⑦決行日のあとは

直哉は警察署を後にすると、歩き出した。

もうすでにうっすら日が出てきている。

今でも思い出すと、足が震える。

爆弾が入っていると思っていたら、全くよくわからない道具がごろごろ7つも入っていた。

(どういうことだよ)

そう思っていたら、綾子の叫び声が聞こえる。

扉からこっそり覗くと、綾子が人質になっている。

犯人はこっちに背を向けている。

(今しかない―)

カバンに入っていたバールを握ると、こっそり後ろに立つと思いっきり犯人の頭を殴った。

犯人はそのまま昏倒した。

そこからあっという間に警察と救急車がきて、犯人は去っていた。

そして事情聴取を受けることになった。

綾子は直哉の方をみると、小さく頭を下げて、婦人警官と共に去っていった。

きっと詐欺のこともばれるだろう。

本来であれば、直哉はヒーローだったが、そうはならなかった。

それはカバンに入っていた7つ道具のせいだ。

空き巣の7つ道具だったらしく、かなり疑われた。

なんとか自分のカバンではないことを説明し、やっと外に出れた。

朝日が眩しい。

(本当にロクでもない人生だなぁ・・でも)

「四の五の言わずに頑張りますか」


「佐藤、無事か?」

桐谷は病院で佐藤の病室へいくと、佐藤は「快適だ」とゴロゴロとしている。

爆弾が爆発した後、教師たちに桐谷や佐藤はそのことを説明したが、全く信用されず、ずぶ濡れな上に、かすり傷がいくつかあったので、病院に行くように言われた。

頭でも打っておかしくなったと思われたらしかった。

そして念のために検査入院をしたのだ。今日の昼過ぎには退院予定だ。

「それにしてもあの爆弾がなんだったんだろうな」

「さぁな」

「それに横断幕もどこいったんだよ」

「さぁ」

佐藤はもう興味ないといった感じだ。

「人生であんなスリルは一生味わうことはないだろうな」

「人生はいつだって急展開だからな、わからんぞ」

「怖いこと言うなよ」

そんなことを佐藤と桐谷が言っていると、女の子がこっちにやってきた。

「あ、さつきちゃん」

佐藤がそういうと「お兄ちゃんの友達?」と桐谷を不思議そうに見てくる。

「そうだよ。佐藤、この子は隣で入院している方の娘さんだ」

そう言っていると、さつきの母親がやってきた。

「すいません。さつき、だめよ、お兄ちゃんに迷惑かけちゃ」

「ママは寝てなきゃだめだよ~しゅじゅちゅするんでしょ?」

さつきが嬉しそうに母親にくっつきながら、大人の真似をして話す。

「うまくいったら一緒に暮らせるもんね」

「そうよ。パパのお母さん、さつきのばぁばね、お礼いわなきゃね」

二人で嬉しそうに微笑みあっている。

「手術成功すること祈ってます」

二人でそういうと、桐谷は荷物をまとめに自分の病室に戻ろうと部屋をでると、入れ違いに綺麗な花を抱えた男が入っていった。

きっとさつきの父親だろう。

幸せそうな笑顔をしていた。

きっと手術は成功するに違いない。

人生は七転び八起き。

どれだけ転んでも立ち上がることが人間にはできるのだから。

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スターマイン 月丘翠 @mochikawa_22

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