第11話

「陽、思いつきでやるのはよくない」


「思いつきじゃないよ」


「引っ越す意味は?」


「大学辞めるとき金使ったし、節約したくて」


「それなら俺も引っ越すよ」


「しょーやごめん。俺の職場に近いところになるかもしれないし…」


「…なんで刺青なんか入れたんだよ」


これ、ずっと言い出せなかったせりふ。ついに言った。


「これは親父が頼んでたから。それだけ」


はい?なんで陽のお父さん?


「しょーや、元気でね」


「お、お父さんがなんでそんなの頼むんだよ!陽の説明じゃわからない」


「俺、神田組の幹部候補なんだ」


「なにそれ」


「森山組の傘下なんだ」


は…なんだと!?


陽のお父さんはヤンキーで、若くてチャラチャラしてて…それだけだろ?そんなヤバいとこの人じゃない。


「今、組のやつが抜けて、人足りないんだよ。だから、俺役に立ちたい」


「そんなの陽には似合わない!それに、危ない人たちだよ。陽が関わったらいけない」


「それ、本気で言ってる?」


「本気…?」


「しょーやがそう思ってるなら、もう関わらない」


「そ、そういう意味では…」


「しょーや、今までありがとう」


陽はなにを言い出すんだ。

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