第3話

異世界での生活に順応しつつあったレイは、ある日、偶然にも自分が持っているスマホが特殊な力を持っていることに気づいた。通常の機能は失われていたはずのスマホが、なぜか異世界の現実そのものを操作できるツールへと変化していたのだ。


最初にそれに気づいたのは、フィリスとの会話中だった。彼女と話している最中、レイはふとスマホを触ってみた。すると、画面に自分が開発したゲームの「編集モード」が表示された。驚きつつも、その編集モードをいじってみると、周囲の風景がリアルタイムで変わり始めた。


「まさか……これって、俺のゲームの編集ツール?」


レイは驚きを隠せなかった。彼の手元のスマホからは、現実世界に似たUIが表示されており、そこには彼が以前使っていたデータベースやキャラクターの設定項目がそのまま残っていた。試しに、城下町の一角に新しい建物を追加してみると、目の前に立っていたフィリスが驚きの声を上げる。


「この場所……いつの間にか新しい店ができてる。前までここには何もなかったはずなのに……」


レイはさらに別の試みをする。スマホの画面上でモンスターのデザインを少し変え、その出現場所を城下町から離れた場所に設定してみた。すると、フィリスの顔色が変わり、少し離れた地点で異変が起きたことを感知する。


「危ない……何かが近づいているわ!」


そう言いながらフィリスが警戒する中、レイは自分の力の可能性を確信した。この世界は、確かに彼が創造したものであり、今や自分の手で再び作り替えることができるのだ。だが、その力を無闇に使うわけにはいかない。あくまでもこの世界には、独自のルールと秩序が存在している。レイは、その力をどう使うべきか慎重に考えた。スマホで世界を操作できるのは驚異的だが、軽率な行動がこの異世界に混乱をもたらす可能性がある。彼がこの世界で感じ始めた「リアル」とは、単なるデータではなく、住む人々が生きている現実だった。


「この世界には、俺が勝手に変えていいものじゃない……」


そう自分に言い聞かせながらも、レイは同時にこの力を使わずにはいられない衝動に駆られていた。


レイはフィリスに笑顔を見せながら、心の中で葛藤していた。この世界を操る力を手にした彼だが、それを使うべきか否か、その判断は非常に難しい。力を使えば、確かにこの世界で自分の思い描く理想を実現できる。しかし、どんな結果を招くかはわからない。


レイは慎重にスマホをポケットにしまい、フィリスに気づかれないように振る舞った。目の前で起こった異変を見て驚く彼女に、自分が何かをしたと悟らせるわけにはいかなかった。この世界での自分の立場を守るためにも、スマホの力は秘密にしなければならない。


そう自問するレイの耳に、突然フィリスの悲鳴が響いた。


「レイ!何かおかしいわ!」


レイが顔を上げると、彼が設定したモンスターが予想以上に早く城下町に近づいていた。スマホの編集ツールで調整したはずのモンスターが、制御不能になっている。フィリスが慌てて剣を構えたが、その強大な力の前に立ちすくんでいた。


「どうしてこんなことに……」


レイは、スマホを握りしめる。自分が生み出した世界が、目の前で壊れかけている。彼がどんな選択をするかで、この世界の運命が決まる。


だが、その時、スマホの画面が突然真っ黒になり、エラーメッセージが表示された。


「システムエラー……だと?」


レイは焦りながら画面をタップしたが、何も反応しない。目の前でモンスターが吠え、フィリスの瞳には恐怖の色が浮かんでいた。今、動かなければ――。

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異世界ゲームクリエイター、異世界で神になる やまもどき @yamamodoki

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