第3話 「本気」と書いて
「よいしょ」
「わっ?!」
「はい、マウント。いい加減にしないと泣かすわよ? 往生際が悪いったらありゃしない」
「何か僕が悪さをしたような流れに?!」
「当たり前じゃない。ほのかにばっかり美味しい思いをさせた罪からは逃れられないわよ?」
「だからそれが勘違いなんだってば! 夢! 夢の中! それにほのかが120%盛ってますぅ! 濡れ衣冤罪ダメ、これゼッタイ!」
「ダメよ、逃がさない」
葛さん、こそばゆいからお鼻くっつけちゃダメえ!
「うふふ、悶える優ちゃん可愛い。これはどう?」
「うわ、ちょっと!」
クンクンしちゃヤダ、何か恥ずかしい! お兄ちゃんで遊ばないで! くぅ……打開策を! このまま行ったらマジで昨日の二の舞だ。夢の中でパトスを迸らせてしまう! 打開策……ん? あれ?
「ねえねえ、葛」
「何?」
「これは夢じゃないよね」
「夢よ」
「マジで?」
「本気と書いてマゾ」
「それは違う!」
「あら」
でも嘘でしょ?!
僕いつ寝た?
でも昨日のこともあるからなあ。
昨日はほのか曰く、シャワーを浴びてさっぱりした後にふらふらとベッドに転がり込んだらしい。それでほのかを抱き枕にして寝てた、と。『お兄ちゃんの腕から抜け出すの大変だったんだからー』って詳しく説明してくれたから信憑性は極めて高い。というかほのかがそう言うのだからきっとそうなんだろう、うん。
そういえば何か棒読み感出してたけどツッコミ待ちだったのか? すまん、お兄ちゃんは面目なさ過ぎて昨日はついていけなかった。それに夢の中でとんでもなく満足してしまって気恥ずかしかったのもある。
だってさあ……普段からお兄ちゃんメッキが剥がれないように気を使って二人と接してるのに、ほのかを抱きしめながらエロい夢を見て、しかも内容がバレバレ。黒歴史ランクインは確定である……とほほ。
が、
葛の場合はほのかとちょっと違う。直球に変化球を絡めに絡めてほのか以上に僕の反応を楽しむ
あんまり長引くとペースにハマってしまうし、葛の今の服装もちょっと薄着だから、展開がエロい夢だとするとまた起きた瞬間に下着の湿度チェックをしないといけないではないか。
グレーのスウェット地でぴったりとしたショートパンツに白のTシャツはスタイルのいい葛によく似あってる。似合ってるんだけど……密着されるといろいろと視覚的にも感触的にも生々しいんですよ。しかもマウントポジション。
よし、頑張ろう。
お兄ちゃんはやればできる子。
「あのさ、葛……あれ?」
何か上半身が肌寒い。それにいつの間にか手が拘束されてるし、あっぶね! ベルト緩められてるじゃないか!
「ちょっと! いつの間にかシャツ脱がして手を拘束したの?! ズボン脱がしちゃダメえ!」
「ふふふ、大正解ね。優ちゃんはぴゅるっぽんの気配を感じると妄想に走りがち。その隙によ」
「ぴゅるっぽんって何?!」
「優ちゃんのごりごりが奏でる、儚くも美しくいかがわしい音よ」
「僕の名前以外の言葉が一個も理解できない!」
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