第22話 アーサー✖️レイチェル嬢

あれはレイチェル嬢か。

彼女も相変わらずだな。

レイチェル嬢は、ジャクリーン嬢とは違った意味で目立つ。 


豊満な肉体を見せつけるように、過度の露出をした装いを好む。

今日も胸元を強調した装いだ。


ドレスのスカート部分の側面には、膝のあたりまでスリットが入っており、歩く度にチラチラと足が垣間見える。  


必然的に男性陣は、胸元と足元に目が釘付けになる。それを楽しむように優雅に歩いてくる。


はぁ…露出狂か? 布の面積がおかしいだろ。

せめて、胸の部分はもう少し隠してはどうなのか。目のやり場に困るな。

どこを見ても勘違いされるではないか。


ポーター侯爵は何も言わないのか。品位を貶めていることに気づいてないのか? 


私の身内だったら、ジャクリーン嬢もレイチェル嬢も、2人とも外出禁止は勿論、厳しく矯正し終わるまで存在自体を抹消するがな。



おや、どうやら2人がすれ違うようだな。

後で一言一句違わずに、詳しくローガンに聞くとしよう。


声は聞こえないものの、私は2人の様子を窺っていた。


「あら?これはこれは誰かと思ったら、ジャクリーンさまではありませんこと? 本日は随分とお早いお帰りですわね。

それに…ふふ、何か粗相でもなさったのかしら?ねぇ」


レイチェル嬢は、ジャクリーン嬢の行く手を阻むように対峙する。

ジャクリーン嬢を上から下まで眺めると、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。


レイチェル嬢は、先程の紅茶のシミを扇子で隠すと、すかさず応戦を始める。


「これはこれはレイチェルさま。あら、何のことかしら? 粗相だなんてとんでもない。

ちょっとしたハプニングがありましたの。

アーサー様からは、それはそれは勿体ないくらいに、気遣っていただきましたわ。

アーサー様は、私のことがとっても心配のようでしたわ」


ジャクリーン嬢も負けじと応戦を始める。


「心配? まぁ、そうでしょうね。何かと派手なあなたは、行動も目立ちますものね。お優しいアーサー様は、あなたの今後を心配されてるのではなくて? あら、ふふ、これは失礼。私としたことがつい…」



「はぁ?よくもそんな‼︎

まぁ、レイチェル嬢は僻んでいらっしゃるのね? 


いつも2番目ですものね?今日のお茶会だって、私の次。ふふ。あーそうそう、女神像への贈り物も、私の真似をなさったのでしょう?

いつでも、私の次ですのね。

まぁ、せいぜい今日も私の代わりを務めていらっしゃればよろしいわ。ふふふ。」


「代わりですって?」


ジャクリーン嬢とレイチェル嬢はしばらく睨み合っていた。その様子を見かねて、ローガンが何やら声をかけていた。ジャクリーン嬢は、渋々といった様子で歩き出した。


レイチェル嬢が、こちらへと近づいて来る。

私は今日何杯目か分からない紅茶を、口に含む。


「アーサーさま、本日はお招きいただきありがとうございます。」


レイチェル嬢は、わざと胸元が見えるように礼をする。


はぁ、目線をどこに合わせるか……そうだな、

頭部にしよう。

レイチェル嬢は、意外と額が広いな。


彼女は様々な男性と交流があると聞く。

実際、噂だけではないがな。

 とある夜会の時に、控室に連れ込む現場を目撃したこともある。それも1度や2度ではない。



「堅苦しい挨拶は、なしで構わない。」


「ご配慮痛み入ります。

アーサーさま、先程ジャクリーン嬢とお会いになられましたのね? アーサー様も、大変ですわね。私が、癒して差し上げましょうか?」


レイチェル嬢は、テーブル越しに私の手に触れようと身を乗りだしていた。


すかさず気づかないふりをして、立ち上がり距離を取る。


「レイチェル嬢、少し歩きましょうか」


レイチェル嬢は、散歩の誘いに顔を輝かせた。


「はい。アーサーさま」

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