第6話 パーティーに入れられて
「どうした館?」
「智也…わかるだろ?」
「わからねえよ。むしろオレはお前と一緒のパーティーになれてよかったと思ってるぞ」
「まあ、俺だって智也たちと一緒になるのは構わないんだけどな」
俺はそう言葉にしながらも、これから起こるであろう憂鬱なことを考えて溜息をつく。
学園長から、簡単に許しはもらったものの、そのための条件というのが外に行く際には智也たちと一緒に行動をしないといけないというものだ。
そもそも、学園の中でも上位に入るパーティーに強制的に加入させられるというのは、かなり困ったことになるという未来しかない。
理由は多くあるけれど、一番の理由は注目されることだ。
上位のパーティーということもあり、パーティーに入りたいという人はかなりいるはずだ。
そんな加入の申し込みをすべて無視する形で、俺というイレギュラーが入ることになったとなれば、嫉妬の感情が向けられるというのも納得の出来事なのだ。
そして、嫉妬とは違う視線を向ける人もいる。
それが、智也たちのパーティーリーダーである、シンジ・グーロンだ。
俺がパーティーに入ることを聞いてからの怒りというのはかなりのものだっし、今もまだ不満というのを口にしている。
「どうして、こんな落ちこぼれたやつをパーティーに入れることになるんだよ…」
「まあ、そういうことを言うなよな、シンジ。オレたちはすでに単位を取り終えてるってことを考えれば、これをやり遂げることでさらに評価を上げることだって可能なはずだからな」
「智也が言いたいことはわかるが、だからと言って、僕はこんな任務は認めないからな」
「そうは言っても学園長に頼まれたことなんだからな。こういうこともあるだろ?」
「くう、そう言ってしまえば僕が断れないことをわかっているな。まあいい、邪魔にさえならなければな」
そういうと、シンジはさっさと歩いていくというべきか、戻っていくというべきなのか…
さっさとどこかに向かってしまう。
それを追いかけるようにして、智也と亜衣、心結が追いかけていくが、案の定俺は取り残される。
「で?行かなくてよかったのか?」
「別に大丈夫。ノエルはこれから研究所に向かう予定だから…ヤーも向かうつもりだったんじゃないの?」
「ああ、そうだが…よくわかるな」
「ノエルはいつも言っている。ノエルは感情を出すのが下手。だから、他の人の感情を読むのがうまい」
「確かにその通りではあるな」
「ブイ!」
褒めると、智也たちのパーティーにいる最後の一人であるノエル・アマリエは無表情のままブイサインを作る。
俺はなんともいえない表情で、そんな彼女のことを見ていると、ノエルは言う。
「正解したご褒美として、聖杯とやらを見せてほしい」
「まあ、いいけど」
俺は別に隠すこともないと思い、聖杯になっているハチをノエルに渡そうとしたのだが、渡す前に光に包まれると、これまでのように人の姿になる。
そして、その勢いのまま俺に言う。
「よくないですよ」
「どうしてだよ」
「そんなこと、決まっています。私のことを触っていいのは、ご主人様だけですから」
「そうだったのか?」
「はい。体の隅々まで確認していいといいましたよ」
「確かにそうなんだが、それが俺だけにという意味だとは思わないだろ、普通は…」
「そんなことはありません。遺物は気に入った相手でしか能力は使えないというのはご主人様も知っていますよね?」
「それくらいはな…」
「それと同じことということです」
同じことと言われても、よくわからない。
確かに遺物には、願いを叶えるための力が備わっている。
その力を人の手で発動することも可能だ。
それが、遺物使いなどと呼ばれており、遺物事に使える能力に対して、対価を支払うことにより使うことができるとされている。
まあ、その対価というのも遺物によって違うのだから、どれが正しいのかはわからない。
そもそも遺物に気に入られるという体験が初めてなので、仕方ないともいえるのだが…
それでも、遺物使いというものがどういう存在なのかということくらいはわかっている。
名前の通り、遺物を使う人たちのことであり、遺物に認められた人であるともいえる存在だった。
遺物に認められるとはどういうことなのか?
それは、遺物の能力を使えるということに他ならない。
遺物には、それぞれ願いを叶えるための能力というものが備わっている。
能力がどんなものなのかは遺物によって違うのだが、遺物は願いを持っているということは簡単な意志を持っていると考えられており、封印とは違い遺物と相性が合うと遺物が使えるようになるのだ。
といっても、俺はそんな存在になるのは初めてのはずなので、よくわかっていない。
「とりあえず、他の人に渡すのはダメってことでいいのか?」
「はい、そういうことになります」
「そうか…」
「残念…でも、仕方ないのは理解」
ノエルもどこか悲しそうだったが、すぐに納得する。
それもそのはずだ。
彼女も遺物自体は持っているからだ。
だからこそ、触られたくないということがわかるのだろう。
「仕方ないから、行こう」
「ああ」
俺たちは、研究所に向かうことにしたのだった。
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