第16話 竜巻

 ダストンが目を覚ますと、横に知らない女が立っていて、その横に知らない男が一緒にいる。

そして周りには広大な畑と川が広がっている。すごく綺麗な所だ。

 その女はダストンのことを抱き上げた。

・・・そんなバカな、どう考えても軽々持ち上げるなんて無理だ。いや、違う。どうやら俺が赤ん坊になってるらしい。ものすごく変な感じだが、悪くない気分だ。夢か幻にしても暖かみがリアルに伝わってくる。何か喋っているようだが、ぜんぜん聞こえない。でも微笑んでいるから何となく伝わる。

 しかし突然横にいる男が、女の腕を掴み何か口論を激しく始めた。どうやらダストンを引き離そうとしている様だ。

 女は必死に抵抗した。激しく抵抗した挙句に、腰の後ろに隠し持っていたナイフを抜き、その男を刺した。

 女は自分のやった事に驚いて、我を忘れてダストンから思わず手を放した。地面に落ちる寸前で受け止めたのは、男の方だった。

 男は痛みに苦しみながらも、ダストンに向かって優しく微笑んでいる。そして何か言った。なぜかこれは聞き取れた。


 「お前にきっと役に立つ力を、今から授けるよ。」


 男はダストンの小さな手を優しく握り、何かを唱えた。


 「我、守護神なりて、解放の神なり。」


 ダストンの小さな左腕が、キラキラと輝き出した。するとその輝きは腕の周りをクルクルと、らせん状に渦を巻きだした。段々とそれは赤と緑の渦巻き状に変わっていった。それと同時に周りの空気をも巻き込みだした。


 男はそれを確認してから、満足そうに息を引き取った。女はというと、それが発動してから、妙に苦しそうにしている。それにしてもさっきとは様子がおかしい。女の容姿が明らかにさっきと違う。爪は長く伸び、頭からは角の様な物が何本も生えている。苦しむ口元からは牙の様な物も確認できる。女の不気味な指がダストンを掴もうとした時、ダストンは目を覚ました!

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