 急にみんな気持ち悪くなったぞ」
隣のグリータに言うと、彼は笑った。
「みんな無謀と勇気を履き違えた馬鹿だったからな。一回はA級ドラゴンに食われかけた過去がある」
「ああ、いっぱいあったなそれ。先生の忠告無視して俺の真似しようとしてA級ドラゴンに挑んで返り討ちにされるってやつ」
「それだ。そんな奴ばっかだったけど、誰も死ななかった」
「そりゃあ俺がいたからな!」
自信満々に胸を張って俺は言った。
そして、それを誰も否定しなかった。
「……ほんとそれだよゼクード」
「え?」
意味が分からず、間抜けな声を出してしまった。
するとフランベール先生がクスクスと笑う。
「はい。それでは授業を始めますよ~」
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