『貴族交流パーティー』2
私の目の前に零士お兄様から『雪凪殿下』と呼ばれていた紫色に近い青色の髪、特徴的な赤色と黄色の
———なぜ
正直、雪凪殿下なりに先程の『白い光』の説明を名乗りに出てくれたのだと思うが、彼の性別反転の現実が私にとって衝撃すぎて思うように言葉が出てこない。
ーーーーーー
とりあえず、この
まず、『恋クリ』には『メインヒロイン』と呼ばれる独自のルートを持つキャラクターが8人いる。そして、その8人のメインヒロインの中でも2種類に分類されている。
一方は攻略掲示板などで、『パッケージヒロイン』と呼ばれている。
この『パッケージヒロイン』と呼ばれる所以は『恋クリ』の進行上、必ず1度は正規ルートの攻略が求められるキャラクター達である。
そして、その『パッケージヒロイン』の名前が『
それに対して『パッケージヒロイン』以外のメインヒロインを『負けヒロイン』などと呼ばれているが、今はいいだろう。
ちなみに『パッケージヒロイン』達の中でも攻略掲示板でヒロインルートの攻略順番について、現在も熱烈に議論されている。
ただ、基本的には1番攻略難易度の低い『夢想雪花』から始めるプレイヤーが多いだろう。
その他にも『裏ヒロイン』と呼ばれる『パッケージヒロイン』4人を攻略した後、特殊条件下にしか登場しないヒロインもいたりする。
正直、『メインヒロイン』や『裏ヒロイン』に関しては微塵も興味が沸かないが、それぞれの『メインヒロイン』に対応した私の大切な『
ここで重要なのは『恋クリ』の表舞台は『王立魔法学院』へ入学後という所だ。それにもかかわらず、性転換していたとはいえ『パッケージヒロイン』の1人である『夢想雪凪』こと『雪凪殿下』と出会わないはずの時系列で出会った。
つまり、現時点で私が『雪花王女ルート』へ突入している可能性があるのだ!!
ーーーーー
ちなみに件の『雪花王女』のシナリオは、こんな感じである。まず、王立魔法学院の1年次に零太と同じクラスになった雪花王女が学院生活の日々が経過する毎に仲良くなっていく。
そして、零太と雪花王女の親密度がある程度のメーターまで上がると、夢想王国を訪ねる2人のデートイベントへ進めるようになる。
零太が王国へ訪れたタイミングでとある事件が起きてしまう。そのとある事件こそ、王城で使用人として働いていた私の『
その暗殺未遂事件を解決した事を契機に『零太』と『雪花王女』は更に親密度を重ね、最終的には夢想王国と相対している隣国の『
…
……
…………
少し過激だった前世の私はこの『雪花王女』のシナリオをクリアした後、無性にイラっとしてしまい『恋クリ3ch:攻略掲示板』内でスレッド『雪花王女ルートとか誰になんの需要があるの?』と立てたことがある。
もちろん、そんな板を立てれば色んなプレイヤーから非難の声を浴びせられた。そのため、軽く『悪かったよ』と謝罪したことで、”掲示板内に頻繁に出没する1人”を除いて私への非難の声はなくなった。
しかし、その1人だけはそのスレ以降私が『
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———確かあのストーカー妨害野郎の掲示板の
それよりも、私の仮説が正しいならば『
あの子を今度こそ『ファッキン陽山』と『陽山侯爵家』の魔の手から…………
「其方……何かよからぬことを考えておらんじゃろうな……」
「い、いえ……」
雪凪殿下にジト目を受けてしまい、思わず声のトーンが高くなってしまう。
実際、ほんの5秒前までに『貴方の前世を思い出して盛大にディスってました』なんて正直に言えば、間違いなく私の首が飛んでしまう。
「まぁ…良いのじゃ」
「は、はい……」
そもそも1人称が『余』、語尾が『じゃ』って雪花王女にそんな口調はない。
『お嬢様に転生したのと同じく、とりあえず「ご機嫌よう」と挨拶してみた』
『王子に転生したから、とりあえず「余」と「じゃ」を付けてRPをしている』
———なんだかすごく既視感あるように感じるのは気のせいかなぁ……
「ふっ…余を前にして怖気ないとは面白いのじゃ。大抵の者は、ほら……」
———怖気ないどころか疑ってますし……
私の中で疑念を抱きながらも、とりあえず雪凪殿下が指を刺した方向を見る。彼が少し睨みを効かせただけで『ファッキン陽山』達側から小さく悲鳴が生じる。先程まで騒いでいた『大人サイド』まで静かになっている。
「別に悪い事をした覚えはございませんから」
「それならば、余から使用人を隠す必要もない気がするのじゃ」
———んー…雪凪殿下が怪しいから隠しただけなんだよなぁ…
「雪凪殿下、発言の許可を……」
「許すのじゃ」
「零から放たれた『白い光』についてです」
今更かもしれないけど、零士お兄様も『雪凪殿下』の前となれば、いつものような砕けた口調を辞めているらしい。
「ふむ…。余が教えるのは構わないが、その前に『事』を片付けねばならぬのじゃ」
雪凪殿下は私と零士お兄様の間を通り、付近に配置させていた護衛の騎士を連れて『ファッキン陽山』達へとゆっくり近づいていく。
「陽山侯爵子息、余は『直接的危害』加えなければ、其方の行為を黙認するつもりじゃった」
「ひっ…………雪凪殿下、ぼ、僕ちんは別に何もしておりません。むしろ被害者で——」
「面白いことを言うのじゃ。余が其方程度の計略を見抜いておらぬとでも思っておるのか?」
「ぐっ………」
「
「はっ、我が君の仰せのままに」
———お前は王城の警備でもしてろぉぉぉぉ!!
危うく口に出しそうになったが、寸前で止まることに成功した。その代わり、自分の心の中で絶叫してしまった。
ーーーーー
『如月灯火』は『恋クリ』における夢想王国の『魔法騎士団』の頂点に君臨するキャラクターである。ちなみに『恋クリ』攻略掲示板の彼女の愛称は『くっ……殺騎士』である。
彼女がこの愛称になったイベントは『雪花王女』のルートの最終戦の時である。
ーーーー
如月灯火『勇者様に続けー!!夢想王国魔法騎士団の埃にかけて『我龍帝国』の奴等に我らの力を見せつけるのだー!!』
『雪花王女』ルートのラストイベント『夢想王国』vs『我龍帝国』開戦の時、このセリフを聞いて強い味方が参戦してくれたと思った
如月灯火『まだだっ!!我々はまだ負けていない!!今こそ、勇者様に恩を返す時』
しかし、それは幻想で1シーン挟んだだけで、『如月灯火』が率いる魔法騎士団は半分が壊滅状態へと陥る事態となった。
如月灯火『くっ……殺せ!!』
そして、2シーン後には『如月灯火』が率いた軍は全滅し、隊長の灯火が捕縛されて敵兵に尋問されているシーンに移動する。
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『強キャラ』感の演出満載で登場して、敵に敗北するだけならまだ可愛げがある。
この後に起きる『ミッションNo45 如月灯火隊長の救出作戦』も相まって『攻略掲示板』で嘆くプレイヤーが続出することとなった。
プレイヤー同士で色んな議論が交わされた結果、如月灯火は『くっ……殺騎士』と呼ばれるようになったのだ。
ーーーー
「それ以外の『陽山侯爵』の取り巻き達よ。無用な争いは辞めるのじゃ」
「我が君、捕縛いたしました!!そのよければ…」
「よしよし…じゃ」
「くっ…くぅ…なんたる背徳感…!!」
———それにしても、まさかあの『くっ……殺騎士』を飼い慣らしているとは………。ただ、あの姿は騎士というより犬の方が近い…。
私と真里へナイフを投げた子息を捕縛した『くっ……殺騎士』が私たちの前にもかかわらず、前屈みになりながら雪凪殿下へ頭を突き出し頭の撫で撫でを所望している。そして、雪凪殿下はそれに応じて撫でているのだ…。
こんな奴が隊長でいいのか、そう思い他の護衛を見ると隊長を羨ましそうにみていた。
———こりゃだめだ……。魔法騎士団に関わるのはやめておこう…
…
……
………
最終的に雪凪殿下が命令を下した瞬間『ファッキン陽山』の取り巻き達は、『大人サイド』よりにある並べられた食事の方へ一目散に動き出す。同時に静まり返っていた『大人サイド』も元通りの状態となった。
その結果、雪凪殿下が一言発しただけで『ファッキン陽山』は自身の取り巻きを全て失い、挙げ句の果てに彼の側近と思しき子息は隊長に捕縛されてしまう。
当の『ファッキン陽山』は、やっと自分が圧倒的に不利に立たされている事実に気づいたらしい。雪凪殿下の表情を見て化け物を見たかのように床を四つん這いでパーティー会場の出口へと這いずって逃げ出して行く。
———天誅!!!!!因果応報!!!!!天誅!!!!!!
———今回の『前哨戦』は私の勝ちだっ!!!!!
雪凪殿下の力を借りたとはいえ『ファッキン陽山』と『陽山侯爵家』の策略を打ち破ったと確信した瞬間、拳を天井へ掲げた。
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仕事でしんどくて………更新止まったらごめんなさい汗
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