第1章-3話 石は蹴るモノにあらず
価値とは何か?私は一人、下校中にひたすらこの一つのことを考えていた。
辞書で引いてみたら。
『物が持っている、何らかの目的実現に役立つ性質や程度、値打ち、有用性』
価値があるに決まっているんだ自分は。
そう人間誰しも思って生きている。でなければ人生という時間が有用性に満ちていなければ、充実した毎日が過ごせないからだ。
自己否定をしていては、それこそその時間は不毛であり、無価値である。
道行く道でけやき並木の石畳を歩いていると、道行く少年達が楽しそうな顔つきで何かを蹴っている。
何だろうか。
それは石ころだった。
蹴る度に白い粉が吹く。
かわいそうに。
蹴るだけでしか石を楽しめないのかこの年齢の子ども達はと青少年ながら思った。
でも、もしかしたら石に興味を湧かせてくれる子ども達かもしれない。
恐る恐る話しかけてみた。
「君たちは石について興味あるかい?」
勇気を少しだけ出して聞いてみた。100円アイスが似合いそうな子ども達だった。
「お兄さん何の人?」
「怪しい人だな。これ欲しいの?」
ポケットから冗談半分な顔つきで予備に入れていた石を私に見せてくれた。
「どれどれお兄さんに見せてみて」
見てみたらどれも普通の石ころだった。
ただ普通の石ころにしか見えないのは一般人からの目線だ。
私が冴えない顔を輝かせて答えてあげることにした。
「この石は平べったくて円状につくりができているから”水切り”に使えるね」
「”水切り”って何それ?」
少年達は面白そうな顔をして聞いてきた。
「近くに川があるから、そこまで付いてきて。」
「わかったよ。お兄さん」
そんなこんなで子ども達と川へ向かうことにした。
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