第5話
列車が、小倉に到着すると、降りた二人は、秀一と奈美の座っている位置までホームを歩いてきて、見送ってくれた。奈美が
「いいひとだったわね。水割りもくれたし」
「うん」
列車が小倉を発車すると、今はビルが建ってしまい、もう見えないが線路のすぐ横に小倉城が。
(そうや、親父とお袋を俺の新幹線に乗せようと考えて、往復グリーン車で小倉までの、旅行のプレゼントをしたことあったっけ。もう二人は足が悪いからと、叔母にも一緒に行ってもらって、叔母にレンタカーを運転してもらったわ。三人の帰りの列車、俺の運転するのぞみで小倉へ入っていくと、駅長事務室の横で駅員がいるのに、叔母が激しく手を振って、返さな悪いと思って俺も手を振って、恥ずかしかったわ)
「奈美、ありがとう」
「何?」
「いやぁ、親父とお袋に、小倉まで往復グリーン車で、旅行をプレゼントしてくれたことを思い出して」
「あの時、叔母さんが、駅員さんが横にいるのに激しく手を振ってるので、あなたも仕方なしに大きく手を振って返したのね」
「今考えたら、ええ思い出や」
「往復新幹線グリーン車で、しかもそれを運転してるのが、自分の子供だなんて、凄いことじゃない」
「うん」
(いろんなこと、あったんや)
東京から、1036㎞地点(小倉~博多間)東海、山陽新幹線唯一の信号場である鞍手信号場が。列車に乗っていて、線路の近くにそれらしき建物は見えない。実はこの横に、鞍手保守基地が設けられ、そこに出入りする車両のために、本線に上下線の渡り線とポイントが設けられたことから、この地点を信号場としたもの。
そしてしばらくすると、後輩の秋川車掌による博多の着前放送が流れてきて。
「さあ、いい旅にしよう」
と言って、秀一は奈美を促してデッキへ。
車掌室にいる秋川に
「ありがとう」
と礼を言って二人がデッキにいると、あとから来た男性客のカバンが秀一の太ももに当たったので、秀一がカッとなってその男性を睨み付けると、奈美が
「もう、忍の一字でしょ」
と。
【協力】
JR西日本
【参考文献】
デジタルガイド車窓の旅
東海道・山陽新幹線
河出文庫
おもいで 赤根好古 @akane_yoshihuru
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