第6話







 次は紫の章について説明するわね。


 紫の章は光源氏が療養先の北山で藤壺の宮にそっくりな少女を垣間見た事から始まるの。


 彼女の祖母から


『姫は兵部卿の宮と私の娘との間に儲けた娘です』


 という事実を聞かされたの。


 つまり藤壺の宮の姪である事を知った光源氏は自分が彼女を引き取りたいと言ったのだけど、祖母はそれを本気にしなかったわ。


 当然よね?


 父親でも兄でもない男に大切な孫娘を預ける祖母なんているはずがないじゃない!


 だが、そこは藤壺の宮LOVEな光源氏。



 天は俺に味方している!


 天命は我にあり!


 兵は神速を貴ぶ!


 天は俺に告げている!



『藤壺の宮に生き写しの少女を拉致監禁して自分の思うように育てなさい』


 と。



 祖母という鉄壁のガードマンが居なくなってラッキー♪


 そんな事を思いながら少女を自宅の二条邸へと連れて行った光源氏は嬉々として洗脳開始。


 しかも藤壺の宮にゆかりのあるという理由で少女を【紫の上】と呼ぶ事にしちゃうのよね~。


 ・・・・・・・・・・・・光源氏コイツ本気マジで最低だわ。


 父親が死んでからも桐谷 瑞穂としての記憶を思い出さなかったら、何も知らない状態で私が入内してしまったらマザコン+年上キラー+ロリコン+上は婆さんから下は幼女までOKというストライクゾーンが広大な属性を持っているだけではなく、初恋の女性にそっくりな幼女を拉致監禁して洗脳教育。


 紫の上は幼い頃から光源氏に洗脳されているから好感度が上がりやすいし、理性のパラメーターも上がりやすいから嫉妬を抑えやすいのよね~。


 また光源氏の方も藤壺の宮に瓜二つだからなのか、紫の上に対する好感度が上がりやすいの。


 で、自分の理想通りに育った彼女を光源氏は強姦しちゃうのよ。


 紫の上にとって自分に対する光源氏の仕打ちは許せないはずなのに、これも洗脳教育の賜物なのでしょうね~。


 紫の上は光源氏を許しちゃうのよ!


 実はここからが紫の上にとって茨の道の始まりなの。


 漫画や小説とかで源氏物語を読んだ事があればだいたい分かると思うけど、紫の章はそれに沿った形で話が進んで行くわ。


 だから選択肢が出て来た時に原作通りの行動を取ってしまうと、紫の上の人生は父親が居ない・・・というか後見人が居ない故に光源氏の正妻になれない。(←これに気付くのは女三の宮が降嫁した時である)


 明石の上という女性は光源氏の正妻になれないのに夫の子供を産んだ。



 どうして!?


 私は光源氏の妻なのに、殿の子供を産む事が出来ないの!?



 という悩みを生涯に渡って抱き続けるの。


 不妊の悩みに加えて、孤立無援であるが故に光源氏の浮気を咎める事が出来ず、自分の胸に渦巻いている嫉妬を抑え付けて穏やかな笑みを浮かべながら女の屋敷へと赴く後ろ姿を見送るしかない。


 女三の宮の降嫁で光源氏に対して夫婦としての情はあっても男としての愛情が消えてしまった紫の上は



『出家したい』



 と訴えるのだけど、出家したら紫の上に己の欲望をぶつけられないという理由で許さないの。


 今までの気苦労と女三の宮の降嫁が祟った紫の上は病に倒れて死んでしまうのだけど、光源氏は最愛の妻の最期を看取れないだけではなく涙に暮れる日々を送るの。


 自分の最期を看取らせないというのは、自分の全てを奪った光源氏に対する紫の上なりの復讐なのかな?


 これが紫の章のハッピーエンド【さらば、我が魂の片割れよ・・・】なの。


 えっ?


 これのどこがハッピーエンドだって?


 どう見てもバッドエンドだろうがーーーっ!!!というのも分かるわ。


 実は若紫の祖母の死後に選択肢が出てくるの。


 それが



 ①少女を二条邸に連れて行く


 ②『少女を自分の妻に迎えたい』と兵部卿の宮に伝えた上で彼女を実家に引き取らせる



 ②を選んでしまうと、兵部卿の宮は北の方に


『この子は源氏の君が妻に迎えたいと言っている。この子を貴女の実の娘として大切に育てて欲しい』と伝えるのだけど


 自分が産んだ娘達よりも愛らしく、年頃になったら美しくなる事間違いなしの若紫に嫉妬した北の方は夫が外の女に産ませた少女を徹底して虐め抜く。


 そして北の方の娘達も母親に倣って虐め抜くの。


 日本版シンデレラとでも言うべき【落窪物語】では、ヒロインはヒーローに助けられてハッピーエンドだけど現実はそんなに甘くない。


 結果、若紫は兵部卿の宮家の女房ではなく、下女としてこき使われる一生を送る事になるという───。


 これが紫の章のバッドエンド【落ちぶれた姫君】よ。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る