第5話 学園長に会おう
「ここがご主人様たちが普段いる場所ですか」
「ああ、そんな感じだ」
ハチは入口に入ると、周りを興味深げに見ている。
俺と亜衣はそんなハチを見ながら、微笑ましく思ってしまうのだが、そんなときゆっくりと後ろから声がかかる。
「あらあら、仲がよろしいようで」
ニマニマという言葉がふさわしいような顔で見ていたのは、亜衣と同じパーティーであり、さらには学園長の娘でもある
彼女はことあるごとに、俺たちのことをからかってくるので、こういう反応というのもいつも通りだ。
今更慌てることもないのだが、俺たちとは違ってハチは考えるようにして腕を組むとそんな心結のほうに行く。
「やはり、ご主人様と亜衣様はそういう関係ということで間違いないというわけですね」
「そうなのよ。やっぱりわかってる人もいるのね」
「はい。私は見たときにそうだと思っていましたから」
「そうよね。毎回学園に帰ってきたときにだいたい一緒にいるんだから、そういう関係じゃないのはむしろおかしいのよね」
「なるほど、ご主人様が私に反応がほとんどなかったという理由がわかりました」
「よくわかってる子がいたものねって…誰なの?」
「心結、それが言っていた子よ」
「この子が?学園長に会わせたいって言っていた?」
「うん。決まってるでしょ」
「見た目だけではわからないものね」
ハチのことでいつものいじりがなくなり、亜衣はここぞというばかりにハチのことをアピールする。
そのタイミングで、元気よく声がかけられる。
「よお!館戻ったか」
「ああ、戻ったぞ」
「なんだ?知らない間にハーレムでも作ったのか?」
「智也、お前の目には、この状況がそんな風に見えるのか?」
「冗談だよ、冗談…怖い顔をするなよな」
智也の減らず口に俺は言い返すと、智也は大げさに怖がってみせるが、それによって少しではあるが、場は和んだような気がする。
ま、こういうのを狙ってきてくれたのだろう。
だから気が利く男としても、かなりの女性たちにモテているのだろう。
親友のそんないらない情報を考えながらも、この締まらない状況を整えるべく言う。
「とりあえずだな、そろそろ学園長室に行こうぜ」
そうして俺たちは学園長に会うために学園長室に向かう。
まあ、向かう間も心結とハチが初対面なはずなのに、何かをよからなぬことをずっと話していたことを考えると、話の内容はよくないものだという想像はつくが、あまり考えないでおこう。
だからこそ、俺はさっさと学園長室の扉の前に行くと、扉をノックする。
「入っていいぞ」
「失礼します」
「問題児か…」
「実の生徒に向かって何を言ってるんですか?」
「何をって、実際のことだろう?単位を全くとれていない問題児なんだからな、お前は」
「そんなことを言われてもですね、俺なりに頑張って今の状況なんですが…」
「だからってなあ…毎回のように進路を気にしなくちゃいけないこっちの身にもなってみろ」
「それはすみませんね」
「謝り方に誠意が足りないなあ…まあ、仕方ないのはわかるけどな」
早速というべきなのか、学園長室に入った俺は椅子に座ったままの学園長にいじられる。
まあ仕方ないことだ。
学園は六年生となっており、基本的に十二歳から入学をするのだが、三年間はそれこそ基本的な実技と座学を行い、四年生になる年齢から任務という名前で、遺物を回収するための実践へと向かうことになる。
基本的には自分にあったものではあるが、それぞれ武器であるアーティファクトを使い、遺物に込められた思い、願いというものを断ち切っていく。
それによって、銃のアーティファクトに込められた抑え込む力によって、遺物たちは封印される。
そして、そんな封印された遺物を回収するというのが、俺たちが学園で行うことだ。
といっても、普通に任務を行っていれば学園を卒業するための単位はとれる。
だって、それが目的の学園だからだ。
普通の学生であれば、できることなのだが、俺という遺物を前にすると体がうまく動かないようなやつには厳しいことなのだ。
まあ、そんなのだから俺は学園長に直接進路相談という名の退学するのかを話し合ったことがある。
そのときに、学園長とはフランクに話をする仲になったのだ。
ただ、そんなことを知らない他のメンバーは驚いていた。
「どういうことなのよ、どうして学園長と仲がいいの?」
「そうそう、もしかしてお母さんと再婚でもする気?」
「どうしてそういう反応になるんだよ…」
「だって、学園長がこんな反応をしてるところ、初めて見たんだもん」
「あたしも…お母さんがこんなにフランクに話しているのを初めて見たよ」
「亜衣、心結も…どうしてすぐに男女のことに発展するのかって、お前らの年代は、それが普通なのか…」
やれやれといった感じで学園長は対応するが、そんな彼女は二人が次の相手を探せるのではと思うほどに若い見た目をしている。
そして、会話の流れからわかるとおりに、心結の母親であり、この学園最強の人であり、そんな学園長には専用の遺物があると言われているのだが、これは後に考えればいいことだろう。
学園長は、すぐに誰が遺物なのかがわかったようで、ハチのほうへとゆっくりと近づいていくとまじまじと観察する。
「へえ、お前が厄介ごとの現況というものか…」
「厄介ごとというのはよくわかりませんが、ご主人様と一緒になったのは私で間違いありません」
「だから、それが厄介ごとってことだ」
「どういうことですかね…」
俺が疑問に思って聞くと、学園長は驚いたように言う。
「お前な…ちゃんと聞いていないのか?」
「聞いていないとは?」
「学園長である、私ももっている特殊な遺物というのは、それだけで多くのものを呼び寄せてしまう。そのことをわかっているのか?」
「そんなことがって…話くらいは聞いていますが…」
「だったら、お前には無理だということがわかるだろ?遺物を見るだけでいうことが利かなくなるからだなんだからな」
「俺だってそれくらいはわかってますよ。それでも俺にはこれがチャンスだと思っています」
「どういうことだ?」
「ハチが近くにいても俺の体は震えません。だから、このまま克服することだってできると思っています」
俺はそう言葉にしながらも、ハチのほうを見る。
そんな俺の視線に気づいて彼女は頷く。
学園長は、俺の決意に押されてくれたのか、溜息をつきながらも言ってくれる。
「仕方ないな…」
こうして俺は、ハチのご主人様としてともになることができたのだが…
そこで学園長から課された条件に驚くのだった。
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