前のエピソード――5

僕はこの世界に来てから学んだことを思い返す。

「そして、帝国は――もう一つの神である竜の力を持っているんだよね？」

ミレイアの声は次第に低く、哀しみが漂い始めた。

「その通りよ。不死鳥とは違って、竜の力は召喚士を通じてではなく、直接皇帝に宿る。そこが彼らの危険なところなの。」

彼女の言葉は重く、大気に長くとどまり、僕たちの周りに古代から続く戦いの影を落としているかのようだった。

ミレイアの表情はさらに暗くなり、まるで何世紀もの戦いの記憶を背負っているようだった。

「竜と皇帝は一体よ。完璧に研ぎ澄まされた刃のように、余分な力など一切なく、神のすべてを出し切ることができる。皇帝はその力を余すことなく行使するの。」

一瞬、彼女は遠くを見つめ、過去の戦いの記憶に囚われたかのようだった。

「でも、私たち不死鳥側は違う。力は川の支流ようにいくつもの流れに分かれ、それぞれの召喚士に与えられる。川の大本となる本体の力は強いけれど、どんなに優れた召喚士でも、その全てを完全に引き出すことはできない。」

ミレイアは深くため息をついた。それは歴史の重みが詰まったため息だった。

「500年前、私たちは滅びかけた。でもね、私たちの強さは、竜のように直接的な戦闘力にあるだけではなくて、優れた召喚士は、時に変則的な力を使うことができる、それが私たちの強みなの。たとえばエリシアの能力――他人の潜在能力を一気に高めたり、一生に一度だけ物に生命を吹き込んだり――それがあなたが操縦するファルコン自我を持っている理由でもあるの。」

ミレイアの瞳は僕を見つめ、真実を突きつけていた。

「そしてもう一つ、古代から続く最後の手段として異世界からの召喚術があるの。これこそが、あなたがここにいる理由なのよ、湯島。私たちの運命を、少しでも良い方向に傾けるための救世主としてのあなたが。」

僕はミレイアを見つめ返し、心の中で決意を固めた。

「もし僕がこの世界の救世主として召喚されたのなら、その役目を果たすために全力を尽くすよ。」

だが、僕の決意にもかかわらず、ミレイアの表情は変わらなかった。

「ありがとう、湯島。でも、まだ知っておくべきことがある――」

彼女の声が詰まり、言葉にするのをためらっているのがわかった。その瞳には、深い葛藤が宿っていた。しかし、やがて意を決したように、ミレイアは重い口を開いた。