第2章 - 首都攻防戦

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敵の包囲が狭まり、戦闘の喧騒が耳をつんざくように響いていた。僕の相棒、ファルコンは沈黙したまま動かず、僕は武器も持たず、たった一人で敵の猛攻に立ち向かうことを余儀なくされていた。


心臓は狂ったように鼓動し、緊張で手足が震える。確かに、僕の反射神経と身体能力は常人を遥かに超えている。それを自慢したことは一度もないけど、今となってはそれが唯一の希望だった。でも、仮にその力があったとしても、武装した兵士たちを素手で相手にするのは、死刑宣告を受けたも同然だった。


帝国の兵士たちは四方から襲いかかってきた。鋭い剣が光を反射し、槍が次々と突き出され、矢が雨のように降り注ぐ。僕は瞬時の反応で矢はかわすことができたが、攻撃のすべてを避けきれるはずもなく、鋼の刃が僕の左肩に深く食い込み、激痛が走った。祖父譲りの治癒力があるに違いないと思ったが、この異世界における「召喚士」ではない僕には、傷を瞬時に癒す召喚力は使えない。致命傷ではなかったものの、容赦ない猛攻を前に、この体がいつまで持つかは分からなかった。


絶望が全身を支配し、四方八方からの攻撃を必死に避けている中で、これはもう終わりだと悟った。だが、その瞬間、突如として一本の剣が宙を舞い、僕の目の前に現れた。反射的にそれを掴み、まるで長年使い慣れた自分の武器のように柄を握りしめた。喉の奥から咆哮が漏れ、僕はその刃を力強く振りかざし、次々に襲いかかる兵士たちを切り裂いていった。


舞い上がる土埃の向こうに目を向けると、そこにはミレイアが立っていた。若干20歳にしてルクスエリオス王国最高位の将軍であり、その美貌と圧倒的な戦闘力で敵味方を問わず知られる存在だ。しなやかでありながらも鋭敏な彼女の双剣の動きは風のように流れ、次々と敵を斬り伏せていく。戦闘力だけでなく、指揮官としても天才的な彼女の才覚は、王国軍の全ての兵士にとって揺るぎない信頼の源となっていた。


「これ、ちゃんと研いでる三本目の剣だから、使い終わったらちゃんと返してよね?」


ミレイアはにこりと笑いながらそう言った。軽い冗談にも見えたが、その笑顔にはどこか温かみがあった。


「もちろんだよ。」


僕はそう返しながら、剣を振るい敵の群れを再び切り裂いた。


「でも、聞いて。」


彼女は表情を引き締め、鋭い眼差しを僕に向けた。


「帝国の将軍、ヴァルトン――奴は本物の悪党よ。若者、特に少年少女を狙って、甘い言葉で誘い出し、監禁しては拷問を繰り返してるの。この国中から子供たちを攫ってね。」


ミレイアは続けた。


「私はここで戦い続けなければならない。攫われた子供たちを救いたいけれど、私の本来の存在意義はエリシア女王を守ること。でも、あなたには違う使命がある。あなたの力は私に劣るかもしれないけど、それでも普通の兵士とは比べ物にならない力がある。だから行って。ヴァルトンの恐怖から、あの子たちを解放してあげて。あなたならできると信じてるから。」


彼女は最後に優しく微笑んで言った。


「あなたは、自分が思っている以上に強い。でも、あなたの最大の弱点は身体じゃない、精神よ。それを忘れないで。」


その言葉を胸に、僕は剣を強く握り直し、再び立ち向かう決意を固めた。

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