第11話

夜の帳が下り、桃花の部屋には柔らかな灯りがともっていた。部屋の中には、桃花、優華、陽夏莉、知子の四人が集まっている。ゲームをしたり、お菓子をつまんだり、何気ない話をして過ごす穏やかな時間。けれど、その空気をふとした言葉が変えた。


「ねえ、陽夏莉と知子、将来どうするの?」


桃花の言葉に、一瞬沈黙が落ちる。優華が気を利かせてすぐに口を挟んだ。


「それ、あまり聞かないほうがいいんじゃない?」


けれど、桃花は気になって仕方がなかった。


「だって、ふたりって本気なのかなって思うし。ちゃんと考えてる?」


陽夏莉は少し考え込んでから、ゆっくりと知子を見つめた。


「私たち、どう思ってるんだろうね。」


知子は、少し戸惑ったように眉をひそめる。


「うーん……正直、まだよくわからない。でも、陽夏莉と一緒にいたいとは思ってる。」


桃花はその言葉に微笑みながら頷く。


「それって、良いことじゃない? でもさ、将来のことを考えたら、結婚とかも視野に入れるの?」


今度は優華が真剣な顔になる。


「桃花、そんなに急がせるような話じゃないよ。」


「でも……」


「でもね、こういう話をするのも大事だと思うよ。」


そう言ったのは陽夏莉だった。知子も頷く。


「私たちの関係がどうなるか、少しずつ考えてみたいな。」


「具体的に、どんな感じ?」


桃花の問いに、陽夏莉は少し微笑みながら知子を見つめる。


「今の気持ちを大切にして、少しずつ進んでいけたらいいなって思う。」


その言葉を聞きながら、桃花は胸の奥にじんわりと温かいものが広がるのを感じた。



夜、桃花はベッドに横になりながら、ぼんやりと天井を見つめていた。今日の話し合いを思い返しながら、心の中に引っかかるものを感じる。


(どうしてもっとはっきり言わなかったのかな……。)


考えれば考えるほど、もやもやが募っていく。気づけば、無意識にスマートフォンを手に取り、優華に電話をかけていた。


「もしもし、桃花? どうしたの?」


優華の明るい声が耳に届く。


「実は、今日の話し合いで、陽夏莉と知子のことがすごく気になってるんだ。私、もっとはっきりした答えが欲しかったのに……。」


優華は少し考えてから、ゆっくりとした口調で言った。


「桃花、物事ってゆっくり進むものだから、急いで何かを決める必要はないんじゃないかな?」


「でも、なんかモヤモヤしたままでいるのが嫌なの。」


「わかるよ。でもね、焦って結論を出すよりも、時間をかけてお互いの気持ちを理解することのほうが大事だと思うよ。」


桃花は黙って、優華の言葉を噛みしめた。


「……そうだね。確かに焦る必要はないかも。でも、どうしても気になっちゃう。」


「陽夏莉と知子も、まだお互いの気持ちを整理しているところだと思うし、少し時間を与えてあげたらいいかもしれないよ。」


優華の言葉を聞きながら、桃花はゆっくりと深呼吸をする。


「ありがとう、優華。やっぱり、あなたと話すと楽になる。」


「いつでも相談してね。」


優華の優しい声が、桃花の心にそっと寄り添うようだった。


夜の静けさの中で、桃花は少しずつ気持ちが落ち着いていくのを感じた。そして、自分自身もまた、大切なものを見つめ直す時間が必要なのかもしれない、と考えた。


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