第6話

 翌日。記事を送信した僕がようやく寝ようとした時だった。

 スマホから着信音が鳴った。

 もう無視して寝ようかと思ったが、取引先だと後々面倒だ。

 僕が渋々電話に出ると知らない男が聞き覚えのない声であだ名を呼んできた。

「だいちょうさんですか?」

「おおとりです」

「ああ。これは失礼。私は三田警察署の者ですが」

「三田? 港区の?」

「ええ。そうです」

 東京の警察が僕になんの用だ? 駐禁は払ったよな。そもそもあれは港区じゃなかった。

「えっと、どういった御用でしょうか?」

「それがですね。香取さんはご存じですか?」

「香取? ……ああ。先日取材で会いました。あの人になにかあったんですか?」

「ご存じないんですか?」

 知るわけがない。あいつは取材対象で友達じゃないんだ。そもそもあの取材だってやりたくてやった企画じゃないし。

 僕が「ええ」と答えると刑事は少し間を開けて言った。

「香取俊介さんは昨夜自宅付近の道路で何者かに襲われ、今日の朝に亡くなりました」

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