今世の家族、こんにちわ
ただ、疑問点はまだまだ多く残っている。例えば、『
それにもかかわらず、今の私の性別は女性である。こういうゲームの世界に転生した場合、そのまま移行するのがセオリーのはずだ。
——今はいっか….。
何よりも、恋焦がれ続けた『恋愛⭐︎クリエティブ』通称:『恋クリ』の主人公に転生を果たしたのだ。
はじめの一歩の段階で歩みを止めるような
「ご機嫌よう?」
とりあえず、ここはお嬢様っぽく返すのが正解だろうか?前世の私が高校で『ご機嫌よう』なんで使えば、クラス新聞が掲載されて、笑い者にされていただろうが、今はお嬢様である!!
——大きな岩を転がしたところにいた私よ!!グッバイ!!こんにちわ。太陽の光を浴びる私!!
「今日は早めに零お嬢様が起きてくださってよかったでずぅ。また、奥方様に怒られるところでじだぁ」
おおっ、どうやらこの世界でも前世で学んだお嬢様言葉は通用するらしい。地味に感動していると、なぜか黒白基調のメイド服を着た女の子は私へ寄りかかってくる。
——これは決して、浮気ではない!!私の気持ちはいつだって『
私を起こしただけなのに何故、潤んだ目で寄りかかってくるのか?と疑問に思ったが悪い気はしなかった。むしろ、ご褒美に近い…!!
それに突っ込むと逆に変な雰囲気になると感じた私は放置することを選んだ。
…
……
………
私が急に黙り込み考えている様子を見て、メイドの女の子が心配そうに私の顔を下から覗き込んで来たが、今は考え事に集中したい。
『恋愛⭐︎クリエティブ』通称:『恋クリ』ゲーマーの私の記憶が正しければ、こんなメイドの子はゲームの
じゃあ、なぜいるのか?と考ると、すぐに理解できた。こういう『
分かりやすい例を出すなら『鈴代椎葉ルート』では、鈴代椎葉と魔王、鈴代椎菜にスポットライトが照らされる。
つまり、バックグラウンドにいるキャラクターはシルエットだけなんて事もザラである。
「そろそろ宜しいでしょうか?零お嬢様、これ以上経つと朝食が冷めてしまいます…!!」
「あ、ごめん、それとありがとう?」
とりあえず、一先ずの結論として『バックグラウンド』だったから登場しなかったと考えておこう。それよりも、今は朝食だ。
私の保有する『恋クリ』の知識に照らし合わせれば、下の階にある広々とした部屋が食事場所のはずだ。
メイドの女の子が用意してくれた紅色と純白色基調のドレスを身に羽織り、彼女の案内の元、下階へと降りてゆく。
それにしても、若返るとは本当に素晴らしい事だと思う。享年17歳と比較的若い身体を有していた私だが、いつも姿勢を悪くゲームしていた天罰なのだろうか?
私が17歳を迎える頃には、既に腰痛を発症していたのだ。悲しいことに週に1度は顔馴染みのおじいちゃん達と世間話をして盛り上がれる程、整骨院の常連に成り下がっていた。
しかぁぁしっっ!!現在は5歳程の身体になっている。まるで、背中に羽が生えたかのように体が軽い!!!
あんな暗黒前世と比較するのはここまでにしよう…。なんか虚しくなる….。
それよりも、移動してる間に『恋クリ』の世界観を軽くまとめておこう。
『
そのため、登場するキャラクターの名前が全て漢字で統一されているし、会話も日本語だ。
ゲーマーの性で母国語と違う言語を学んでみたいという探究心もなくはないが、これはこれで悪くない。
言葉は共通している事は判明している。しかし、食事に関しては殆どが洋食である。
確か、日常ストーリーのごく僅かなシーンの朝食が目玉焼き、サラダ、パン、スープと彩られた朝食だったはずだ。
それとゲームあるあるのご都合主義なのか、電気や水道やガスも当然のようにあるのだ。
だから『恋クリ』内に米が存在するのかと問われたら、私はご都合修行設定のためあるかもないと答えるだろう。
——もっとも私がプレイ中に米を見たことないんだけどね
そんなことを懐かしみながら、ベッドから軽い腰を持ち上げ、メイドの女の子に手を引かれるまま階段を降りる。
階段を降りた先の扉をメイドの女の子が、開けてくれた先にはいよいよ、今世の家族が待つ食卓へと足を踏み入れた。
——広すぎる…
私の部屋も大概広かったけれど、食事場所ともなれば、さらに広くなっていた。『恋クリ』では煌びやかそうな空間は演出できても奥行きなどの演出は技術的に不可能だったのだろう。
大きい食卓の上には同等のサイズの白い布が敷かれており、1人ずつライ麦パン、ゆで卵、サラダが置かれている。
そして、私の目の前には笑顔で私を待ってくれていた今世の家族の姿があった。
前世で零太をプレイしていた時に何度か目にした事はあったが、現実で会うのとモニター越しで見るとは全く異なる。
「ご機嫌よう、零夜お父様、零華お母様、零士お兄様」
前世が『3JK』だった私にとって実にこそばゆく感じる挨拶である。ただ、この挨拶が通じることは先程のメイドの女の子でわかっている。
ゆっくりと腰の重心を少し落とし、カーテシーをする。
ちなみに、
「あのお転婆な零が、貴族の挨拶をいつの間にか習得しているとは………ふっ…いや、何、もちろん、いい事さ」
「ぷぷ…あなた、せっかくの零ちゃんの挨拶を笑ってはいけません」
「零、どうしたんだ?」
………私が目覚める前の零お嬢様は、相当なお転婆な様子だったらしい。
ただ挨拶をしただけなのに、ここまで笑われてしまうとは思わなかった。
「零、そんな行儀良く挨拶せずに、早く椅子に座っていつものように朝食を取ればいいさ」
「父上はその度に零を注意していたけどな」
「零士だって、あんな零は嫌だろう?」
「否定はできん!!」
零士お兄様と零夜お父様がお互い軽く睨み合い、零華お母様はそんな2人を微笑ましく眺めている。
——この感覚、すごく懐かしく感じるなぁ…
ーーーーーー
ストーリーはかなりスローペースで進んでいきます。申し訳ないです。
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