2
奴の部下たちが、少年少女たちを船に押し込んでいるのが視界に入った。子供たちは涙と泥にまみれ、鎖でつながれたまま、無理やり船へと押し込まれている。目は虚ろで、幼い心には耐え難い恐怖が深く染みついているようだった。彼らは震えながら進み、鎖の重さに心も体も押しつぶされるかのようだ。何人かは抵抗しようとしたようだけど、その小さな体は無情にも兵士たちに殴り倒され、再度無理やり前へと進められていた。
ミレイアから、ヴァルトンが逃げ込みそうな場所をいくつか教えられ、最初の候補地を捜索していたときだった。運よく奴の居場所がわかり、ちょうど帝国行きの飛行船に乗り込もうとしている瞬間、間一髪で追いついたのだ。僕は物陰に隠れ、機をうかがいながら奴の動きを監視した。
周囲の空気は絶望そのもので満たされていた。かつては活気に満ち、悪戯心に溢れていたであろう子供たちは、今では地面を見つめ、これから待ち受ける運命に怯え、心が砕かれているようだった。幾人かは互いに寄り添い、すすり泣きながらも、現実の悪夢にかすかな慰めを求めていた。しかし、兵士たちの怒声によってその泣き声すらかき消され、彼らは一歩進むごとに、死よりも恐ろしい運命へと近づいていることを理解しているかのようだった。そして、その全ての原因となっているのが、今、監視役として悠々と立っている男——ヴァルトンだった。
奴の目は冷徹で、唇には忌まわしい笑みが浮かんでいる。
「ああ、この地の少年たちは実に素晴らしい。」
ヴァルトンはそう呟くと、声には卑劣な喜びが満ちていた。
「女たちは正直言って平凡だったが、この美しい少年たち……彼らこそ、このカビ臭くて無価値な王国における最高の収穫だ。」
奴は闇を含んだ笑い声を上げながら、その中でも最も幼い少年に視線を向けた。その少年は状況を完全に理解していないほど幼く、涙に濡れた目でヴァルトンを見上げた。奴の笑みは、その恐怖を餌にさらに広がり、ますます醜悪さを増していった。
「戦闘は思ったほど上手くいかなかったが」
ヴァルトンは冷淡に言葉を続けた。
「この美しい者たちがいれば、それだけで十分な成果と言えるだろう。」
その言葉は毒のように周囲の空気に染み渡り、全てを穢していく。子供たちはただの捕虜ではなく、奴の歪んだ征服欲を満たすための戦利品に過ぎなかった。奴は彼らに苦痛を与えるその一瞬一瞬を楽しんでいたのだ。
ヴァルトンの邪悪な笑みが視界に焼き付き、僕の背筋に冷たい嫌悪感が走った。これ以上待つわけにはいかない。もう隠れている時間はない。僕は全身に力を込め、奴に向かって飛び出した。剣を抜き、ヴァルトンの首に狙いを定め、一気に突き進む。
だが、帝国の将軍として名を馳せたヴァルトンは、僕の気配を瞬時に察知し、あっさりと攻撃を受け流した。
「悪くない。」
ヴァルトンは低く言いながら、ゆっくりと僕に向き直ると、歪んだ笑みを浮かべ、侮蔑の滲む声で言った。
「本当はミレイア将軍と戦いたかったんだがな……彼女の伝説的な強さと、その美しさ。きっと戦いは魅惑的だったに違いない。」
ヴァルトンの目には、倒錯した欲望がちらついていた。
「だが、戦局を見る限り、俺が彼女に対抗するチャンスはなかっただろう。たとえこちらが有利な戦局に見えても、彼女自体はおそらく無敵だ。」
奴の視線が僕に固定され、不気味な笑みが広がる。
「その点お前は……ちょうどいい相手だな。弱すぎず、強すぎず。楽しませてくれそうだ。その辺の兵士よりは強いが、俺の敵ではない。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます