第5話 女の子を賭けて決闘!?
冒険者の街サイショタウンへ到着した俺たちは、人込みに流されて思うように動けずにいた。
まるで祭り中なのかと思うくらい人であふれかえっており、昼間だと言うのに酒盛りをして騒いでいる者までいる。
「にぎわってんなー。アルマちゃん、何かお祭りでもやってるのかい?」
「いいえ、ここはいつもこんな感じですよ? 駆け出し冒険者にやさしい人たちが多くて、自然と人が集まってくるんです」
「なるほど、それで冒険者の街か。なら俺もSSS級魔導師として、新米冒険者に手ほどきを……」
女の子がいないが注意深く観察していると、アルマが俺の裾を引っ張ってくる。
「一真さん、この後どうするかもう決まってるんですか?」
……このあとか。
俺は現状無一文で、宿賃どころか食べ物を買うこともできない。
まずいな、どこかで金策をしないと異世界生活初日から野宿になっちまう。
「んー、まずはお金を稼ぎたいなぁ。あと情報も欲しいし……」
「それなら、冒険者ギルドがいいですよ! みなさんそこで依頼を受けたり、情報交換をしたり、真の仲間を募集したりします。わたしも依頼の報告をしたいですし、一緒に行きませんか?」
「わかった。さっそく行ってみよう」
アルマに案内してもらいながら人込みをぬうようにしばらく歩くと、ある建物へたどり着いた。
「あれが冒険者ギルドです」
「立派な建物だなぁ」
冒険者ギルドのドアを開けると『チリンチリン』という鈴のような音と一緒に、元気のいい声が聞こえてくる。
「ようこそ、冒険者ギルドへ!」
建物の内装は俺が思っていたよりも綺麗、というより清潔感があった。
酒瓶が転がってテーブルがひっくり返っており、荒くれ者たちが言い争いをしているようなイメージを持っていたのだが……。
実際は老舗旅館のような年季の入った木造建築で、冒険者たちがいい意味で盛り上がっている。
「あのぉ、一真さん。わたし依頼の報告とお手洗いにいってきますね」
「わかった。じゃあ俺は、この入口から一番近い席でまってるから」
アルマは小さくうなずいて、トコトコと建物の奥に消えて行った。
「まずは、宿賃だけでも確保しないとなぁ」
いっそのこと魔法でお金を作れないだろうか?
そんな邪悪なことを考えていると、突然背後から声をかけられた。
「おい、ちょっと聞きたいことがあるんだが」
振り返るとそこには、がっちりとした鎧に身を包んだ見知らぬ男性が立っている。
髪は黒く短めで清潔感をかもしだし、整った顔立ちをしたいかにもイケメンだ。
「なんですか?」
よく見ると男性の背後には、若葉色の前髪で目の隠れているおだやかそうな女性と、紅葉色の髪でつり目の気が強そうな女性が立っている。イケメン特権のハーレムパーティーかよ!
男性は鋭い目つきで俺のことを睨みつけており、まるでおさわりマンの職務質問の様だ。
「お前見ない顔だな? それに先ほど連れていた少女。あの子はお前の仲間かい?」
少女? アルマのことか?
「そうだけど、それがなにか?」
「最近このあたりも物騒で人さらいが増えてるんだ。そこで微力ながら冒険者として見回りをしているんだが……。おい、お前の冒険者カードを見せてくれよ」
やっぱりおさわりマンの職務質問じゃねえか!
それになんだこの上から目線は? これ素直に言っても信じてもらえないだろうな。
「俺、冒険者カード持ってないんですけど」
「持ってない……だと? それは失くしたってことか? それとも取り消されたか?」
男性の眉毛がピクリと動いた。絶対怪しまれてるよな俺。
「もともともってないんですよ。持ち物はこの魔導書だけで」
俺が所持アイテム一覧ウインドウから魔導書を取り出すと、男性の目が釘付けになる。
「お、お前! これをどこで!?」
「えっとじつは、かくかくしかじかでして……」
男に今までの
「ほぉ? 別世界で死んだあと、女神ラピス様に転生させてもらい、ここまできただと? ……女神サファイア様ならいざしらず、よりにもよって女神ラピス様の名を出すとはなんと腹立たしいっ!」
そういえば、サファイアって女神もいた気がするな。どちらかというとそっちがメインで話を進めてた気が……。
「あの、言われて見るとそのサファ……」
「黙れっ! そもそも冒険者カードも持たないやつが、SSS級魔導師のみに配布される。『ウル技114514技収録! 超絶ジーニアス魔導書 ~’96年春版~』を持っているわけがない! どうせどこかで盗んだのだろう、この盗賊風情がっ! お前のようなゴミは憲兵に突き出してやる」
俺の発言をかき消すような男性の荒い言葉遣いには、いくら水たまりのように深く広い心を持っている俺でも、堪忍袋の緒が切れました!
「おいィ? 黙ってきいてりゃ、人様を盗賊風情と罵ったあげくゴミだと? たいがいにしないと、マジで親のダイヤの結婚指輪のネックレスを指にはめてぶん殴るぞ!」
「やめておけ。魔王直属の七魔である、俊足のカッツェルを倒したこのジム様に逆らえば、一瞬で地面にキスすることになるぞ?」
「ほぉ? 自信満々だな、ならやってみろよ!」
自らをジム様と言い放った男にメンチ的なビームを発射すると、ジムは鼻で笑い。
「いいだろう。お前に決闘を申し込む!」
と、言って俺の顔面を白い手袋ではたく。
「貴様、名はなんという?」
「一真だ」
「そうか。では一真、決闘の前にひとつ提案がある。賭けをしないか? その方が観客ももりあがるだろう」
「賭けだと? 悪いが俺は無一文だ。賭けられるものなんてこいつぐらいしかないぞ? こいつでいいのか?」
そういって俺が魔導書を右手で持ち上げると、ジムはまたもや鼻で笑い。
「いや、僕の要求は貴様を牢にぶち込むことだ。もちろん先ほどの少女はこちらで保護させてもらう。牢で自分の行いを悔い改めろ」
まるでもう勝ったかのように俺を見下して命令する。
「ふたつも要求して欲張りなやつだな。じゃあ俺が勝ったら、後ろの美少女ふたりは俺のハーレムに加わってもらおう」
「ハーレムだと? やはりゲスなことを考える。良いだろう、その条件を飲む」
後ろの美少女2人はなかなかいいスタイルをしており、特におだやかそうな方はとても良いメロンをおもちである。ぜひ搾り取って果汁をいただきたい。
気が強そうな方はたぶんアナルが弱い、一度プライドを折れば従順になるだろう。
「なら決まりだな」
俺は床に落ちているジムの手袋を拾い上げ、決闘を受諾する。
「ジム様、わたくし達も加勢いたします。この男、只者ではありません」
若葉色の髪の女性がジムに助力を提案する。
小柄で若葉色の髪を腰あたりまで伸ばし、横髪は頬のあたりまで、長く揃った前髪が完全に両目を隠している。
右手に持った木の杖と修道服から僧侶系だろうか?
紫色のチョーカーを着けており露出は少ないものの、胸元は服の上からでもはっきりわかるほど膨らんでいる。全体的に落ち着きのある大人の女性といった感じだ。
「ジム様、あたしもベリルに賛成です」
紅葉色の髪の女性が若葉色の髪の女性をベリルと呼び意見に賛同する。
背が高く紅葉色の髪をポニーテールにして腰のあたりまで伸ばし、横髪は顎下まで、前髪は先端が鼻のあたりまであるM字型。
髪と同じ赤色をしたつり目であり、とても気の強そうな印象を受ける。
体系の方は背が高くすらっとしており、腰に帯びた短剣と胸当てにホットパンツだけという軽装から、シーフ系だろうか?
ベリルと同じ紫色のチョーカーを着けているも服装は真逆でお腹周り等露出が多く、引き締まったウエストと健康的なふとももは自然と視線を吸い寄せられてしまう。
「なんだなんだ? この世界では決闘は3対1でやるのか?」
「安心しろ、1対1だ。ベリルもネリアも大人しく見ているがいい」
「はい」
「わかりました」
どうやら話がまとまったようで、ジムは帯剣を引き抜き上段で構える。
若葉色の髪がベリルで紅葉色の髪がネリアっていうのか。……ん? なんだかこのふたり様子がおかしいぞ? 顔色もよくないし、ネリアって娘は死んだ魚みたいな目をしてるな。
「勝敗の基準は降参するか戦闘不能だ。さあ、お前も構えろ」
「おいおい、ここでやるのか?」
騒ぎを聞きつけたのか周りを見渡すといつの間にか観客が集まっており、飲食しながら成り行きを見守っている。
「問題ない。この町の人々は戦いが好物だからな。一方的な試合になるとはいえ、僕の剣捌きが見られるんだ。こんなに嬉しいことはないだろう?」
「おいっ! はやくこっちこいよ。魔王討伐に一番近い男、ジムが決闘をやるみたいだぞ!?」
「あの冒険者も、ジムに目を着けられちまうとは運がねえなぁ」
「まったくだ。ジムー! ケガさせないように手加減してやれよー」
「大丈夫だよ。殺さない程度にいたぶるだけだ。では、いくぞ!」
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