学生時代の苦い青春。
わたしは、飴をなめることが出来ない。あるトラウマが原因なのだが、今からお伝えしたいと思う。
あれは中学1年の秋。
中学校の同じバドミントン部の友達3人と街で遊んでいた日。
映画を観て、外に出るともう夜の8時頃だった。ネオンがキラキラ光っていた。
近所のデカい公園で毎年クリスマスに開催されているイルミネーション祭りを思い出した。冬が近づくと自宅のポストには祭りの目玉の巨大なサンタクロースのイルミネーションが写ったされたチラシが毎年入っているし、気が向いたら見にいっていたが…ぶっちゃけネオンの方がうんと綺麗だと感じた。タダなのに美しすぎる。
そしてあの光ひとつひとつの中で人が働いたりくつろいだりご飯食べたり歌ったりボウリングしたりしてんだな。この街のど真ん中で。
ネオンを眺め黄昏ながら街の大きい交差点を渡る。
友達A子がゲームセンターで獲ってくれたチュッパチャプス(茶と白の2色が練り込まれたむせ返るくらい甘ったるいやつ、なんの味か忘れた)を交差点を渡る途中で咥えて口の中でコロコロ転がす。
友達B子がわたしを振り返って「びっくりした〜タバコ吸ってるかと思った!」と大袈裟に目を見開いてわざとらしくニヒルにニヤつく。
友達C子が「この子に限ってそれはない!」と肩をすくめて呆れていた。
そんな青春に水を差すように、前からバスケ部の上級生女子9人がバカ騒ぎしながら歩いてきた。前を歩く友達ABCは息を潜めて気配を消したが、街のネオンに気を取られてわたしは出遅れた。チュッパチャプスが口でカランコロンと転がった音がやけに耳障りに聴こえた。
気が付くとバスケ部の上級生女子のギラつく目ん玉がかたまりになって斜め横にいた。お前調子乗ってんなあ?と圧で言われた。わたしはすかさずチュッパチャプスの棒を震える指でひっつかみ口から出した。
顔覚えられて学校で絡まれたらどうしよう。
すれ違いきって、交差点を渡り切ると友達ABCが一斉に口を開いた。「緊張したー」「めっちゃ睨まれたな」「こわかった〜、今の学校の先輩やろ?まあ接点ないけどー」
なんだか寒気がする。
友達Aが振り返って顔をギョッとさせた。
「さくら、鼻血出てる!」
友達Cが「イスあるとこいこ!」と言った。
近くの商業ビルの中に入り、自販機の隣に設置されたイスに座る。友達Cの持っていたポケットティッシュを借りて止血する。
友達Bは「大丈夫かー」とわたしの背中をさすっていた。
友達Aが「チュッパチャプスってなかなかなくならんよな〜」とおもむろに言った。
そらそう、まったく舐めてないもん。わたしは無性に悔しくなってチュッパチャプスを無理矢理噛み砕こうとした。
友達Bが「こわっ歯折れんで!」と慌てている。友達Aは「やめとけやめとけ」と慌てていた。友達Cは「知らんで〜」と慌てた。
ガキンッ!と飴なのか歯なのかその両方か、なにかしらが盛大に砕けた。
そしてわたしは飴をなめれなくなった。飴を口に入れた瞬間噛み砕いてしまう。舐めようと頑張っても「ウウッ」と呻きながら顎が強制的に噛み砕きにかかるのだ。
いつかこの癖(トラウマ)を克服したいと思っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます