第2話

異世界に目覚めた玲――もといレイ・カンザキは、目の前に広がる異世界の風景を目にしてしばし呆然と立ち尽くしていた。これは、自分が作り上げたゲームの世界だ。だが、そのリアルさやスケールの大きさに圧倒され、まるで夢でも見ているかのような錯覚に囚われていた。


手に持っていたスマホの画面には、確かに彼が開発したゲームのアイコンが表示されている。だが、操作してもアプリが開く気配はない。まるでスマホそのものが、ただの装飾品になってしまったかのようだ。


「一体、ここは……」


周囲を見回すと、遠くに巨大な城が見える。そこには、彼がデザインした王国のシンボル、黄金のドラゴンの彫刻がはめ込まれていた。それを見て、ようやく確信する。


「ここは、本当に……俺のゲームの世界だ。」


だが、ゲームの世界に迷い込んだという事実に気づいたレイの心には、混乱とともにある種の期待感が生まれていた。現実の世界では何度も挫折を経験し、自分の理想を理解してもらえなかった。だが、この世界なら――自分が創り上げたこの世界なら、何かを成し遂げられるかもしれない。


レイは、手探りでこの異世界を探索し始める。まずは、彼が作った世界のルールがどの程度反映されているのかを確認する必要がある。



数時間後、レイは王都の城下町にたどり着いた。活気あふれる街並みには、彼がデザインしたはずのキャラクターたちが生活している。人々は笑顔で会話を交わし、店先では商人たちが賑やかに商品を売り込んでいる。


しかし、何かが違う。


彼がプログラムしたゲームのキャラクターたちは、単なるAIの集合体だったはずだ。だが、今目の前にいる人々は、まるで本物の生身の人間のように、感情豊かで自然に動いている。彼の作ったキャラクターたちは、ここでは自分たちがゲームの中の存在だという自覚などなく、まるで現実の世界そのもののように生活しているのだ。


「……これは、ただのゲームじゃないのか?」


レイは混乱を抱えながらも、次第にこの世界に順応していく。異世界の住民に気づかれないように、彼らと同じように振る舞いながら、この世界の秘密を探ろうとする。


そんな中、レイの前に一人の少女が現れる。彼女は銀髪で、瞳には冷たい輝きが宿っていた。彼女は、レイがゲーム内で特別にデザインしたキャラクターの一人――魔導士「フィリス」だった。


「あなた、どこかで会ったことがある気がするわ。」


フィリスは不思議そうにレイを見つめる。ゲームの中では、彼女は強大な力を持つ魔導士であり、数々の重要なイベントに関わるキーパーソンだった。だが、彼女がこうして実体を持ち、しかもレイを認識しているという事実に、レイは言葉を失う。


「俺が……君を創ったんだ。」


レイは心の中でそう呟く。しかし、言葉にはしなかった。フィリスや他のキャラクターたちに、自分がこの世界の創造主であることを知られるわけにはいかない。今の彼には、この世界がどうやって生まれたのか、なぜ彼がここに来たのか、その答えが全く分からなかったからだ。


フィリスが微笑む。まるで彼が何か特別な存在であることを感じ取ったかのように。


「あなた、ただの旅人じゃないでしょう? 私には分かるわ。何か隠してる。でも、いいわ。いずれその答えを聞かせてね。」


レイは心の中で焦りながらも、冷静を装った

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