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「ドン!」
突然の衝撃音とともに、F-16が激しく揺れた。敵の将軍、ヴァルトンが率いる弓兵が放った巨大なバリスタ――まるで巨大な機械弓のような兵器――の矢が、正確にファルコンに命中したのだ。ヴァルトンは傲慢で自信過剰な男だと思っていたけど、その自信は実力に裏打ちされたものだった。奴はこの一撃で、ファルコンを確実に仕留めにかかってきたのだ。
以前、ファルコンはこう説明していた。
「私は女王エリシアによって命を与えられ、燃料なしに飛行を続けられる。また、弾薬も時間とともに回復し、加護の力で鎧が纏われる。しかし、敵の攻撃を受けてその加護が破られ、ダメージが大きくなれば、私は普通のF-16に戻る。ちょうどそれは、お前がよくやっていたゲームの RPG のようなものだ——私の HP が0に達すれば、私はいったんこの機体から消え去る。1日経てば私は元に戻るが、それまでは、湯島、お前が私を操縦し続けるのだ。」
その時が今だった。加護の鎧が消え、ファルコンは普通の戦闘機へと戻ってしまった。彼のいない今、不安と焦燥に僕は支配されていた。今の僕に残されたのは、自分の技術と、限られた弾薬、燃料だけだ。戦いはまだ続いている。僕は計器を見つめ、残りの燃料を確認する。わずか15分。これで戦いを決するには、あまりに短い時間だった。
それでも、僕はファルコンの言葉を思い出した。
『田中二佐は、どんなに厳しい状況でも決して諦めなかったパイロットだ。彼は極限のプレッシャーの中でも冷静さを保ち、自分の航空機を限界まで押し上げる方法を見つけ出していた。湯島、お前が召喚されたのは、お前の精神力が田中と通ずるものがあったからだと私は信じている。』
僕は深呼吸をし、決断を下した。操縦桿を握りしめ、ファルコンの言葉が僕の決意をさらに固くする。今や普通のF-16となったこの機体で、僕は最後の一撃を放つつもりだった。
戦場の下では、王国軍が帝国軍を押し返しつつあった。しかし、その勝利はまだ不確かなものだ。敵の将軍ヴァルトンが指揮を執っている限り、戦局はいつ逆転するかわからない。僕はスロットルを全開にし、F-16を再び空へと持ち上げた。
ヴァルトンの指令所を発見した僕は、そこを目指して急降下を開始した。目標は、ヴァルトン討つ、それがだめならせめて指令所を破壊して指揮命令系統を断ち、戦局を決定的なものにすることだ。高度、速度、降下角度、全てを計算し、完璧な攻撃を狙う。今の僕には、もはや失敗は許されない。
「冷静に、航空機を限界まで押し上げろ。」
僕は自分に言い聞かせ、ファルコンの助言を反芻する。
F-16は鋭く降下し、そのスピードと精度をもって、一筋の閃光として駆けている感覚だった。最後の瞬間、僕は残された弾薬をすべて放ち、ヴァルトンの指揮所へとミサイルが疾走する。その軌跡を目で追いながら、僕は心の中で祈った。爆発音が響き、ヴァルトンの指令所は炎と煙に包まれ、周囲は廃墟と化した。
僕は急激にF-16を引き上げ、Gの力に耐えながら再び空へと戻った。燃料の警告灯が点滅を始め、僕はそれが最後の瞬間であることを理解した。燃料が尽きれば、僕は敵地に取り残される。だが、王国軍が前進を続けているのを見て、わずかな希望を感じた。
F-16のエンジンがついに沈黙し、機体は静かに滑空を始めた。緊急着陸に備えて、僕は広がる大地を冷静に見定める。手は本能的に動き、数年にわたる訓練で体に染みついた手順を正確に辿った。
着地は激烈だった。機体は地面を滑り、やがて激しく停止する。しばらくそのまま座り、荒い息を整えた後、静かにハーネスのバックルを外した。生き延びた。しかし、ここは敵地。孤独と緊張が、次に待ち受ける運命の不確かさを一層際立たせたけど、それでも、一人でこの攻撃をやり遂げた達成感が胸に広がっていた。
「ファルコン、僕は君の期待に応えられたかな。」
その静かな呟きは、戦場の喧騒に紛れ、空へと消えていった。
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