第4話
その次の日からが本当に大変だった。
高学年になってから少しずつ異性を意識し始めるクラスメイトが多く、彼らにとって彼女がクラスで誰とも話さない僕に手紙を投げたのはちょっとした事件だった。多くがその真意と手紙の内容を知りたがっていた。
クラスメイトたちは彼女にはもちろん、普段話さない僕にまで様々な質問をぶつけてきた。相変わらず僕はうまく話せず「え…いや…」としか答えられなかった。
◇◇◇◇◇◇
「と、まぁそんな風に出会ったんだ」
「あなたは当時から人に気を使いすぎていたんだね」
「あの日の後から大変だったんだ。一時的にではあるけど、初めてクラスの話題の中心いたからね。僕の静かな生活が一変したよ。あの日の出会いのせいで、人との会話に多少免疫ができたよ」
「せい、じゃなく、おかげ、でしょ。ショック療法みたいなもんだね」
「確かに、おかげ、ではあるんだけどね。場合によっちゃトラウマものだよ」
「まぁトラウマにもならず、結果オーライ。で、続きを話してよ」
「まだ、話すのかい?」
「あなたの話は何度だって、何だって聞きたいの」
彼女は助手席でにんまりと笑う。だから、僕は安心して続きを話す。
◇◇◇◇◇◇
確かに、その日以降は彼女のおかげで、人と話すことには免疫が付いてきた。
何せ彼女は時、場所、タイミングを一切考えずに話しかけてきたから。
授業中でも休み時間でも、関係ない。話題は常に彼女が持ってきた。
干草のベッドのリベンジを手伝わされたこともある。歩いて3時間ほどのところに、きれいな彼岸花が咲いていると言い、連れていかれそうになったことも。1時間ほど歩いたところで、辺りが暗くなりはじめて諦めたっけ。
クラスメイトは、僕らの関係を不思議そうにみていたけど、クラスの中心にいた彼女が「友だちになった」と告げると、僕にまでとても友好的に接してくれた。
小学校最後の年に、初めて、友だちができたようだ。
それから中学生になっても、僕は彼女に振り回される日々だった。
彼女とは未だによく遊んでいた。お互いの家に行くこともしばしばあった。僕は彼女に小説や漫画を、彼女は僕にCDをよく貸してくれていた。
中学生になり、彼女はバスケ部、僕はソフトテニス部に入っていた。彼女の方は運動神経も良い方で、1年から控えに入れることになった。
僕は、もちろん、運動はからっきしで、なんとなく個人種目っぽいというだけでソフトテニスを選んだ。入部してから、試合にはダブルスしかないことを知って、本当に絶望したことを覚えている。
平日は部活動があったため、彼女からの呼び出しの多くは休日。中学になって携帯電話を持ち始めてから、学校以外で彼女から呼び出されることが多くなった。
僕の休日といえば、来たる月曜日に向けて、ひたすら体調を整えるために寝る、しかすることがなかった。だから、彼女の呼び出しに応じる時間的余裕だけはあった。
彼女の呼び出しはいつも突然で、有無を言わさない勢いがあった。
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