第3話 クエスト開始①
「…いたよ」
ステラが指を指した方向に大量の魔物を捕食してた緑龍がいた。
「じゃあ、いつも通りで行くよ」
僕はそう言ってみんなに目で合図を送った。
リズに僕とステラに肉体強化の魔法をかけてもらい
カーラが魔力を溜める。
僕とステラは2人に意識が向かない様に前に出る。
「あいつも気づいたね。行くよアリス」
「うん、任せてよ」
緑龍を近くで見ると、やはり大きい。パッと見ただけでも10メートルはありそうだ。
僕たちは息を大きく吸って、武器を構える。
緑龍はこちらに向かって突撃して来た。
口を大きくあけていたから、僕たちも捕食する気なのだろう。
「ふっ!」
「よっと!」
僕は横に回避する。ステラはそのまま緑龍の下に潜り前脚と後脚に攻撃していく。
すかさず、緑龍の顔に剣を叩き込んだ。
「はぁっ!!」
緑龍は少し体勢を崩したが、すぐに持ち直した。
良く見ると僕たちが攻撃を加えた顔と脚は鱗に傷がついた程度。
「やっぱり硬いね」
「うん、脚も硬かったから…たぶん鱗に覆われている所は同じくらい硬いと思うよ。」
僕たちの今回の役割はダメージを与えること。 カーラが緑龍を倒せるだけの魔力の溜めの時間を
稼ぐことの2つだ。
「じゃあ僕たちも2人に意識が向かない様に攻撃していこうか」
「オッケー、任せてよ」
〔グルルルル〕
緑龍は餌を見る目から敵を見る目に変わって低く唸る。
僕とステラは回避と攻撃を繰り返した。前脚で踏み潰そうとするのをステップで避けて、尻尾で薙ぎ払いをいなす。
ブレスでの攻撃は、一方が引きつけてもう一方が顔に攻撃をして逸らす。
緑龍の身体は至る所の鱗が砕け、出血もしている。
「くっ!?」
すると緑龍が飛び、ブレスを吐こうとしている。
恐らく辺り一面を焼くつもりなのだろう。
・・・けどもう遅い。
「溜まりました!行きます!!」
『
カーラが呪文を唱えると緑龍の周りに巨大な竜巻が発生して緑龍を覆った。
緑龍は断末魔を上げて、切り刻まれながら地上に落ちる。
暴風刃は魔力量によって大きさ、威力が変わるがあれほどの大きさならば、普通の魔物ならば何も残らない。
その証拠に周りの地面はどんどん抉られて緑龍の体がどんどん下に沈んでいく。
==========
しばらくすると竜巻が消えて、抉られて掘り下げられた地面と血だらけの緑龍が中に倒れていた。
しかし満身創痍ではあるが確かに生きている。
「驚きました。あの規模の
カーラは冷静な口調でじっと緑龍を見ていた。
「「っ!!」」
「ッ!?」
カーラとリズは驚いた様な声を上げた。ステラも驚いた様な表情だった。実際に僕も信じられなかった。あれだけの魔法を浴びて緑龍は立ち上がった。
しかも血だらけでありながらその眼はまだ殺意を滲ませている。
これが龍種、油断していたらこっちがやられてしまう。僕たちは最大限警戒しながら緑龍と睨み合う。決着はもう少し先の様だ。
緑龍の身体は傷だらけで体力もほとんど残っていないだろう。
立っているのもやっとの状態だった。
「ふー……」
僕は目の前の敵に集中する為に深く息を吸う。誰も油断も慢心もしていない。
追い詰められた生き物は何をするか分からないことを知っているから。
“シュウウウウウ”
緑龍の口の中が赤く光り出す。龍は目の前の敵を一気に焼き払う為ブレスを吐こうとしていた。
僕たちはブレスが当たらない様に避けようとしたが攻撃が来ることは無かった・・・・
「「は?」」
「え?」
「っ……!」
僕とステラ、カーラがマヌケな声を出す。リズは、もはや声すら出せずにいた。
緑龍は死んだ。
いや、正確には殺された。
突然、現れた龍によって……
新たな龍の脚元に緑龍の死体が黒焦げになって転がっている。龍は通常ならば緑龍・赤龍・青龍のいずれかに分類される。
しかし永い時を生きてきた龍や、強くなりすぎたモンスターなどに”個体名”が名付けられ、討伐の難易度は跳ね上がる。
僕はそいつを見る。金色の鱗、灰色の翼、そして最も特徴的なのが上に伸びた一本の角だ。
僕はこの龍を知っている。ギルドの掲示板にも載っていた。
一定の場所に留まらず、世界中を渡り歩く龍として、雷を操る龍として知られる龍だ。推定ランクは10、正真正銘の怪物。
「雷豪龍……」
僕はどうすれば全員で生き残れるか必死に考える。この龍の身体能力は緑龍と変わらないと聞いている。しかしこの龍の最大の特徴は体内に蓄電されている電気だ。
もし触れてしまえば感電してしまい、あっという間に死んでしまうらしい。魔導士ならばまだ戦えるらしいがこの龍は厄介なことに雷を飛ばしてくるらしい。
果たして、私たちは全員で……いや、1人でも生き残ることが出来るのだろうか。思わずため息が出てしまう。
「はぁ…本当に最悪だ」
その龍は静かにじっとアリス達を見ていた。まるで品定めでもするかの様に・・・・
アリス達は認められた。・・・・認められてしまったのだ。
新たな餌として。
「「「「ッ!?」」」」
突然、龍の角が光り出して、雷を帯びる。僕たちは咄嗟に回避行動を取る。
「な、なんて威力……」
カーラが自分たちがいた場所を見て汗を滲ませながら呟く。先程まで自分たちがいた場所に雷が落ちて黒く変色していたからだ。
「これは……一撃でも貰ったら死んじゃうね」
「うん、逃げた方が良い。でも、逃げたら街が危ない」
僕も一緒だ。絶対に逃げた方が良いけど、こいつが街に来てしまったら多くの命が失われてしまう。だから僕たちは全力でこの龍を討伐する。
僕たちは気を持ち直して武器を向ける。もう、後戻りはできない。
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