第16話
「あんたのフアンからだよ。見て。かわいいぬいぐるみ。それから写真もよ。前も写真が入っていたね。良い写真だね。飾ろう」
茂からそういわれて、雪江はもらったぬいぐるみをみた。そのぬいぐるみのつぶらな黒い目は離れ気味で、赤い舌をちょろりとだし、情をわかせるような、どこか哀れな表情をしていた。雪江はこのプレゼントの差出人について思いをはせた。どんな顔をしているのだろう。またどういった気持ちで私にこんなものをくれるのだろう。いったいどこで私を見つけて気に入ったのだろう。私は外出しないし、もしや病院でそんな人に会ったかしら。
「どんな人」
雪江が聞くと、
「かわいい子だったよ」
茂は楽しそうに笑いながら言った。
「あんたのことが好きなのねと聞いたら真っ赤になって逃げってったよ」
「どうして私を好きになるのかしら」
「あんたが可愛いからさ。自分ではわからないものかね。あんたは可愛いんだよ」
そう言われても雪江は信じられなかった。
私は不細工だ。
雪江は執拗にそう思っている。過去の男が自分にした仕打ちを忘れたわけではなかった。だから、その呪縛にとらわれているのだ。
どんなつもりで私に近づいてくるの?
私をバカにするつもりかしら。足がないことを笑いに来て、私を傷つけようてんじゃないでしょうね。そうやって狭い心を優越感で満たそうとするのよ。そういう人が世の中には山といるんだから。気をつけなきゃだめよ。
「次来たらあんたも会ってみればいいよ。こんなことで神様も怒りやしないよ。むしろ喜ぶよ。会ってみなさいよ。こんな可愛らしい出会いってないわ。あの子はとても悪い人には見えなかったよ。きっと楽しいから」
茂がしんそこのぼせたように進めるので、なんだか、雪江はその男が気になった。おばあちゃんをたらし込んで、ひとたらしなんだわ。
嫌いよ。
雪江はその見知らぬ男に会わぬうちからそう思って、険しい顔をした。
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