第48話
刑事・浅井律樹
人質救出作戦が行われるまであと数分だった。
スタングレネード。
強力な閃光と爆音によって立て籠もり犯などを無力化するこれを使えば大抵の人間は制圧できる。
人は視覚から情報の八割を得ていると言うが、実際に体験して見れば分かるはずだ。
目を閉じ、耳を塞ぐ。この状況でやれることは立ちすくむかその場に伏せることくらいしかない。
しかしそんなものを普通の刑事が持っているわけがなかった。
テロやハイジャックはSATの管轄だ。俺は偶然早く現場に到達したせいで彼らが到着するまでの時間稼ぎを仰せつかり、それは順調に進んでいた。
人質の学生が無敵同盟の男と話しているのは気になっていたが、時間を稼げばこちらのものだ。
隊員達が配置に付き、多方向から同時に制圧する。無線から得ていた情報で作戦は数分後には発動可能だった。
大臣と連絡が付いたと言い、電話を渡す。話している隙を狙って制圧。そのはずだった。
だが計画はリーダー格の男の暴走により早められた。
人質を殺せば殺される。
それは誰の目にも明らかだ。そして人質自身にとってもそうだったんだろう。犯人からすれば多少の言動は目を瞑らざる得ない。
だけどやりすぎた。追い詰められた犯人にあんなことを言えばこうなってもおかしくない。
ナイフは喉深くまで貫き、大量の血が電車内に流れた。
俺も殺されそうになかったが、梅田の正確な射撃によって何とか殺されずに済んだ。
しかし俺の相棒は腕が良すぎた。
急所を打ち抜かれてリーダー格の男は死亡。すぐに人質の学生も救急隊に運ばれたが、出血多量で亡くなった。
唯一の救いは共犯の仲間二人がほぼ無抵抗で捕まえられたことだろう。
それぞれが担当していた人質に危害はなかった。
こうして無敵同盟事件は既に殺されていた香取も含めて死者三名、重傷者二名という形で幕を閉じた。
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