第20話 アーサー✖️ジャクリーン嬢

「やぁ、待たせたかな。」


ジャクリーン嬢は、遠くからみても、どこにいるか一目で分かるような派手な装いだった。


「いつ見ても、眩しい……装いですね。」


私は皮肉めいた言葉を投げかける。


「まぁ、アーサーさま、そんな正直におっしゃっていただき、私嬉しいですわ。

本日はお招きいただきまして━━」


相変わらず、言葉通りに受け取る令嬢だな。

ダメだ。目に毒だ。目がチカチカする。直視するのは忍耐がいるな。これは修行だな。


「アーサーさま。アーサーさま?」


ジャクリーン嬢の話は、全く耳に入ってこない。


「あ、あぁすまない。つい、

(あなたの派手な装いに)

目を奪われて」


ニコリと貼り付けた笑顔を向ける。


よく読み取れば、言葉の間の意味に気づくだろうに。面倒だ。


途端にジャクリーンは赤面すし、扇子で口元を覆い隠す。


「まぁ、アーサーさま、お上手ですこと。

いつでも、アーサーさまのお隣に立てるように、本日のドレスも流行のものにしておりますの。


私は、常に新しいものに敏感ですの。私が流行を作っていると言っても過言ではありませんわ。」


ジャクリーン嬢は、こちらが何か言葉を挟む隙がないくらいによく話す。


自分のことばかりしか、考えていないな。

相手の顔色を窺うこともできないようでは、先が知れている。


それに、私の隣と言うが、二人のバランスなども考えずに一人で目立ちたがるであろうな。


まぁ、隣に立たれたら、こちらの品位を疑われる。


彼女は気づいていないのだろうか。




「最近のことですと、うふふ、自慢をするようですけれど、神殿へちょっとした寄付を致しましたの。

 

寄付と言っても、ちょっとした趣向を凝らしまして、女神像に花束を。うふふ。花束と言っても、普通の花束ではありませんのよ。宝石の花束ですの。うふふ。


素敵じゃありませんこと?ねぇ、アーサーさまもそう思われますでしょ?」


見た目ばかりに拘って、派手なものが大好きで、かなりの浪費家だな。んん?神殿だと? 今神殿と言ったか? 


そう言うえば、そろそろビルが着いた頃だろうか。マリーベルは、どうしているだろうか。


「アーサーさま、それで、私のことが噂になりまして、女神像に贈り物をすることが社交界で流行になっておりますの。うふふ。ですが、私が流行らせたことですのよ」


得意気に話し終えると、ジャクリーン嬢はティーカップを手に取り紅茶を口にする。

 私も一息つこうと、ティーカップに視線を移した瞬間、


「キャッ」


と、どこかわざとらしい

ジャクリーン嬢の声がしたので、視線を向けた。


どうやら、ドレスに紅茶をこぼしたようだった。


「大丈夫ですか?ジャクリーン嬢」


どんな時も冷静な対応を心がけている私は、


ジャクリーン嬢の側に近づくことなく対応する。

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