推しが『噛ませ犬』の特殊ゲーマーは転生先の世界で推し達を悲劇から守るために奮闘します
百合谷百合花と申します
序章
『噛ませ犬愛好家』はギャルゲーへ転生!?
カチカチカチカチ…
薄暗い部屋で、パソコンのマウスを小気味よくクリックする微かな音が部屋全体に響く。
現在、パソコンのモニターに表示されているのは、所謂、『
——なぜ、何回もログインしているのに、意味のわからないプロローグをプレイする度に見なければならないの?
そもそも、メインヒロインのルート毎で結末が異なるシナリオ構成にもかかわらず、毎度の如く、見飽きたプロローグ『始祖が創造すべし世界〜魔王と勇者が〜』から始まる冒頭部分を流さなければ気が済まないのだろうか?
——プロローグの時間が長い!!勿体無い!!
私の人生は光を浴びることがない
——こんな私でも人生を豊かにするため、ゲームの中とはいえ青春を謳歌したい…!!
それなのに…だ!!私のモニターに写っている光景は、パッケージヒロインでもある『
そして、次のシーンでは私と私の味方側を殺そうと企みはじめるのだ。
確かに、椎葉ルートで椎葉のアプローチをガン無視したのは、こちらの落ち度かもしれない。
付け加えれば、椎葉ルートの
しかし、その仕打ちとしてこの展開は、『
……とまぁ、そんな愚痴を溢していても事態が好転するわけない。
現に私のモニターには
『 ファイナルミッション No9999 絶 体 絶 命 の 危 機 』
と示されている。ここで『ミッション』と表記されているからといって攻略可能と勘違いをしてはいけない。
こんなのはミッションではなく『死刑』の表記だ。しかし、このミッションをクリアしなければ、晴れて椎菜とは結ばれない….!!
絶対に負ける戦は百も承知。挑まなければ、私が描くハッピーエンドへ進めない。覚悟を決めてミッションに挑むことにした。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
椎葉(魔王融合)『オマエガレイタヲトッタカラダ』
椎菜『やめてよ…!!椎葉お姉様!!目を覚まして!!やっと掴んだ私達の幸せを壊さないで!!』
椎葉(魔王融合)『トモニイコウデハナイカ!!エエ…!!コンナセカイホロンジャエ』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
———くそっ。
やはり、私の前に立ち塞がるかっ!!私にとって最強最悪のチートラスボス….!!だが、今回は負けてなるものかっ!!
…
……
………..
椎葉(魔王融合)『コレガオマエタチガエランダセカイ』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あーあ…また負けちゃった…」
不意に心の本音が口に溢れてしまった….。
通算88回目の敗北ともなれば、この反応も仕方ないと許して欲しい。こうなったらモニターが暫く真っ暗になった後、タイトル画面に戻るのがオチである。
???『xxxxfhsaghsfs——?』
いつものようにコーヒーを片手に待っていると画面に映る謎の不可解な文字が浮かび上がった。
——バグ?早くない??まだ買って2年程度なのに…
???『ffashjfxftsfhjyd——』
それともこのソフトが何かを語りかけている?いやいや、そんなバカな——そう考えた瞬間、モニターから強烈な白い発光され、薄暗い部屋にいたはずの私の瞳が真っ白に染まったかと思えば、同時に意識さえ手放していた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「零お嬢様、起きてください」
この声は誰の声だろうか?母にしては、随分と高いトーンだなぁ…。
——っは!!大事なことを忘れていた。
そもそも、私の家は一般の家庭である。決して裕福な育ちではない。つまり、私が『お嬢様』などと呼ばれるはずがない。きっと、現実逃避欲が夢にまで現れたのだ。
——うん、病院行こう。この場合は脳外科が正解かな?
「零お嬢様…!!零お嬢様…!!」
また同じ声である。私はそんな『お嬢様』と呼ばれるほど高貴な身分ではない。
だから、もう少し寝させ………
「零お嬢様、起きてくださいませ!!今日は、零お嬢様のために、たくさんの貴族の方々がお見栄になる誕生日パーティーの日でございます。その中には、なんと、あの雪凪殿下も来られているそうです!!」
私の耳元で大きな声が聞こえてくる。でも、ここで起きて仕舞えば『お嬢様』と勘違いした笑い者になるに違いない。
ふっ…….この時ばかりは私が自分の身分を弁えて生き続ける日陰者でよかった。なんと言っても私は『3JK——金なし、彼氏なし、家庭的でなし』の3タイトル保持者だ。
——私を誇れ…!!
「零お嬢様!!零お嬢様!」
それでも聞こえ続ける声と物理的に私の肩を揺さぶる感触が私を悩ませる。
そこまで現実に近いならば仕方ない。
これが現実だった事を想定してみるのも一興だろう。
私のモニターが壊れた直後、何が起こったのか?そして、仮に『お嬢様』と呼ばれる者になってたとする。
んん……
これは……
ひょっとして……いわゆる………
つまり…?
つまり…だ。待て。落ち着こう….。
私はあの光で死んだ…?
そして、転生を経て、『零お嬢様』と呼ばれる裕福な家系に生まれて意識が戻ったという可能性があるのではないだろうか…?
——ちょっと待って!!私の前世の死因はム◯カなの??少し雑すぎやしないかな?
逆に考えてみよう。もしかしたら、喜ばしいことではないのだろうか?
私がよく読んでいたライトノベルの展開通りに進むならば、裕福な家系+チート+美少女ヒロイン+ハーレム展開が待っているはずだ…!!
これこそっ!!!!大勢の中学2年生が夢に見る人生勝ちゲーではないだろうか?これこそが詫び石っ!!
…………待った。落ち着こう。もし、私が『お嬢様』ならば安心と引き換えに他家に嫁ぐなどのパターンも考えれる。
……仮に転生していたとしても、ハッピーエンドを迎えるには、スポットライトに当たる主人公的な位置に行かなければならない。
———つまり、モブならば前世の私となんの変化なし!!!
思い出すのはクラス集合写真の日にあえて欠席したため、思いっきり編集されたであろう虚しかったあの1枚………
———もう、嫌だっ!!
兎にも角にも、ようやく現世の生き地獄だった呪縛から解き放たれたのだ。
それにこのまま狸寝入りをしていても、彼女が『零お嬢様』の使用人である以上、私を起こし続けるだろう。それならばと思い、私は目を開けて上半身を起こす。
———軽ッ!!
…!?肩に電流が走るとはこの事を指すのだろうか!?まさしく、たった今、私の身体に雷が落ちたと言わんばかりの衝撃に全身が硬直する。
そして、部屋を見渡す。
再び現実逃避のため、目を閉じた。
——だと思ったよ…..。
そう——私が起きた部屋は私が死ぬ寸前までに何度も目にした
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