第15話
食堂でカツ丼を食べながら事件の資料を読んでいると後輩の梅田が前の席に座った。
短い髪に整った綺麗な顔。刑事課では浮いているようにも思える女性警官だが、その実中身は男らしい。
汗をかいたあとがある。おそらく射撃訓練でもしてたんだろう。女が身を守るためには必要だが、後ろから撃たれるのだけは勘弁してほしいもんだ。
「香取の事件。なんか分かったか?」
「……正直、あんまりですね」
梅田は割り箸を割ってチャーシュー麺を食べる。
こいつはラーメンばっかりだ。刑事になると髪型や服装、立ち居振る舞いまで犯罪者に似てくると言う。それは相手に嘗められないようにするためではあるが、同時に本当の自分が分からなくなる時もある。
梅田も男ばかりの刑事課でなんとかやるために男に染まっているんだろう。それができなきゃ犯罪者は婦警を見下してくるのもあるかもしれない。
どちらにせよ目つきが悪く協調性のない俺と組まされても文句なくついてきてくれるんだからありがたい存在だ。
梅田はどんぶりを持ち上げてスープを飲んで一息ついた。
「今は範囲も広げて防犯カメラをチェックしています。私もさっき聞き込みから帰ってきました」
「で、なにも出てこなかったからぶっ放してたと」
「そんなんじゃないですよ」
梅田はむっとして、大きな口でチャーシューを頬張る。
「午後はどうするんだ?」
「また聞き込みです」
「じゃあ俺も行くよ。運転は頼んだ」
「先輩そればっかりですね」
「いやなんだよ。クラウン。なんかこう、偉そうで」
「そこがいいんじゃないですか」
梅田は楽しそうに麺を啜った。
こいつとは分かり合えそうにない。なによりこの食堂で丼物以外を注文する奴とな。
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