第10話

桃花はスマホを握りしめながら、ソファに座っていた。隣には優華。二人の間には、遊園地のパンフレットが広げられている。


「ねえ、優華。陽夏莉と知子が付き合い始めた記念に、4人で遊びに行くのはどうかな?」


桃花が言うと、優華はパッと顔を上げた。


「いいね! 遊園地とかどう?」


「それ、楽しそう!」


桃花はすぐにスマホを操作し、グループチャットにメッセージを送る。数秒もしないうちに、「行こう!」という陽夏莉、知子の返信が届いた。



観覧車がそびえ立ち、ジェットコースターのレールが空を切る。遊園地の入口で集合した4人は、早速チケットを手に中へ進んだ。


「楽しみ、陽夏莉!」知子が笑顔で言う。


「もちろん! 桃花、優華も楽しんでる?」陽夏莉も嬉しそうだ。


「うん、ワクワクしてる!」桃花が言うと、優華も「私も!」と頷いた。


最初のアトラクションはジェットコースター。大きなアップダウンを繰り返すコースを見上げながら、4人は興奮した様子で並んだ。


「絶対叫ぶよね、これ」


「叫ぶために乗るんでしょ!」


そうして乗り込んだジェットコースターは、一気に空へと駆け上がり、風を切って落下した。



アトラクションをいくつか楽しんだあと、4人はベンチに座り、アイスクリームを食べることにした。


「このアイス、おいしいね!」優華が満足そうに言う。


「一緒に食べるともっとおいしいよね」知子が微笑む。


桃花はふと、優華を横目で見た。優華もそれに気づき、少し照れくさそうに微笑む。



遊園地の最後を飾るのは観覧車。4人は二組に分かれてゴンドラに乗り込んだ。


「ここからの景色、最高」知子が言う。


「うん」陽夏莉が応える。


桃花はそっと横を見る。優華もまた、桃花を見つめていた。観覧車がゆっくりと最上点に達すると、二人は無言のまま窓の外を眺めた。



楽しかった一日が終わり、夜の道を4人で歩く。


「今日は本当に楽しかったね!」陽夏莉が笑顔で言う。


「またみんなで遊びたい!」桃花も嬉しそうに言った。


その時、優華が少し小さな声で言った。


「ねえ、桃花」


「ん?」


次の瞬間、優華はそっと桃花の手を握った。


桃花の心臓がドキンと跳ねる。


「なんか、手をつなぐって特別だよね」


「……うん、そうだね」


桃花は少しぎこちなく握り返した。すると、優華はもう一度、ぎゅっと握り返してきた。


後ろを歩く知子が、それを見て微笑む。


「なんだか、二人もいい雰囲気だね」


桃花と優華は顔を赤らめながらも、手をつないだまま歩き続けた。夜の風が、二人の距離をそっと縮めていった。

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