第10話 トップファイブの依頼

「早速やらないといけないのか?」

「昨日話したこと忘れたの?」

「忘れてはない。でも、やりたくはない」

「やらないと卒業できないよ」

「く…学園長の娘に言われると、やらないといけないよな…」

「あたしに対してそういう言い方しない」

「へいへい」


減らず口を叩きながらも、俺は後ろをついていきながらもさらに後ろを歩く二人に声をかける。


「それで、大丈夫か?お前ら…」

「は、はい…」

「な、なんでうちの体調はこんなに悪いのよ…」


ハチと亜衣はそんなことを言いながら頭が痛いのか、押さえている。

なんで、二日酔いのような症状になっているのかはよくわかってはいないが、俺たちはその場所に向かっていた。


「こういうところも専用になってるんだな」

「ええ、一緒のチームになればこういう特典を受け放題ね」


心結がそう言うのは、学園トップファイブのみに許されたミーティングルームのような場所だった。

そこでは作戦会議から、いろいろなことを行えるらしいのだが、初めて入る部屋にただ驚く。

そもそも、ここに来るまでの通る道でさえ、専用なのだから、やりすぎなのではとも思ってしまう。

まあ、競争心を煽るためには必要なことなのかもしれないが…


「好きな場所に座って待ってて」


ミーティングルームに入ったが、俺たち以外はまだ来ていないらしく、智也の姿もない。

俺とハチは一応部外者ではあるので、少し机があった場所から少し離れて座ったところで、扉が開く。

すぐに中に入ってきた男は俺のことを見て、舌打ちをする。


「シンジ、やめたほうがいいわよ」

「僕はこのパーティーのリーダーだぞ?これくらいのことをやっても別に怒られないと思うけどな」

「そうやって、やるからあたしたちのチームが上から三番目から上がれないんじゃないのかしら?」

「リーダーである僕に指図するっていうのか?」

「うまくいってないのは、確かじゃないかしら?」

「く、そうかもしれないが…だったら余計にこんなお荷物と一緒にやる意味がないんじゃないのか?」

「でも、誰も見たことがない、人に変身できる遺物と出会うという強運をもってますからね」

「それは確かにそうなのかもしれないが…」

「だったら、今はあまりうるさく言うのは違いますよ」


心結にそう言われて、シンジは何も言えない。

そんな状況になっているとは知らずに、部屋の扉が開く。


「おっす、今日も頑張ろうぜ!」


元気な声とともに入ってきたのは、智也だ。

少し嫌な雰囲気になりかけていた今、元気に部屋の中へ入ってくるところを見て、少し空気が和やかになる。

そんな智也は、俺たちの微妙な雰囲気に気づくこともなく、亜衣たちに話かける。


「どうしたんだ?頭なんか抑えて…」

「どうしたもこうしたも、痛いのよ…」

「頭が痛いって、お前…酒でも飲んだのか?」

「飲んでないわよ。館たちと同じものを食べて飲んだだけなのに、ハチとうちだけ、なんかおかしくなったの」

「そうなのか?」

「は、はい。私も何がどうなったのかはわかりません。ですが、亜衣と同じことになっていることだけはわかります」

「へえ、それは面白いことが起こったんだな」


そう言いながらも豪快に笑いながら空いている椅子に座ったところで再度扉が開く。

最後の一人である、ノエルが入ってくる。


「時間通りに来たんですが、最後でしたか」

「間に合ってるから大丈夫。全員がそろったしいいかしら?」


全員がいることを確認しながらも席につくノエルは、そう言うが、すぐに心結が大丈夫だと返しながらもすぐにシンジへと確認を向ける。

向けられた視線に少し怯みながらも、シンジはすぐに用意していたのだろう、資料のようなものが壁に映し出される。

そこに書かれていたのは、次に行う依頼についてのものだった。


「今回の、僕たちに課せられた依頼というものは、何も中にはなかったはずの神社から見つかった、遺物を封印することだ。遺物はこれだと言われている」

「壺?」

「壺だな」

「これが今回の遺物?」

「確かに見た目は壺だ。だが、資料にもある通り、かなり強力な遺物だというのはわかっている」


俺は資料を見て驚く。

遺物が及ぼす効果の範囲というのが、かなり広大だったからだ。

遺物に込める願いというのは、願い事の良し悪しは確かにあるが、一番重要なことはどんなことを願ったかではなく、どんな気持ちで願ったかになる。

それが純粋であればあるほど、遺物の力は強くなる。

今回の遺物はどんな願いが込められているのかは、まだわかっていない。

ただ、わかっていることと書かれているのが、近づくと吸い寄せられるという情報だ。


「何かを求めているってことかよ」

「そういうことになりそうね。それがなんなのか、わからない以上は、近づくことさえできなさそう」

「どういうことだ?」

「ああ、それは…」

「別に説明はしなくてもいい」

「なんでだよ」

「説明したところで、わからないからだ」

「だからって、説明しねえと、対策すらたてられないだろ?」

「そんなものは、必要ない」

「必要あるだろ?失敗をしたくはないしな」

「ちっ…」


智也がそう言うと、シンジは舌打ちをしてそっぽを向く。

何も言わないということは説明しても大丈夫だと思った智也は俺に説明してくれる。


「遺物には種類があるのは知ってるよな」

「それくらいはな」

「だったら、大まかにある種類で自立型と、他立型があるのはわかるか?」

「他立型?聞いたことがないな」

「まあ、そうだよな。普通の遺物じゃないからな」

「どういうことだ?」

「まあ、遺物というのは基本的に自立型だ。願いを込められれば、それを叶えるために動きだす。願いの大きさにかかわらずな」

「ああ、それが普通だろ?」

「普通ならな。でも他立型ってやつもある。例えばだ。遺物が願い事を叶えようとする。そうした場合。普通であれば遺物は叶えるために行動を開始する。でも、その場で動こうとしない遺物がいる」

「それが、他立型というのか?でも、そもそもそうなると、遺物は願いを叶えることができないんじゃないのか?」

「ま、そこが普通の遺物と違うところだ。この遺物は他の遺物を使うことができる、理由はわからないけどな」

「まじかよ…ということは…」

「ああ、想像の通りだ。こいつは他の遺物を使うことで、自分の願いを叶えようとする、完全に厄介なやつだ。そして、今は辺りのものを吸い寄せているということから、早めの対処をしないと余計に厄介な存在になるな」

「でも、手当たり次第に引き寄せているなら、近づくのは危なくないのか?」

「そうだな。だから、オレたちにはノエルがいる」

「任せて」


無表情に言う彼女の背中には、確かにこの状況を対処できる可能性が高いものだ。

俺たちがもつような、小さなアーティファクトの銃ではなく、大型の銃。

込められる弾が大きいその銃であれば、確かに弾に込められた効果というのは強くなるはずだ。


「作戦は簡単だ。僕たちは引き寄せられるやつらを倒す。そして大物はノエルに倒してもらう。これが単純で完璧な作戦だ」


だからこそ、シンジはそう言葉にする。

俺はどこか不安を抱えながらも、その内容を聞いたのだ。

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