第5話 お兄ちゃん、逆襲。
「葛、僕をおもちゃにしてそんなに楽しいのか! お兄ちゃんにだって法律は適用するんだぞ! 人権擁護! セクハラ禁止ぃ!」
「あふ。切羽詰まった声、ゾクゾクしちゃう」
「何で興奮してるの?!」
くっ、逆効果だ。これでは葛が余計に盛り上がってしまう! 何か良い手は……一発逆転、オセロの角取り飛車角王手……あ!
これだ!
「葛、待て。待って下さい。まずは一緒に深呼吸しよう。それで落ち着いたら僕の話を聞い」
「嫌よっ!」
「食い気味に即答?!」
「ここでやめられる訳がないじゃない。ほら、大人しく先っちょだけでいいから出しなさい。先っちょだけで許してあげるから」
「テンプレっぽいけど何か違う!」
それにそのニマニマ顔溢れる声、絶対に先っちょだけで済ます気ないだろ! それにだ!
「両手足拘束されてどうやって出すんだよ!」
「ばびーん、ってズボン突き破ればいいでしょうに。優ちゃんなら軽いでしょ? そのゴリゴリ棒で」
「ゴリゴリって言うな! 第一、いつ見たんだよ! 一緒に風呂入ってたのって遠い昔じゃないか、勝手なイメージで言うな!」
ゴリゴリ男ってイメージが定着したら、初彼女からどんどん遠くなっていくだろうが! ファンタジーの賢者には憧れるけど、聖地で語られる賢者は嫌だ。あと10年しかないんだぞ!
「あふ」
「何でそこで悶えるの?!」
「いやあね、純真可憐な美少女に向かって何て破廉恥な。昔ならいざ知らず、ゴリゴリではち切れんばかりに膨れ上がって血管がみっちりと浮き出た優ちゃんのご立派過ぎる優ちゃんなんて見た事もしゅこしゅこした事もぐっぽぐっぽんんんふぐうごっくんなんてした事ある訳ないじゃないごっほげっほおっふんぴょ」
「やたらと怪しいんだが?!」
いつ見られた? 風呂場に突撃された時はポロリしないようにいつも隠してるし、流石に二人共トイレには入ってこないし。
考えられるとしたら寝てる時だけど……寝巻脱がされて気付かないなんてある訳がない。
「そうやってまた僕をからかって! 僕だって男なんだぞ! そんなイヤらしい事ばっかり言って僕がその気になって狼になったらどうするんだよ!」
「あら、ステキね」
「言語が通じない?!」
「ま、優ちゃんにそんな度胸はないから大丈夫でしょう?」
「言ったなあ!」
頭に来たけど、それ以上にこれはマズい傾向だ。
もし。
もし僕が。
今は必死に我慢ができてるけれど……こうしてからかわれてるうちに自分の欲を抑えきれなくなって葛やほのかを泣かしてしまったらどうする? そうならない保証なんてどこにもない。
だったら、心を鬼にして……今、その危険性をわからせるしかない。
「葛、攻守交代だ!」
「あら」
「僕の本気を見せてやろう。目隠しと手足の拘束を外してくれ」
●
うわ葛、頬を染めて嬉しそうに僕を見上げてら。眼なんてキッラキラだし。
だが、さて。
どうしたものか。
拘束するとか
理想はこれからの僕らが気まずくならない程度に、だけど少しだけ、『あ、悪ふざけしたんだな』と思わせるくらいな感じがいい。
うう、緊張してきた。僕のキャラじゃないんだけどな、こういうの。でも葛のお兄ちゃんとしての僕の役目だと割り切ろう。
……よし。
「葛」
少し雑に葛の腕を掴んで引き寄せる。
「あっ」
はは、葛モジモジしてる。昔の葛、こんな所があったな。でも、まだまだこんなものじゃない。ここからだ。
ふうっ。
耳にそっと息を吹きかけた。
「あうんっ!」
いい反応だ、可愛い。彼女とこういう雰囲気になったらドキドキものだろう。だけど今の僕は興奮するどころじゃない。緊張のあまりに心臓がフル稼働しているのだから。
もう片方の腕も一緒に掴んでゆっくりと葛を押し倒す。
「…………っ!」
葛が切なげに見上げてくる。よし、完全に僕のペースだ……次、どうする? どう持っていけばいい? あああ、訳がわかんなくなってきた!
僕の中に根付く知識よ! 動画にゲーム、ラノベにアニメよ、僕に力を!
「ええんか? これがええのんか?」
「…………優ちゃん?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます