第1章-5話 落石注意!
河原で子ども達と気持ちよく別れて、私は気分が高揚していた。
今日はツいているから、良い石と出会えるだろうな。
そう思いながら私はお気に入りの採石場に向かった。
キレイな宝石より鈍色の野暮ったい鉱石。
慣用句のように唱えながらそこまでへスキップをして行った。
採石現場は大きな岩が多く、足下もすべてがゴツゴツとしていて不安定極まりなく、慎重に歩かなければ転んでしまいそうだった。
周りが岩場なだけあり、頭を打っては本当に命を落としかねない。
しかし、私は高揚する自分の思いからヘルメット忘れてきてしまっていた。
しまった。
『安全第一ヘルメット』を忘れてしまった。
どうしようか。
まぁいいか一日くらい。
カツン、カツンとハンマーで砕いて採石をする。
賢人のように私は黙々とハンマーを丁寧に振るう。
掘ってー、掘ってー、掘ってー、掘り続けろ~♪
我が名はミスタードリラー。
ハンマーを持たせたら右にも左にも出て行けるまでの男だろうが、この地域ではNo.1だろう。
今までに琥珀が出土した地域で購入したことがあるくらいの実力だ。
宝石はやはり自力で掘り当てるのは難しい。鉱石は尚更だ。
鉄鉱石なら昔、遊びに行った採石場でお土産にくれたしキレイには見えなくは無い。
それはそれで満足した生活をしている。
そんなことを思いつつ。
カツン、カツン、ポロッ。
と掘り続けていくと何か見たことの無い色をして輝いている層に出会った。
「これって…ゴクリ」
青色の鋼玉…言うなればサファイア!?
思わず息を飲んで、慎重に採掘時に砕けて散っていった破片や砂を手袋をした手で払いのける。
「やっぱりだ!!!」
青く透き通っていて、見る者を虜にする色だ。
宇宙を彷彿とさせるような深く輝く群青色をしている。
9月の誕生石で秋晴れをイメージとされる。
なんだか学校疲れしている私の気分も晴れてきたようだ。
「どうしようか。売ったら田園調布に家が建つかもしれない。」
思わず、スマホを開いて写真に収めた。
SNSで自慢する相手もいない私だが、これは心の中で毎回頭の中で自慢する項目に取っておこう。
名発掘家と出会ったとして、物怖じしそうな時に
(私だってサファイア500g取ったことあるもんね。)
と自慢して自尊心を保とう。
散った破片や砂をどけていると500g以上あるのではないかと予想を上回った。
「はぁー。これまたすごい。」
と息を飲んで、それまた感動を覚えていた。
これからもいいことがありますようにと手を合わせて拝んでみた。
実に良い気分で気持ちが安らいだ。
パラパラッ
なんだろう頭上から物音がした後、上から何か砂が落ちてきた。
小さな石も頭にコツンと当たった。
目を開けて上を見上げると、大きな岩が迫ってきていた。
ゴツン…ドッスン
こんなのってなくね?
私はこの世を後にした。
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