第23話
距離を詰めようとして来るレイチェル嬢に向かい私は鉄壁のガードを崩さない。
「レイチェル嬢、日差しが強い。傘一つでは心許ないだろう。誰かレイチェル嬢の両側から傘をさすように」
「かしこまりました」
控えていた者がレイチェル嬢の両側から傘をさす。必然的に私との距離が離れる。
「アーサーさま、私は大丈夫ですわ。
アーサーさま、アーサーさまはとても歩くのが早いのですね。あの、」
「あぁ、レイチェル嬢、傘をさしてくれる者達も大変だから、ゆっくりで構わない。私は先に行くが、レイチェル嬢はこのまま、真っ直ぐ景色を楽しんでいってくれ」
私は一刻も早く退散したかった。
「えぇ⁉︎ アーサーさま。あのこちらは入り口では?」
一旦歩みを止めると、振り向いてレイチェル嬢に声をかける。
「レイチェル嬢、このような日差しの下にあなたを長時間留まらせるのが心配なのだ。今日の日差しは肌に良くない。」
軽く微笑んでみせる。
レイチェル嬢は私に見惚れていたようだか、我に却って返事をする。
「アーサーさま、それでしたら室内でご一緒しませんこと?アーサーさまに女神像への贈り物についてもお伝えしたくて。
先程、ジャクリーン嬢が何か言われたかもしれませんが、誤解ですの。
私は、ただ神殿へ感謝の気持ちを込めて、贈ったのですわ。
決して、ジャクリーン嬢の真似事ではありませんわ。」
女神像?
先程も、ジャクリーン嬢が何やら言っていたな。
貴族達から多大な寄付金を集めている、という噂があったが、今度は女神像か。
寄付金を、皆の為に使っているのだろうか。
私服を肥やしてるのではないだろうな。気になるな…
「レイチェル嬢、その贈り物とは何を贈ったのだろうか?」
私が興味を示した様子に喜び、レイチェル嬢は饒舌に話出す。
「アーサー様、お聞き聞くださいませ。ふふふ、実はイヤリングですの。女神像の両耳に相応しい大きさのイヤリングですわ。
こちらは特注ですの。
父の伝で大粒のサファイアを中央にあしらい、周りは最高クラスのダイヤで囲うように作成しましたの。
きっと誰にも真似できませんわ。」
これは、また莫大な金額だろうな。
「確かに(あなたの装いのように)誰にも真似できないでしょう。
あぁ、日差しが眩しいですね。それではお先に」
「アーサーさま?」
私は、レイチェル嬢を残し足早に退散した。
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