異世界にて、裏切り者を特定すべし

第5話

　カインが先ほどの場所に戻ると、そこはすでにもぬけの殻であった。

　しかし、カインは冷静であった。

　例の冒険者の魔力の後をたどり、追う。所詮（しょせん）は半径９０メートルほどの空間だ、カインはあっさりと追いついた。

　彼は叫んだ。「見つけたぞ…お前がプレイヤーキラーだ！」

「デジャヴ...って、え！わわわ、わたしですか！」

　プレイヤーキラーは驚きの表情を浮かべた...そして、マッドハウスと外を隔てる幕が消えた。

　他のプレイヤーたちにその所持品が分配される。制限時間より余った時間分のボーナスも手に入れた。

「あーあ。ばれたか。」その姿は、反省というよりは、次回への対策を練っているようだった。

「お前の装備品はない、おとなしく降伏しろ。」あとはこのPKをギルドに突き出す（ブラックリストに載せる）だけ...のはずだった。

「誰が装備がないだって？」

　そういうとPKは地中に手を突き刺し、短剣を取り出すと。ガードとグリップを持ち、引き伸ばした。短剣は

　瞬く間に槍へと変わった。

「あんたを殺して、もう一回マッドハウスをおこしてやるよ！」

「な！」

　PKは装備品を失っていなかった。

「冥土の土産に教えてあげるわ。武器は手から一メートル離れていれば装備判定にならないんだぜ？それを応用して、武器が没収されないようにしたわけ...あの死体の切り傷は、この槍でつけたのよ。短剣にしておけばいつもはバレないんだけどね。」

　実に単純なトリックだが、考え込まれている。

「お喋りはここまで。死ね。」

　PKが距離を詰めてくる。カインは接近線を得意としない。絶望的な状況の中、カインの横を大きな影が通り過ぎた。

「待たせたな。カイン。」槍の突きをいとも簡単にはじいたのは、駆け付けたレオであった。

「ごめん。遅れちゃった。」アリスも駆けつけてきた。

「ありがとう二人共！さあ、」

「「「共に進もう」」」

　双方はすぐに攻撃態勢に入った。レオは素早く反応し、アリスとカインもそれに続いた。激しい戦闘が繰り広げられる中、三人は協力してプレイヤーキラーを追い詰めていった。

「これで終わりだ！」とレオが叫び、最後の一撃を加えた。

　プレイヤーキラーが倒れ、戦いは終わる。

「私たちは、あなたたちの命までは取らないというのにね...」そう最後に残して、PKは動かなくなった。

「その過程で、命を奪っているくせに、何を言う。」カインはそう吐き捨てて、その場を後にした。

　彼らは再びダンジョンの探索を続ける。アリスの求める、伝説の宝を手に入れる為に。

　しかし、マッドハウスの恐怖はまだ終わらない。次なる閉鎖現象（マッドハウス）が、彼らを待ち受けているのだ…。