第12話

「だから、そうじゃない!陽は、大学で研究して…」


「もう決めたんだ」


「陽!」


「ごめん電話…あ、兄貴。あー、そっすね。え、まじすか。いや、免許とかねーっすわ。え、運転手?そりゃできればやりたいっすけど」


嘘だ。ヤンキーやってたときの陽とは違う。

完全に、仕事の話をしてる。こんなの、陽じゃない。


陽は髪が栗色のことでいじめられて、学校も行けなくなってたはずなのに。今はなにしてる?よくわからない。


「しょーや。仕事終わりに引っ越しするから。ゴミは出したし、あとこのテーブルと鍵を後で大家さんに渡しておいて」


「陽、なんで?俺から離れたいの?」


「そんなことじゃないけど。しょーやは勉強頑張れよ」


「俺は!陽がいないとつまんないよ。行くなよ」


「しょーやには、友達いるでしょ?」


「いるわけない…」


「そんなことないって」


「陽がいないと、俺はなんのためにここにいる?」


「大学のため?じゃあ、仕事だから。夜中戻るから、鍵はポストに入れとく」


陽はあっさり出て行った。

俺は、陽がいるから東京の大学にしたのに。陽はなんで勝手に決めるんだよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る