第14話 天網(悪事を逃さず、天が張り巡らせた網)

 ダストンから遠く離れた所に退避していたミーゴ。それにしてもあの力は予想に反していた。

 「あそこまでのじゃじゃ馬は面倒見切れん。」

 今回ここは退いて、次なるチャンスに体制を立て直さなければと、自らの乗ってきた瞬間移動ポッドに急いだ。

 しかし確かにそこに有った場所に、それは無かった。その置いた場所には無いが、その横に立っている、ダストンが左手の上に有していた。

 小さなポッドとはいえ、重さは十分にある物だが、先ほどの様に、軽々しく持ち、物珍しそうに、ジロジロと色々な角度から見ている。そして一通り見てから、グシャッ!っと、鉄で出来た機械を握り潰した。

 ミーゴは気づかれている事に勘付き、喋りかけた。


 「素晴らしい力だぞ、息子よ!これからはその力を、お前の好きなように使うといい。ワシはもぅ邪魔はしない。二度とお前達の前には現れんと約束しよう!あ、そうだ!これをやろう。」

 

 ミーゴはポケットから小さなリモコンのような物を取り出した。そしてそのスイッチの様な

ボタンに親指を置いた。

 「これを押せば、面白いことが起きるぞ。」


 押した瞬間、近くでボンッ!という鈍い音がした。ダストンは嫌な予感がし、急いで音のした崖の向こう方へ飛んだ。

 するとそこには、コーレが苦しそうに血を流し倒れていた。抱きかかえようとした時、よく見ると右腕の肘から下が、吹き飛んで無くなっていた。


 「コーレ!」


 「だ、大丈夫よ。ここに向かってたら急に腕からアラーム音が鳴ったと思ったら、こんな状態よ。いつの間にか奴に何か仕込まれてたのね。気付かないなんて、私もドジね。」


 取り敢えずダストンの服の布きれを、包帯変わりに止血を行った。その直後、辺りの空気が緑色の霧に変わった。そしてそれは、円を描く様にして、2人の上空の方で球体のように集まっていく。ダストンはすぐさま危険を察知し、左腕で防御態勢に入った。


 次の瞬間、その球体から無数の槍の様な鋭い霧が、2人に向けて放たれた!だが一歩態勢がダストンの方が早かった。左腕に近づく槍は、ことごとく竜巻の勢いにちりじりになり、あっちこっちへ散らばり消えていった。


 「チィッ!やっかいな腕だ!もういい!お前らを生かして共に王国を築こうと思ったが、それももぅ止めだ!この星もろ共、消えて無くなれ!」


 ミーゴは両腕を天に掲げ、力を最大限解放した。恐ろしい程の邪気を帯びた雷霧が空を覆った。

あまりに巨大な為、辺り一帯はどす黒いドームと化した。もう並大抵の人間には太刀打ちできない領域に変わり、生き残ったダストンのクルー達も恐怖に慄(おのの)いた。


 そんな中、1人悠然(ゆうぜん)とドームの中心に立ち、ミーゴを睨みつけるダストン。黒い

霧に、赤と緑の竜巻が拮抗(きっこう)している。

 コーレは、何とかこの場所に来てくれていたリーチに介抱されながら、岩山の陰に避難していた。コーレの長い髪が、その場の荒れ狂う風を物語っている。そしてダストンが果敢に叫ぶ。


 「ミーゴォ!お前の鬱陶しいクソ霧にはもぅウンザリだ!今日ここで、宇宙の掃除屋として

  お前ごと駆逐してやる。」


 天と地にいる霧同士の決戦が、火蓋を切る。

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