第5話 vs雷豪龍
「結構危なかったな」
もうちょっとで食われそうになってたな。多少怪我はしていたけど命に別状はなさそうだ。土の壁で視界も遮ったし、あとはこいつを討伐すれば終わりだな。
龍は起き上がって俺を見る。すると俺のことを警戒しているのか全身が光り始めていく。あれは……雷を溜めているのか?
「けど、遅いな」
わざわざ攻撃を待ってやる必要はない。俺は龍の足元へ移動し、手に魔力を集める。
「そらっ!」
高密度に圧縮させた魔力を龍に当てる。圧縮させた魔力を解放すると龍は上空へと投げ出された。魔法に変換しても良かったが周りに被害が出るかも知れないのでやめた。
「ちょっと痺れたな…」
あの龍自体が帯電してたのもあって直接触れたことで手が少し痺れてしまった。まぁ、そんなことはどうでも良いか。それよりあいつを仕留めることを考えた方が良いな。
「そーれっ!」
俺は龍と同等の大きさの氷の槍を創り出してそのまま投擲する。槍は龍の腹を貫通したと同時に凍結した。凍りついた龍はそのまま地面に落下する。
俺は凍りついた龍に近づいて蹴りで氷を砕く。龍の体はバラバラになった。
「これでもう大丈夫だろ。あとは、あいつらか……」
俺は土の壁を消す。息はあるが、みんな気絶している。
「うーん」
一体どうしようか。まぁ、とりあえず怪我は治すか。
『
4人は緑色の光に包まれてゆっくりと傷が塞がっていく。しばらく時間が経つと全員の怪我は無くなった。
そして再び最初の問題へ戻った。こいつらは一体どうしたら良いのだろうか? いつ目が覚めるか分からないし、このままおいていったらモンスターに襲われるかも知れない。
なら、どこかで休ませるのが良いだろう。俺は4人を安全な木陰に運んだ。
「ここなら、大丈夫だろ」
じゃあ、帰るか。俺はそのままその場を後にした。
▲▲
「……ん、あれ?」
目を覚ますと近くにアリスやステラ、リズが近くにいる。一体何があったのだろうか? 確か私たちはあのにやられて……
「ん……カーラ? っ!! 大丈夫!?」
「はい、何がなんだか分かりませんが……」
「良かった……本当に良かった」
アリスは心底ホッとしたような顔で抱きついてきた。
「アリス。苦しいです」
「あ、ごめんね。つい、嬉しくなって」
アリスが苦笑いをしながら放してくれた。よくよく見るとアリスには何も傷がない。もしかしてと思って自分とステラたちを見る。やっぱりだ、他の2人も、自分の体にも傷がなかった。
「これは……一体どういうことなんでしょうか?」
明らかにおかしい。私たちは電撃をくらってからの意識はなかった。普通ならば死んでいるはずだ。私が考えているとアリスが肩に手をおいた。
「僕もそこまで詳しくは知らないけど、2人が起きたら見たことを話すよ」
アリスはこの現状のことを少しだけ知っているらしい。本当に一体何が起きたのだろうか? そんなことを考えていると、2人がゆっくりと目を開ける。
「……あれ、ここは?」
「私たちは、確かあの龍にやれたんじゃ……」
ステラもリズも目を開けて周りを見渡している。2人も何が起きたのか分かっていないようだ。このことを知っているのはアリスだけらしい。
「みんな起きたね。じゃあ、僕が知っていることを話すよ」
そうしてアリスは自分が気絶するまでに見た光景を話してくれた。どうやら私たちを助けてくれたのは黒髪の男の人らしい。
私たちは男性に助けられた。
「男の……人に」
リズが呟きながら自分の体に触れる。私も同じように自分の体を触れてしまった。でも、何かされた形跡はない。安心してほっと息をつくとアリスが口を開く。
「どうやら、僕たちを助けてくれた人は傷を治してくれただけじゃなくて、一切手も出さなかったみたいだね」
そう、私だけではなく、みんなにも手を出した形跡はない。今まで会ってきた男性では到底考えられないことだ。私はその男性がどんな人物なのか気になってしまう。
「その人、会ってみたい」
リズが私が思ってたことを口にする。いや、それよりリズが男性にあってみたいなんて言ったことにも驚いた。いや、でも問題もある。それはーー
「でも、手がかりはほとんどないよ? あるのは髪の色だけって、いくらなんでも無理じゃない?」
ステラの言う通りだ。手がかりが髪の色だけとなると見つけるのは非常に困難だ。あの街にも黒髪の男性はたくさんいる。一体どうすれば良いのだろうか? 私たちは頭を悩ませる。
「……とりあえず、街に戻ろうか。それから考えよう」
「そうですね」
「ん、分かった」
そうして私たちは街に戻ろうとする。その道の最中、私たちとあの龍が戦ってたあの山脈の近くへと出た。私たちは足を止める。
「これって……」
そこには凍ってバラバラに粉砕された雷豪龍の姿があった。この光景だけでも分かったことが幾つかある。
1つはその男性は何らかの理由で自分の実力を隠していると言うこと。あの街にいる人間でここまでの芸当が出来る者なんていないからだ。
そしてもう一つはーー
「この人は魔法を使うってことだよね?」
ステラは私に笑顔を向ける。私は自分が考えていることを当てられて驚いた。ステラはまるで子供がイタズラを成功させたような笑みを私に向けている。
「そうですね。魔法が使える黒髪の男。これだけでだいぶ楽になりましたね」
「もう、他に手がかりになりそうな物はないし、戻ろうか」
どうやらアリスは他に手がかりがないか探してくれていたようだ。けれど見つからなかったらしい。なら、しょうがない。
私たちは街に戻った。
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