第33話
翌日。目が覚めると僕はまたボロアパートにいた。
昨日の景色が嘘みたいだ。ここから見えるのは精々近くの町工場くらいだ。
それでもこっちの方が落ち着くのはこびり付いた貧乏性のせいだろう。
そんなことをぼーっと思っているとスマホから着信音がした。
なんだと思って手に取ると出版社からだ。まだ締め切りは先のはずだけど見落としでもあったのかもしれない。
そんな心配をしながら手に取ると知り合いの編集者が叫んだ。
「現場には行ってますか?」
「え? あー。炎上君のマンションには一応行きました。でも何枚か写真撮っただけで――」
「そっちじゃないです! 今の話ですよ!」
「今?」
僕は呆けて、そしてハッとした。
慌ててテレビを付けるとニュースを探す。そこには速報を読み上げるアナウンサーの慌てた顔があった。
『繰り返します。今日午前。タレントでコメンテーターの大杉昇太さんの自宅で火事がありました。警察によると爆発物が爆発した可能性が高いとのことです。今入った情報によると他にも何件か同様の事件が起きていて、その全てが先日の高級SNS運営会社の個人情報漏洩事件のリストに載っている人だということです。続報があり次第またお知らせします』
あいつらだ。
映像に映る高そうな民家からは黒い煙が上がっていた。
僕にはまるでそれがのろしに見えた。
大杉と言えば情報番組で無敵同盟をこき下ろしていたタレントだ。彼らでまず間違いないだろう。
じわじわと恐怖が大きくなる。
彼らを否定はしないが肯定もしない。そのはずだった。
だけどこのままこれが続くと一体どうなるか。それが分からない。
まだこれが始まりな気がしてならなかった。
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