第15話 今昔の終着
ベシャル人の元国王ミーゴ。
宇宙掃除軍 現司令艦長ダストン。
2人の共通点、ベシャル人。そして血族にして親子関係。
能力値、現共に最高値に達する。 故に、共に危険人物に有り。
轟音が鳴り響くドーム内で、2人の死闘とも言える戦いは、もう既に二時間にも及んでいた。
流石に疲れが見え始めていた両者だが、互角にも近い戦いは、老体には厳しいものがあったのか、ダストンに、ほぼ軍配が上がりそうになっていた。
無限にはいかない体力を、振り絞るように放った左腕の力は、巨大なトルネードになり、ど
す黒い霧を、吸い込む様に巻き込んだ!
すると辺りを覆っていた霧も晴れ、青空を見せた。
最後の力を使い果たしたのか、ミーゴの髪色はグレーから真っ白に、肌も白く乾燥してボロボロに変わり果てていた。今までの長き寿命の反動か、文字通りヨボヨボの老人になった。立つのもままならず、ヨロヨロとよろめき、そのまま仰向けに倒れこんだ。
少しずつだが、緩やかな風が吹くだけで、肌の角質が剥がれていき、風に乗って飛んでいく。
その横に立ってそれを静かに見ているダストンは、表情も元に戻り、左腕は肩から下は全て無くなっていた。ミーゴを見つめるその目は、もの悲しい雰囲気に包まれていた。
お互い無言のまま時が過ぎ、ミーゴの体はほぼ無くなりかけていた。いよいよ最後、肩から頭が残った状態の時に、絞り出すようにミーゴが口を開いた。
「後生(ごしょう)の願いを最後に残す・・・」と、言い残し、全て風と共に消えていった。
頭のあった所に、何やら丸い物が残った。拾い上げるとそれは少し重みのある、機械化した目だった。小さなスイッチらしき物があり、それを押してみると、聞き覚えのある声で録音音声が流れ始めた。
「息子のお前に聞いてほしい事を伝える。これは生命の燃焼が尽きる時に、自動的に2分間だけ、頭に思い付いた事を自分の声に変換して記録してくれる物だ。
私は操られていた。私は本当にお前のことを愛していた。もう一度言う、私は操られていた。
私は皆の幸せを心から願っていた。国民あっての国だからだ。だが奴はそんな私の希望という名の欲に付け込んできたのだ。奴は不滅だ。いつでもそこにいる。
息子よ・・・必ず勝て!」
塵となって飛んでいったと思われた、ミーゴの欠片が上空に集まっている。それはミーゴの姿形からは、かけ離れた邪悪な鬼の様な姿になった。5メートルはあるかの巨大な鬼が、上空に浮いて、こちらを見下ろしている。
流石にたった今、力を使い果たしただけに、ダストンは恐怖に慄(おのの)いている。どうしたらいいか分からない。さっきまでの力はどうやったら出せるのか、必死に左腕の力を込めようとしてみるが、生身の腕も霧も無いために、頭が混乱している。のんびりもしていられない。奴がどんな攻撃をしてくるかも分からない。今までの混乱と疲れが一気にきて、ダストンはパニックに陥った。
鬼は無言のまま右手の人差し指を立てた。一瞬で小さな玉が指先にできた。それは今までにないぐらい静かで、かつスマートに周りの草木や岩や動物を吸い取った。無論人間も簡単に。
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