ふたりのレシピ - 幼馴染みに恋をした
ひゃくねこ
ふたりのレシピ
■小学生:タカシの大盛りカップラーメン
「タカシ!あそぼ!!」
タカシは私の幼馴染み。今、小学4年生だけど、生まれたときから知ってるのよ。学校の男子はキライ。でも、タカシは面白いからスキ!
「お!アカリ、いいよ!」
アカリは僕の幼馴染み、ず~っと一緒にいるから
「あれ?今日は土曜日でしょ?しんちゃんは?」
しんちゃん、しんご君はアカリの弟で、まだ5歳だけど、いつもアカリに付いてくるから、一緒に遊んであげることも多いんだ。
「うん、あのね、昨日の夜、熱が出ちゃって、朝からパパとママが病院に連れてってるの」
「そっか~、それでアカリはお留守番か~」
「うん、で、タカシくんのお家に行っときなさいって、ママが」
「はぁ~、うちの父さんも母さんも仕事なんだよな~、父さんは夜勤明けで昼頃には帰ってくるんだけど」
「あ、もう10時だからもうすぐだね」
「うん、まいっか!じゃ、ゲームしようぜゲーム!マリオカート!!」
「マリオカートね。いいよ!負けないから!!」
・
・
「はぁ、負けた」
ちぇ!アカリのヤツなんでこんなに強いんだ?僕に黙って特訓とかしてるんじゃないのか?
「ははは、悔しいかねタカシくん、”男子三日会わざればカツモンだって思え”、って
「なに言ってんの、アカリは女子じゃん!それに、なんか間違ってる感じしかしないぞ?」
「え?そう?なにか間違ってる?」
「そうそう!あれは~、男子三日会わざれば、カチモク、カツモノ、カチモン?・・・」
「それはいいけどさ!ワタシお腹すいた!タカシのお父さん、遅いね~」
「ああ、もうすぐ12時か~、普段だともう帰ってきてるんだけどな~、忙しいのかなぁ」
「う~ん、朝はママたち、バタバタして出て行ったから、トーストと牛乳くらいしか食べてないの。お腹すいたなぁ」
「分かった!ちょっと待ってろ、アカリ!」
・
・
ワタシがお腹すいたって言ってたら、タカシは待ってろって台所に行っちゃった。タカシってお昼ごはん作れるのかな、なに作るのかな。
あ、帰ってきた。
「お~っとっと、ゆっくりゆっくり」
タカシはお盆の上に大きなカップラーメンを乗せて、こぼさないようにゆっくり持ってきた。
「アカリ、これ、食べよ!!」
カップラーメンをワタシの目の前に置くと、タカシはすぐに台所に戻って、もうひとつ、大きなカップラーメンを持ってくる。
「な?お腹すいただろ?」
うん、お腹はすいてる。ホントにすいてるんだけど、このラーメン、大きすぎ!!
「タカシ、これ、大きすぎるよ~、大人が食べる大きさでしょ?しかも、でかまるって書いてあるよ?大盛りって」
「え?大丈夫だよ、父さんが食べるラーメンだけど、僕もお腹すいてるし!それに、お腹すいたお腹すいたって、言ってたじゃん。アカリも食べれるよ!」
「そ、それはそうなんだけどぉ、無理なんじゃないかなぁ」
「ほら!もう3分経ったよ?食べよ?」
「う、うん」
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・
「はぁ~くったぁ~!お腹いっぱい!!」
タカシはスープを飛ばしながら麺をすすって、あっという間に食べちゃった。でも、これホントに大きい。ワタシにはやっぱり、無理かなぁ。美味しいんだけどなぁ。
「タカシ、ワタシやっぱり無理だよ。男子は食べるのかもしれないけど、麺がすっごく多いし、食べてるうちにお腹いっぱい!」
「え~?しょうがないなぁ、育ち盛りの小学生はもっとたくさん食べないとダメだよ?って、父さんいっつも言ってるよ?それに、残しちゃダメよ!ラーメンの麺には7人くらいの神様がいるんだから、って母さんも言ってるんだから」
タカシってば、ワタシは無理かもって最初に言ったのに勝手なこと言って!、でも、ラーメンの麺には7人くらい神様がいるんだ。じゃ、がんばって食べるしか・・・
「よし、アカリ、オレがそれ、食ってやる!!」
え?え?タカシが食べるの?これ。まだ半分くらいあるよ?
「ほら貸して、食べるから!」
「うん、じゃ、お願いします」
・
・
アカリが残したでかまる。僕が勝手に作ってきたんだから、残すわけにはいかない!
どうだ!スープもぜんぶ飲んでやったぜ!見てるかアカリ!!
でも、かわいいんだなぁ、女の子って。こんだけしか食べられないんだ。
アカリだけかな?
ものすごい勢いでワタシが残したでかまるを食べるタカシ。そんなに無理しないで!いくらラーメンがもったいないからって!
でも、すごいなぁ、男の子って。あんなにたくさん食べるんだなぁ。
タカシだけ、かな?
ふぅ~ん、すごいじゃん。
ふぅ~ん、カワイイじゃん。
幼い恋心の、芽生えの瞬間。
■中学生:アカリのお好み焼き
「出来た~!これ、フライパンで焼いたよ~、タカシ!食べよ!」
「おぉ、キレイに焼けてる!でもフライパンで焼いたって、玉子も乗ってるのに、どうやって焼いたの?」
「え?それはねぇ、まずお好み焼きを両面焼くじゃん?で、それを皿に取って、フライパンに油を敷きなおして目玉焼き焼いて、そこにお好み焼きをそ~っと被せる、って感じ?上手でしょ?」
「うん、じょうず~!それにお好み焼きって家で焼くとべちゃってしたりするよな?これ、ふんわりカリッと焼けてる!」
「えへへ、でしょ?これはねぇ、粉が違うのだよ、粉が」
「へぇ、高級お好み焼き粉、とか?」
「ううん、これね、タコ焼き粉なんだ」
「え?タコ焼きの粉?」
「うんうん!そう!タコ焼きの粉ってさ、もともとカリッとふわっと焼けるように調合されてて、味もついてんのね。お好み焼き粉もおんなじなんだけど、よりカリッとふんわり焼けるのは、タコ焼き粉なんだな~」
「へぇ、意外~、そうなんだね~」
「でもね、本当のコツはね、生地とキャベツを混ぜたら、すぐに焼く!ってとこなんだ!」
「ふぅ~ん、なんで?」
「それはねぇ、生地とキャベツを混ぜて置いちゃうと、キャベツから水分がでるでしょ?あれがね、べちゃってする原因なのよ!」
「おぉ、こだわってるねぇ、将来はもう、お好み焼き屋さん、やっちゃう?」
「え?やらな~い。だいたいタカシさ、1枚600円とか700円のお好み焼き、1日何枚焼けば儲かると思ってるの」
「ちぇ!冗談に決まってるじゃん!もう~アカリは現実的だなぁ。でさ、現実的ついでに聞くんだけど、なんでこんな風に切り分けたの?」
「え?切り分け?だって、こんな風に切り分けた方が、食べやすいんじゃない?」
「え~?食べやすくはないよ?これ、ピザの切り分け方じゃない?」
「うん、そうだよ?なんで?悪いの?」
「う~ん、悪くはないんだけどぉ、お好み焼きの上の具材とかソースとかマヨとかが、ビロ~ンってなっちゃうなぁ~とか?」
「あぁ、ホントだね、たしかに!でもさ、それはピザだっておんなじだし、これならみんなが同じように食べられるでしょ?真ん中から端っこまでさ、平等じゃない?」
「ん~平等かぁ、そうなのかなぁ~、ピザだといいんだけどなぁ~」
「そっかぁ、じゃ、ちょっと待っててね?」
・
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「お待たせ」
「いえいえお気づかいなく」
「じゃさ、タカシは普通の真四角っぽい切り分け方がいいわけ?」
「うん!あれってさ、とっても食べやすいしさ!真ん中の四角いのがとっても美味いでしょ?」
「わ~!タカシってもしかして、お好み焼きの真ん中だけ食べる人?うわ~、信じらんない」
「え?そんなことするわけないじゃん!もしお好み焼きの真ん中だけ食べる人がいたら、オレ、友達やめる!!」
「うんうん、私もそう思う!美味しいとこだけ独り占めなんて、私はだめ!友達以前の問題だわ。でも、一回は言ってあげるかも」
「え?なんて?」
「ん?ピザ風に切り分ける?って!」
「おやまぁ、アカリ君、それ、解決になってないよ?でも・・」
「でも?」
「アカリがそういう人で、良かった」
「え?え?そういう人って、なに?」
「ん~、まぁそういう人はそういう人ってこと!」
・
・
・
「え?今日のお昼、お好み焼き焼くの?じゃさ!エビとかイカとか入れて、ミックス玉にしよ?」
「ん、い~よ~、ミックス玉ね!やっぱこういう具材だと四角く切り分けるのがいいんだなぁ、ひとつにそれぞれ乗る具材が違うのが面白いしね!」
「うんうん、そうだよアカリ君、その通りだよ」
「ところでさ、むかしむか~し、中学んときかな、私んちでお昼にお好み焼き焼いたことあったじゃん?」
「アカリんちで?うんうん、あったあった!」
「あんときさ、お好み焼きをピザみたいに平等に切り分けるって、言ったでしょ?」
「うん、うん?あった?」
「あったよ!あった!でさ、あんとき平等に切り分けるって言う私の事『そういう人』って言ったよね?」
「言ったかなぁ、そんなこと」
「言ったの!でさ、私、分かったんだよね!そういう人の意味」
「ふぅん、どんな意味だったの?」
「それはねぇ、会社の後輩にいたんだ。お好み焼き真ん中だけ食べる人」
「え~!ホントにいるんだ!」
「うん、いたねぇ。でさ、ワタシ先輩だからさ、言ってあげたのよ。そこってみんな食べたいんだよね~、じゃ、ピザ風に切り分ける?って」
「そしたら?」
「そしたらその後輩ちゃん、そんなこと教えてもらったの初めてです、ありがとうございます!!って、めちゃ感謝されちゃってさ!あ~そうかぁ、あんときタカシが言ってた『そういう人』って、こういう人の事かぁって、分かっちゃったってことだよ、どうかねタカシ君」
「おぉ、それは素晴らしい先輩風ぶんぶん。でも、良かったんじゃない?いい先輩じゃん!その勢いで出世しろよ?アカリ君!」
「おう!!まかせてタカシ!ワタシは、なんかの女王様になるっ!!」
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ふぅ、美味かったな!アカリの焼いたお好み焼き。
でもびっくりした、あんときのこと覚えてるなんて。
で、それをずっと考えてたんだ。アカリって単純だなぁ、そういう人って、そんな意味じゃないのに。
あのときさ、ピザ風に切り分けたお好み焼きに、また包丁入れて、食べやすくしてくれたよな?
でもさ、あのときのアカリ、端っこばっかり食べてるんだよ。
そういう人なんだよ。
アカリはさ。
あの頃、それに気付いたの、オレだけなんだよ?
たはっ!照れるぜ!!
■高校生:タカシとアカリの焼きそばパン
キーンコーンカーンコーン
「きりーつ、れーい」
4時限目の終わりを告げるチャイムと同時に、待ちかねた日直の号令が掛かる。
”○○ページは覚えとけよ”と言いながら教材を片付ける教師を尻目に、皆の心は昼飯100%だ。○○ページなんか聞いちゃいない。弁当組はいいだろうが、俺は購買派。急がねば!!
「タカシ、購買行くの?じゃ私のも!お願い!!」
「分かった!焼きそばパンな!」
アカリが声を掛けてくる。幼稚園から高校まで一緒の幼馴染、焼きそばパンを買わされるのはいつものことだ。まぁ、その分おばさんがご馳走してくれるから全然構わないんだけど。
昼の購買部はいつも人だかり。その中でも焼きそばパンは人気で競争率が高い。ちらっと見えた残りは2つ、やばいな。
「すいません!焼きそばパンをふた・・」
「これ!焼きそばパン!」
横にいた男子が素早く焼きそばパンを手に取る。言うより早く手を出した方が良かったか、ひとつをゲットし損ねた!
「あ、焼きそばパンと、えっとじゃあ、コーンマヨにカレーパン。それとコーヒー牛乳2本」
飢えた高校生は気が立っている。グズグズ選んでる間はないのだ。
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教室に帰るとアカリが待っていた。
「ほれ、焼きそばパンとコーヒー牛乳、ちゃんとおばさんに言っとけよ?優しいタカシ君が買ってくれたって」
「うんうん、分かったぞ。で、タカシはコーンマヨとカレー?焼きそばパンなかったんだ」
「ああ、お前いっつも焼きそばパンだろ?俺も好きだけどさ、要するにみんな好きなんだって」
「ふぅ~ん、好きなんだ。じゃさ!コーンマヨパン半分と焼きそばパン半分で、どう?」
「お!いいねそれ!半分こな!!」
「じゃあね、ちょっと待ってよ~」
「おろ、ちょっと待て、手で千切るのか?焼きそばパンを?」
「え?そうよ?」
「それじゃ焼きそばがビロ~ンってなるじゃん。ちょっと席について半分食おうぜ!で、交換な!焼きそばパンとコーンマヨパン」
「え?え?うん、いいけど」
・
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「ほい、コーンマヨね」
俺はアカリが友達と食べている席に行って、半分になったコーンマヨパンを手渡した。
「うん、じゃ、はい」
アカリが俺に渡してくれたのは、ほんのひと口だけかじった焼きそばパンだった。
「あれ?なんだこれ、ぜんぜん食べてないじゃん。しょうがないなぁ、では、これも付けてあげよう」
優しい俺は手つかずのカレーパンを差し出した。
「うん、ありがと」
育ち盛りの高校生は腹がすく、それは男子も女子も同じなのだ。
「おう!どういたしまして!」
席に戻る俺の後ろで、なぜかアカリの友達の歓声が上がっていた。
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・
「え~?そんなこと、あった?」
「あったよ、あったあった。あの時はなに?なんで焼きそばパン食べてなかったのさ」
「忘れたよそんなこと、おなかいっぱいだったんじゃない?」
「高校生の女子が?男子の前で恥ずかしかったんじゃないの?」
「もう!そんなことよりさ、焼きそばパンでしょ?焼きそばが少しと食パンが1枚あるから、焼きそばパンつくろ?食べるでしょ?」
「焼きそばって昨日の夜たくさん作ったヤツの残り?ちょっとしかないでしょ。それに食パン1枚でどうやって作るのさ。半分に折ったって食べにくいでしょ?焼きそばがビロ~ンってなるから」
「えへへ、それがならないのだよ」
「へぇ」
「まぁちょっと待ちたまえ」
アカリはそう言うとキッチンに立った。
-焼きそばはレンジでチン、か、食パンはトーストして、ん?
「こうやってね、トーストを半分に切ってね、で、包丁を耳まで入れて袋状にして」
ほど良く焼けたトーストはまるでお稲荷さんのような袋にされ、焼きそばを詰められた。
「ほらできた!少しの焼きそばも結構ボリューム出るでしょ?」
「ほんとだ、それに食パン1枚でふたつできるんだなぁ」
「そうそう、半分食べて渡す、なんてことしなくていいのよ?」
「なにそれ、皮肉?」
「いいじゃん、ほら、食べよ?」
トーストは香ばしく、焼きそばも食べやすい。
「うん、おいしい。それに焼きそばがこぼれないのがいいね」
「でしょ?だからね、半分食べて渡す、なんてことしなくていいの」
「これおいしいし、量もちょうどいいや。また作ってね!」
タカシは私の言うことなんて、耳に入ってないみたい。
でもあのとき、おなかいっぱいだった訳じゃないのよ。
だって、半分も食べられるわけないじゃない。
タカシにあげる焼きそばパン。
いっぱいだったのは、私の胸なんだから。
ふふ。
■アカリのカルボナーラ
日曜日のお昼前。
「おなかすいたなぁ」
僕は独り言のようにつぶやいた。
「ホント、おなかすいちゃった」
アカリがそれに応える。
「なにか作ろっか!」
「いいの?」
「うん、じゃあね、カルボナーラとか?」
「へぇ、カルボナーラって難しいんじゃない?」
「うん、そうなんだけど、クックパッドでね、簡単なレシピがあるのよ」
-クックパッドか、今は色んな動画のレシピサイトとかあるのに、ずいぶんと老舗のサイトを使うんだなぁ。
僕は変なところに感心していたが、美味しければそれでいい。それに、アカリがそうやって料理を練習しているのも嬉しかった。幼馴染でお互い遠慮がない仲だけど、向上心があるっていいよね。
アカリはさっそく大き目のフライパンにたっぷりのお湯を沸かし始めた。
ざぁっと塩を入れている。
僕はちょっと興味があって後ろから見ていたが、その塩の量に驚いた。
「え!そんなに入れるの?塩って」
「うん、ほら、適量は湯量の1%ですって書いてあるでしょ?」
アカリの傍らにはタブレットが置かれていて、カルボナーラのレシピが表示されている。
「ほんとだ、2リットルの水なら20グラム?すっごい多いね」
「なんかね、入れなければ入れなくってもっていうレシピもあるんだけど、テレビとかでも大体入れるみたいね。パスタの下味とか、腰が出るとか」
「ふぅ~ん」
そんなことを話しているうちにお湯が沸騰し、アカリは用意していたパスタを入れた。
「これで後7分とか8分とか。アルデンテっていうでしょ?タカシは硬めがいい?柔らかめ?」
「う~ん、僕は硬いパスタって、ちょっと苦手かなぁ。給食のソフト麺が好きだったくらいだからね~」
「分かった、じゃ、ちょっとだけ長く茹でるね。じゃ、後はベーコンを」
アカリはフライパンを熱してオリーブオイルを敷き、ベーコンを炒め始めた。
「ベーコンはね、ホントはパンチェッタっていうのを使うんだって」
「ぱ、ぱんちぇ?」
「パンチェッタ、豚肉の塩漬けなんだって。スーパーでも時々見掛けるけど、あんまり普通には売ってないから、ベーコンを使うんだって」
「ほぉ、さすがアカリ先生、お詳しいですなぁ」
ベーコンを炒め終わったアカリは、おどける僕を無視して玉子の準備に取り掛かる。
「たまごは~、黄身と白身を分けておきます、か。二人分だから2個だね。白身はまた何かに使おっかな。それからぁ、パスタがゆで上がるちょっと前に、牛乳を二人分で200cc、それと塩、昆布だし、にんにく、黒コショウをベーコンのフライパンに入れて沸かします」
「牛乳なんだ、それに昆布だしとか入れるの?イタリアンなのに?」
「うん、ほら、書いてあるでしょ?それにこのレシピの名前、”牛乳で簡単カルボナーラ”って」
「あ、ホントだね」
「きっとね、イタリア人がこのレシピで作ったら、オーマイ!ってびっくりするんだよ?」
「え!イタリア人って、オーマイって言うの?」
「え?言わないの?って言うか、このスパゲッティがね、オーマイスパ・・」
「おっと!そっから先はコンプライアンスに違反するかもよ?」
彼女はそんな僕をやっぱり無視して料理を続ける。
「で、沸いたところにチーズを加え、火を止めて混ぜて、チーズが溶けた頃合いでパスタを移します。湯切りは必要ありません、か」
アカリはタブレットを見ながら、ちょうどパスタが茹で上がる頃合いでチーズを入れ、フライパンの火を止めた。
「で、パスタ投入!」
うん、熱々ソースに熱々パスタ。これで絡めるだけでも美味しそう。
「さ、こっからは速いのよ?」
アカリはそう言いながらパスタの上に玉子の黄身を乗せた。
「で、すかさず混ぜます混ぜます、更にぐるぐる混ぜます!!」
先ほどまで白っぽかったソースがみるみる黄金色になる。アカリはパスタを混ぜる手を休めない。
「ここでのんびりすると、黄身が固まって乳化しないのよ」
すごい勢いてパスタを混ぜる姿は、傍目で見ているとちょっと面白い。
ふと、アカリの手が止まる。
「できた。完成」
お皿をふたつ、そこに出来上がったカルボナーラを盛り付けて、更に黒コショウを振る。見るからに美味しそうだ。
「さ、食べよ?カルボナーラはどんどん固まっちゃうから、出来立てをすぐに食べなきゃね!」
「うん、あ、ちょっとお茶とか」
「タカシったらもう!それ先に準備しておいてよ」
「あはは、ごめん、すぐだから」
お皿二つをテーブルに運び、冷たいお茶を準備する。
「じゃ、いただきます!」
「はい、召し上がれ」
「おぉ」
早く食べなきゃと言いながら、アカリは僕のひと口目を見つめている。
「どう?」
「ん~~っま!!」
「ホント?」
アカリはすっかりご機嫌でフォークにパスタを巻き付けている。
「あ、おいし~」
「ホント簡単だったね」
「うん、コツはね、最後のパスタぐるぐる混ぜみたい。モコモコになると失敗だって」
僕はカルボナーラを食べながら、ある風景を想像していた。
「でもね」
「え?」
「これって、本物のカルボナーラじゃないんだって」
「え?こんなに美味しいのに?」
「うん、このレシピにも本物じゃないって書いてあるけど、ちょっと調べたら、本物はさっき言ったパンチェッタを使って、他は卵とチーズだけなんだって。もちろん牛乳も昆布だしも入らないよ?」
「そうなんだ」
僕の思い描いた風景に、その”本物のカルボナーラ”が加わった。僕は食べる手を止めてお茶をひと口含み、ティッシュで口元を拭いてアカリに向き直った。
「じゃさ、その、本物のカルボナーラさ、披露宴で出さない?」
アカリはフォークをくわえながら目を見開いた。まっすぐ僕の目を見ている。
「披露宴?誰の?」
「はぁ?誰って、僕たちに決まってるじゃん!」
「私たちの、披露宴?」
「そう!僕たちの披露宴に、本物のカルボナーラを出すの!」
アカリはフォークを皿に置き、少し俯いて言った。
「それは無理」
「へ?」
「それはできないわ」
「へ?なんで?」
僕は思わぬ返事にうろたえた。なぜ?なんで?頭の中は疑問符でいっぱいだ。
テーブルに両手をついてオロオロする僕に、彼女は毅然として言い放った。
「ワタシ、和食党なの!!披露宴は会席料理!!」
そう言うアカリの瞳は、涙で潤んでいた。
-そうかそうか、そう来たか。じゃ、僕も容赦はしない。
「うん、もちろんいいよ、和食ね。じゃ、神前結婚式だな」
「そうね!」
アカリの笑顔が弾ける。
「ね!食べよ!カルボナーラ、モコモコに固まっちゃうよ?」
僕も笑顔で応える。
「うん、食べよ!」
しかし、僕の笑顔の裏に、別の顔があることをアカリは知らない。
ふふん、覚えておけよ?さっきのお返しだ。
君が望んだ披露宴の会席料理に、カルボナーラをぶち込んでやる。
しかも本物じゃない、このクックパッドのカルボナーラ風だ!
式場が決まったら、アカリに内緒で事を進めよう。
ああそうさ、俺は容赦しない男だぜ。
ずずず。
うま。
■タカシの玉子サンド
とある良い天気の日曜日。
「あのさ、アカリ、なんか食べたいもの、ある?」
「う~ん、あんまりないかなぁ。でも、玉子のなにかなら、食べられるかなぁ」
「そっか、アカリは玉子、好きだもんね~。じゃあ、カルボナーラは?」
「うん、食べたいけど、今は食べられないかも」
「玉子チャーハン!」
「重いかなぁ」
「玉子雑炊!!」
「あ、それなら、でも、なぁ。ご飯は白いご飯で食べたい、かなぁ」
「そうかぁ、パスタ、ご飯もの、あとは、パンか」
「あ、玉子サンド!柔らかくってふわふわの食パンに柔らかくってふわふわの玉子サラダ挟んで、パンにはマーガリンも塗ってあって、それにあっためた牛乳にちょっとだけコーヒーと砂糖入れて一緒に食べるの。おいしそ!」
「よし分かった!買い物行って焼きたての食パン買って、レシピ調べて作ってみるぜ!待ってろアカリ!」
「うん、タカシ、ありがと」
玉子サンドは意外と手が掛かる。玉子を茹でて冷まして剥いて、玉子サラダを美味しく作るのも難しいわ。でもタカシがあんなに一生懸命。
頑張って食べなくっちゃ、私も。
・
・
「できた!玉子サンド!コーヒー牛乳も作ったよ?ほら、アカリ、たべよ?」
「わ!美味しそう!!」
「へへ~、切り分けるときちょっと難しかったけど、玉子サラダがちょっとはみだしちゃったけど、いいよね」
「うん、あ、おいし~、パンがやわらか~い。あ、ちょっとだけマスタードも入ってるの?うん、食欲が出る。それに、この玉子サラダ・・」
「へへ~、美味しいでしょ?これね、オレが作ったの」
「え?タカシが作ったのは分かるよ?買って来たんじゃないし」
「うん、オレが考案した、オレレシピなのさ!!」
「ぷっ!なにそれ、オレレシピって、舌噛みそう」
「いやいや、オレが考えたんだからオレレシピでいいの!」
「ふぅ~ん、でもこれ、とっても美味しい。ふわふわのとろとろだけど、水っぽくなくって、玉子の味がしっかりしてる。なんでかなぁ」
「ふふふ、それはね、ゆで卵の作り方にコツがあるのだよ」
「え?ゆで卵はゆで卵でしょ?玉子をゆでるだけじゃないの?」
「ああ、もちろんゆでる。でもさ、これ作るの、すっごく早くなかった?」
「あ、そうだね!台所に見に行ければよかったけど、えっと、20分くらい?」
「いやいや、15分くらい。玉子をゆでるとこからだから、すっごく早いでしょ?」
「ほんとだぁ、固ゆで玉子を作るだけでも10分掛かるし、ゆで玉子って殻を剥くのに時間が掛かるのよね、これ、玉子4個分?すっごく早いね。どうやったの?」
「それはねぇ・・・」
タカシはゆで玉子の”オレレシピ”を教えてくれた。
それは、フライパンにお湯を浅く張って沸騰させて、そこに玉子を割り入れて、平たいポーチドエッグにする。というやり方だった。浅いお湯はあっという間に沸くし、玉子を入れて弱火にして蓋をすると、後は黄身のゆで加減を見ながら固ゆでくらいにすればいいんだって。
なるほど、確かにそれなら殻を剥かなくっていい。それに、白身の水っぽい部分が散るから、茹で上がった玉子をバットに取って水気を拭いて、それを潰して味付けすれば濃い玉子サラダが作れるって。
すごいわ。ふつうのゆで卵でもちょっと水っぽくなることがあるけど、このレシピなら味の濃い玉子サラダになるはず。
後は茹でてる間に準備した食パンに挟んで切り分けるだけ、か。
切り口がゆがんでるのは、まあ許しましょう。
・
・
「タカシ、ありがと、美味しかった~。カフェオレ?みたいなのもほんのりと甘くって、玉子サンドに良く合うね!こんなに食べたの、久しぶりかもしれない」
「うんうん、感謝したまえアカリくん、この優しいタカシくんに、
「もう!調子乗らないの!!それにこのレシピ、ホントにタカシが考えたの?」
「あ、う~んっと、クックパッド、様に、お願い」
「もう!やっぱり?」
・
・
・
ああ、ホントに久しぶり、美味しかった。一生懸命私に食べさせようって、色々してくれるタカシに感謝だわ。
私も頑張らなくっちゃ。
ああ、なんか思い出しちゃう。
高校生の頃、タカシと食べた焼きそばパン。
子供の頃、お好み焼きを焼いてあげたこともあったわ。
それに、カルボナーラ食べながらプロポーズ。
またあんな風に、食べられるかしら。
私と、タカシと。
そして、子供たちと。
ママは、頑張らなくちゃ。
■アカリのニラ玉
「もう、10時過ぎちゃったか」
私は目の前のタンブラーを手に取り、ひとくち飲んだ。
口の中にピリリとした刺激を感じ、鼻に向かって芳香が抜ける。そして喉から胃に向かってじんわりと液体が落ち、胃が温まる。
子供たち、しおりと孝太はとっくに寝てしまって、アカリも静かに寝息を立てていた。ひと息付ける時間だ。
「はぁ、アカリの病気、良くなるのかなぁ」
私は天井を見上げて目を瞑った。
「はぁ」
酒をひと口含み、ため息をつく。その繰り返し。
目の前にはタンブラーとお皿。お皿にはアーモンドとジャイアントコーン。アーモンドは私の好物、ジャイアントコーンはアカリの好物。
前はアカリも、ちょっとだけ、と言って酒に付き合ってくれたけど、今アカリは病気だし、固いものが食べられなくなったから、私だけ、ひとりきり。
「はぁ」
そんな私のため息が聞こえたのか、アカリが起きてきた。横になっていた方がいいのに。
「あれ?、タカシ、そんなおつまみで呑んでるの?」
アーモンドとジャイアントコーンを見て、アカリが言う。
「うん、ジャイアントコーン、アカリが好きでしょ?だから、買い置きがあってさ」
「あ、そっか、賞味期限、切れちゃうか」
何ヶ月も食べられなかったアーモンドとジャイアントコーン。
アカリと私は、何とも言えない気持ちになってしまう。
そんな雰囲気を、アカリが吹き払った。明るい顔で、明るい声で。
「おつまみ、なにか作ろっか?」
アカリは長い時間立っていられない。料理なんて無理だと思った。
「ありがと。でもいいよ、それよりもほら、寝てなくっちゃ」
「ううん、作りたいの、久しぶりに。でもすぐ出来る、簡単なものしか作れないし、準備、手伝ってくれる?ホントにすぐできるからさ」
アカリの目には、有無を言わせない力があった。
「うん、分かった。それで、何を準備すればいい?」
「えっとね、野菜炒めにって、ニラを買って来てたでしょ?それと卵を3個、あとはニンニクと・・・」
なるほど、ニラ玉だ。
調味料は塩とオイスターソースだけ。
卵3個をボウルに溶いて、ニラは3cmくらいに切ってあげた。
私が言われるまま下ごしらえすると、アカリは満足そうに微笑んだ。
「準備はできたね。じゃあね、あと、フライパンを二つ下ろして欲しいの」
「分かった、フライパン二つだね」
アカリはふたつのフライパンを火に掛けて、どちらにもサラダ油を敷いて、コンロの火を点けた。
「これにね、まずはニラをっと・・」
ニラをフライパンに入れると、すぐにしんなりとなる。そこに塩を少し、ニンニクを小さじ1くらい入れて軽く混ぜた。
「これでよし、あとは・・」
アカリはもうひとつのフライパンの油が十分に温まったのを確認して、溶いた卵を一気に入れた。卵はジャっと音を上げ、あっという間に膨らむ。
「ほら、フワフワになった」
アカリはその卵をざっと混ぜて、即座に炒めたニラを入れ、オイスターソースをひとまわし入れ、そしてこれもざっくりと混ぜた。
「ほら、できた」
「え?もう終わり?5分も掛かってないよ?」
「だから言ったじゃない、早いよって」
「そうか、これまでも作ってくれたことはあるけど、こんな手抜き料理だったのか」
「手抜きって、もう、ひどいわね。手際がいいって言って!」
僕たちは笑い合った。
出来上がったニラ玉をお皿に盛ってリビングに戻ると、アカリは、「じゃ、寝るね」と寝室に向かった。少し疲れたようだ。と思ったら、アカリはドアの隙間から顔だけ出して「飲み過ぎないでね」と言った。
こんな美味そうなニラ玉なんて作ってくれたのに、これが呑まずにいられるか。
そう言ってやろうと思ったけど、やめた。
あんまり酔ったら、ニラ玉の味が分からなくなっちゃう。
アカリが作ってくれた、もしかしたら、アカリの最後の料理。
おいしい。
塩が効いてると思ったら、私の涙の味だった。
声を上げそうになったけど、ぐっと飲み込んだ。
ニラ玉と一緒に。
■ふたりのオムライス
オムライスには色々な種類があるんだよ?
知ってたかい?
その中でも一番難しいのは、たんぽぽオムライスなんだ。
ケチャップライスの上で、オムレツを割る、あれだ。見たことはあるだろ?
よくあるトロトロオムライスはたんぽぽオムライスじゃないんだぞ?
あれは~、半熟卵かけケチャップライス、だなぁ。
あくまで父さんの感想、だがな!
たんぽぽオムライスっていう名前はね、昔、たんぽぽっていう映画があったんだ。潰れかけのラーメン屋さんを立て直すって映画でね、その一場面で映されたのが、ケチャップライスの上でオムレツを開くオムライス。それまで誰も見たことがないオムライスだった。
父さん、ビックリしたなぁ。母さんも一緒に見たんだぞ?面白い映画だった。その映画の名前を付けたのが、たんぽぽオムライスってわけだ。
それをね、母さんは一生懸命練習したんだけど、結局できなかった。難しいんだよ。たんぽぽオムライスは。
父さんは、そんな母さんの失敗作をたくさん食べて、レシピを覚えたんだ。
でも一度だけ、一度だけ上手くできたなぁ。
あの時の母さんの嬉しそうな顔。今も思い出すよ。
具材はね、ハムだけでいい、普通のロースハムだ。特売品だとなおいいね。
それに玉子、これもブランドものなんかいらない。ただただ新鮮ならいいよ。意外とね、日替わり特価の安売りタマゴがね、新鮮だったりする。
母さんも、よくそう言ってたな。
なんなら具材もいらないんだぞ?玉子と飯と油と調味料、とにかくシンプルな料理だから、意外とごまかしが効かない料理なんだ。
ケチャップライスの油はサラダ油なんかでいい、ケチャップと馴染むならなんでもいいぞ?オリーブオイルやごま油を使うと、ちょっと変わった香りがするしね。
飯もそうだ。白飯じゃなくっても全然構わないな。ただね、熱々の飯を入れる。
冷やご飯ならレンチンすると良いね。温かい方が、油の馴染みがいいからね。
さぁ!フライパンを一気に煽ってケチャップライスを完成させるぞ。ここは力がいるからお前には無理かなぁ。母さんもここは煽らず静かに混ぜるだけだったしね。
そう言えば、おまえはオムライス作る時、フライパンの中を見るのが好きだったね、ケチャップライスだけ食べたかったの?
ほら出来た、お皿に盛ろうか。
たんぽぽオムライスにするなら、ケチャップライスの上を平らに均して、オムレツが乗りやすくするのがコツなんだぞ?
さぁ!いよいよタマゴだ。
玉子はぜいたくに3個使うぞ?クリームや牛乳は入れないんだ。その方が素早く火を入れられる。でも火が通るタイミングを間違うと、オムレツが中まで硬くなって割れなくなっちゃうから、注意するんだよ?
オムレツにはバターを使おうね。でも、マーガリンでもいいさ。
バターは高いだろ?
お前の給料が上がったら、バターを買うといいね。
それと、フライパンは卵専用を1本持っておくといい。これはもう10年以上卵専用で使ってるんだ。ちょっと高いフライパンも、結局はお得なんだよ?
さぁ、溶いた玉子をフライパンに入れたらゆっくり大きくかき混ぜる。こうやって、玉子の様子をよく見ながら、割れたときのトロトロ感を想像しながら。
トロトロの玉子をまとめるのは勇気がいるだろうけど、怖がっちゃだめだよ。一気にまとめるんだ。
火の当たりに注意して、繊細かつ大胆に。
玉子の皮がトロトロの中身を包み込むように、ね。
そんなオムレツが出来たとしても、まだ油断しちゃだめだよ?
オムレツにはどんどん熱が入っていくんだから、出来たら即座にケチャップライスの上にのせる。
グズグズしちゃだめ!
思い切って!!
緊張してもいいよ。でも、失敗したっていいんだ!って、割り切ることも大事なんだ。どんな仕事でも、そうだろ?
よし、オムレツはできた。乗せるぞ?
ケチャップライスにオムレツを乗せる。ここは意外と難しい。ケチャップライスの山から滑り落ちれば、もう雪崩オムライスになっちゃうからね。
フライパンから滑らせるように、オムレツをケチャップライスの平たくしたところへ、スライドっと・・・
よし、上手くいった。急いでテーブルに持って行こうか。
・
・
さ、割ってみて。
時間はないぞ?玉子はこうしている間にも固まっていくんだから。
そうそう、キレイに開いたね。
ほら、片側も。
うん、大丈夫。
最後の最後、お前の手が入って出来上がったたんぽぽオムライスだ。
ケチャップも好きな量だけ掛けていいよ?あとは自由に食べるといい。
美味しいか?
これが母さんのレシピだから、しおりも覚えておきなさい。
母さんは、玉子の料理が好きだったからなぁ。パスタならカルボナーラとか、サンドイッチはいっつも玉子サンドだったからね。
でも、一度じゃ覚えられないだろうし、また食べたくなったら、いつでも帰ってきていいよ?
それに、しおりが帰ってくると、かあさんが喜ぶからさ。
ほら、かあさんの写真、笑ってるように見えるだろ?
え?父さんはどうなのって?
「うん、父さんは、私に帰って来て欲しい?」
う~ん
「わたし、帰ってこようか?このお
うん、まぁ、それはいいからさ、さぁ、もう食べなさい、オムライス。温かいうちに
・
・
「今日、しおりが来ててね、オムライスを作ってあげたんだよ?」
「これが母さんのレシピだよ、って教えてあげたんだ」
「そしたらね、しおりがね」
「この家に、帰ってこようか?だってさ。優しい子だ、嬉しいね」
「でも、いいよね。僕たちふたりで、これからもここで」
「ね、アカリ」
了
ふたりのレシピ - 幼馴染みに恋をした ひゃくねこ @hyakunekonokakimono
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